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幕間〜ノママーニとリーン〜その2

幕間です。ただのラブコメです。


楽しんで頂ければ幸いです。


 あれから、俺は手紙の返事をかけないでいた。母上に聞いた話で打ちひしがれたというのもあるが、正直会話のネタが尽きたのである。


 そりゃあそうだ、俺は謁見の間付きの近衛、基本的には守秘義務で雁字搦めにされているから仕事の内容は話せない。


 かといって普段からのめり込んでいることがあるわけでもなく、共通の話題もない。


(うーん、どうしたもんかな。)



 俺はなんだか漠然とした不安を感じながら、自身が座っている椅子を傾けた。

 今日も手紙の返事を出そうと机の前で格闘していたが、やっぱり筆が進まなくて困り果てていた、というわけだ。


 リーンから手紙が来て、四日の日が経っている。そろそろ返事を出さないと、向こうも不安に思うだろう。


 まだやりとりを始めてから一ヶ月ちょっとではあるが、何となく、彼女が自分に自信がなくてネガティブになりやすい、ということはわかっていた。


(心の中通りの性格で過ごせばいいのに、なんて無理だな。俺なんて、普通に話せても思い通りにコミュニケーション取れないのに。)


 おそらくは大多数の人間がそうだろう。むしろその中で彼女は腐らずによくやっている方だ。


 俺だったら間違いなくお見合い会場には来なかった。


 とはいえ―――――。



(向こうにとっては久しぶりに出来た友達という感覚だろうしなあ。どうやって交流するのが正解なんだ。)


 俺にとってはこの世界に来て初めて興味を持つことが出来た女性だ。

 拗らせすぎた俺は女性不信に陥っていた。


(皆んな口で言ってることと腹の中で考えてることが違いすぎて怖いんだよなあ。)


 俺は羽ペンを鼻と口の間に挟みながらふらふらと椅子を揺らしてぼうっと空を見上げた。


 昔から色々聞いてきた俺は、結果ひどく女性に対しては臆病になっていたのだった。

 絶対に失敗したくない、と意気込んでしまっているこの状況は、俺の経験のなさも相まって、解決の兆しが見えない。


(くそ、こんなことならもっとジェイドに付き合って酒場に・・・・・・ジェイド?そうだ!あいつがいるじゃないか!)


 俺は羽ペンを置いて立ち上がった。こんなところでじっとしていてもいい案が浮かぶわけじゃない。



 俺は外套を羽織ると部屋から出た。勢いはそのままに階段を降り、家から飛び出した。


 目的地は、いつものあそこだ。






 酒場の扉を開けると、やっぱりいた。カウンターで給仕のミレーネちゃんにだらしない表情を向けていた。


 ミレーネちゃんは明るい感じの女の子だ。背中の中程までの金髪を跳ねさせながらカウンターの中を動き回っている。

 ジェイドのことは適当にあしらいながらも、内心は満更でもないっていうのは、俺だけが知っている秘密だ。


 単純に思考が読めるからわかっているだけで、根拠を聞かれても答えられないからジェイドには黙っている。


 そういえば、以前修羅場になってたが、大丈夫だったんだろうか。


 そんなことを考えながら俺はジェイドに近付くと、その肩を叩いた。


「んあ?おお!オーセじゃん!珍しいな!」


 ジェイドは俺の顔を見ると心底嬉しそうに歯を煌めかせた。


 なんだろう、どうしようもない奴だけど、こういう態度をとってくれるから、俺はこいつを頼りにするし友達だと思うんだろうな。


「いや、実はお前に相談があってさ。」


「おおー、更に珍しいな。何よ何よ、聞いちゃうよー。」


「あっ、ノママーニさんこんにちは!エールでいいですか?ジェイドさん、相談にはちゃんと答えてあげなきゃダメですよー?」


 ジェイドに連れられて何度か酒場に来ている俺は、どうやらミレーネちゃんには覚えられていたようだ。

 注文を受け、ジェイドを茶化しながら奥へと消えた彼女の背中を眺めながら、俺は空いている隣の席についた。


「それで相棒。相談って何?」


「ああ、実は・・・・・・。」


 言いづらいな、これは。今まで女性絡みの話なんか俺からしたことなかったからな。


「何だよ、言い淀んで。腹でも痛いのか?」


「違えよ!なんというか、その、な。」


 もじもじと手を擦り合わせていると、ミレーネちゃんがエールを持ってきたので、受け取った。


「まっ、とりあえず乾杯すっか!」


 なんてことをいって、ジェイドは俺のカップと自分のカップをぶつけてきた。勢いで少し溢れてしまったが、気にせず俺は一息で中身を飲み干した。


 おっ、いい飲みっぷり、というミレーネちゃんがの声が聞こえてくるが俺はそれどころじゃない。急に回るアルコールの力を借りて、ジェイドへと向き直った。


「くはーっ!!だあぁぁぁ!!・・・・・・好きな人ができた。」


「へえ、そりゃあって、ええ!?まじか!相手は誰だ!?」


 俺の言葉を理解した瞬間、ジェイドは俺の肩を掴み顔を近づけてきた。


(オーセに好きな人だと?誰だ?エミリーちゃんか?まさか、ミレーネちゃんじゃ!!)


 あっ、めっちゃ不安そう。俺の恋より自分のことか、この野郎め。まあ逆の立場ならそうなるか。


 俺は安心させる意味も込めて、ジェイドを引き離すと口早にリーンのことを伝えたのだった。

いつも読んで頂きありがとうございます!

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