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謁見〜料理長の場合〜その2

お待たせいたしました!

短めですが、楽しんで頂ければ幸いです!


次回も裏ではありません。

 

 料理長が謁見に訪れる幾日か前のこと、謁見の間には三人の男と一人の女性がいた。


 女性は真剣な表情をナァルフォードに向けていた。

 歳の頃は二十歳くらいだろうか。意思の強そうな碧色よ瞳を輝かせて国王を見る姿は、彼女という人間に不思議と華を持たせていた。


「パンナコッタよ、して、そなたの申したいこととはなんだ。」


 ナァルフォードの言葉に、彼女ははい、と頷いた。少し高めだが、はっきりとした口調で話し出した。


 サヨーデが片眉を上げて興味深そうに彼女を見つめ、ノママーニもまた迫力に気圧されたかのように彼女を見つめていた。


「理由はお話した通りです。私の料理を、どうにかして料理長に食べてもらいたいのです。」


「なるほどな、食べもせず評価をされて不満を持っている、と。だが王宮の厨房の頂点に立っているのが、彼だ。彼が未熟だと言うのだから、実際そうなのではないか?」


 サヨーデが顎に手を当てながら問いかけた。瞳は値踏みをするように細められていた。


「それは・・・・・・そうかも知れません。」


 パンナコッタは勢いを引っ込めて、押し黙った。


「だがそなたの考える物は今までに無い物なのであろう?」


「はい!見た目も、味も間違いなく!!」


 今度は再び瞳には光を宿らせて、パンナコッタは大きく頷いた。


「なるほど、それなりに自信はあるように見える。」


「陛下、私に良い考えがございます。」


 サヨーデが一歩前に進み、ナァルフォードへと進言した。ナァルフォードは頷いて、話の続きを促す。


「彼女には、行方不明になってもらいましょう。」


「ほう?」


 ナァルフォードは興味を吐かれたように前のめりになった。サヨーデが言葉を続ける。


「そして料理長を呼び出し、誰のとは言わず、料理を食べさせるのです。」


「面白い。だがいきなり料理が出てきては料理長もおかしくは思うのではないか?」


「仰る通りかと。そこで、他国から伝わった物だと言うことにするのです。しかし万が一彼女の存在を疑われてはまずい、そこで。」


「先立って行方不明にしておくということか。」


 切った言葉を代わりに続けるナァルフォードに、サヨーデはしたり、と頷いた。


「面白い、やってみよ。」


 ナァルフォードとサヨーデは悪巧みを思いついたかのように顔に不適な笑みを浮かべた。


 自分を置いてきぼりにして進む展開に汗を浮かべるパンナコッタだが、この二人を前にしては異を唱えることなど出来るはずもなく、黙り込むだけだった。


 ノママーニもまた、その顔に焦りのような表情を浮かべるのだった。









 そして料理長の謁見の日になり、三人の前には額に汗を浮かべる彼の姿があるというわけだった。


「行方不明とは、難儀なことだな。」


「全くです。カッポウ、本当に彼女の行方はわからないのですか?」


「は、はい。私にも言い過ぎたという自覚はありましたので、遣いのものをやって、戻ってくるように伝えようと思ったのですが、その時には既に部屋は間抜けの殻だったようで。」


 サヨーデとナァルフォードは黙り込んだ。ノママーニは沈痛そうな表情を浮かべて、カッポウを見つめていた。


「・・・・・・サヨーデ。」


「はっ、街の警邏に伝え、早急にそのパンナコッタなる人物を探すように致します。」


「頼んだぞ。」


「・・・・・・時に、カッポウよ。来てもらったついでに聞きたいことがあるのだ。」


「は?聞きたい、こと、でございますか。」


 突然のナァルフォードの話題転換に、カッポウは呆気に取られた表情を、浮かべた。

 うむ、と頷いてナァルフォードはサヨーデに向かって顎をしゃくった。


「実は、異国の料理なるものを伝えるものがおりましてね、料理長にその味を確かめて欲しいのですよ。」


「異国、ですか。」


 サヨーデの言葉にカッポウは更に驚き、それを見ていたノママーニは目を瞑った。


「左様。海を渡ってきた料理人故、我が国としてもそのまま帰すのは惜しい。そこで、我らが料理長であるカッポウの出番、ということですね。」


「それが我が国でどれほどの価値をもつ料理なのか、そなたに判断してもらいたいのだ。」


「そ、そのような大役を、私めに!?ありがたき幸せにございます。このカッポウの舌、存分に活躍させて見せましょう!!」


 二人の息の合った攻め手に、カッポウはまんまとのってしまった。

 興奮も露わに、己の胸をどん、と叩いて了承したのである。


 そうと決まれば動きは速かった。サヨーデが指を鳴らすと、まるで待ち構えていたかのように給仕の者達が料理を持ってきたのであった。




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