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裏謁見〜ドワーフとエルフの場合〜その2

楽しんで頂ければ幸いです。

次回はまた数回幕間を挟みます。

 

 とん、とん。


(うーん、違うな。もう少し変則的に刻むか?いや、少し全体的に早めてみるのも・・・・・・。)


 ああ、もう。うるせえ。まじでうるさいよ!

 陛下、皆んなの顔を見て!?暗いよ!宰相様もめちゃ暗くなってるよ!?


 俺は全力でつっこみたい気持ちを額に汗を浮かべながらもなんとか堪えていた。

 いや、ホントこのままじゃいかんて。


「戦争は不味いですね。ドワーフもエルフも、数の多い部族だし、この大陸全土に人が散らばっている。戦争なんてことになってしまえば、大陸中が戦火の海に沈んでしまいます。」


(そうなってしまえば、被害は計り知れない。陛下の名声も地に落ちる上に、経済も停滞、いや、後退してしまう。)


 流石宰相様だ。すぐに表情を切り替えた。おお、宰相様が髪を撫でつけているってことは、かなり本気の証だ!!


 ドワーフとエルフの二人も真剣だ。そりゃそうだ、誰も好き好んで戦争なんて起こすやつはいないもんな。


 誰か、何かいい解決策を思いついてくれー!!


 ――とん――


 ・・・・・・。


 ――とん、とん――


 ・・・・・・。


――とん、と、と、とん――


 いや、だからうるせー!!まじで何やってんの!?流石にこんなに静まり返ってたら誤魔化せないよ?ああ、ほら、注目されてるじゃん!

 


「陛下・・・・・・?」


(このリズムは何なのでしょう?)


宰相様、すいません。陛下は曲作りにハマっているみたいなんです・・・・・・。


(うーむ。しかしやはりマンネリだ。もっと画期的な構成の曲を作らねば、これでは凡人の作る曲と変わらん。)


 いや、凡人だよ!知らんけど!!でもそんなすごい風には見えないよ!!


 俺は内心でもはや罵った。当然ながら陛下にその声は届く筈がなく、依然として真剣な表情で曲の構成を考えている。


(何か、何かないものか・・・・・・現状のこのマンネリな構成を打開する要素・・・・・・む、そういえばどこかの民族は楽器だけでなく自身の声や身体で鳴らす音も音楽に取り入れると聞く。確かその名前は、ボイパ・・・・・・なるほど、「打開策・・・・・・ボイパは、有りだな。」)


 だからいつものことだけど言っちゃってる!陛下、毎回毎回言っちゃってるんですよ!!

 しかもボイパってハッキリと!!


「は?」


「ボイパ、ですか?」


(確かどこかの民族が声や身体を使って楽器を表現するという、あれですか。しかし、それに何の関係が?)


 案外知ってんのな!まさか転生先でボイパって言葉聞くことになると思わんかったわ!

 てか民族ってなんだよ!逆に会ってみてえよ!


 いや、どうすんの、これ。知らない、俺は知ーらない。


(まずは軽くベースとなる低音から入れてみるか。そして拍のタイミングで息を抜いて・・・・・・)


「ドゥッドゥッ、ツー。ドゥッドゥッ、ツー・・・・・・足りぬな。」


(ダメだ、やはり一人ではイメージするのに限界があるな。)

 

「足りない、とは。それが今回の件と何の関係が?」


 宰相様が恐る恐る陛下に声をかけているが、何というか全てを知っている俺としては居た堪れなさが半端ない。


(陛下のことだ。よもや全く関係のない話ということはあるまい。)


 関係、ありません!!宰相様、関係、ないんです!!


 (唇を合わせて弾くのはどうだ?いや、違うな。)


 いや、あんたまじでやべえな!!


(何やら口を弾いておられる?どういうことだ?・・・・・・そうか!!あれは、合図だ!!陛下が、分からぬのならお前も参加鳴らしてみよという、合図だ!)


 合図だ!じゃない!!逆にやっぱあんたもすげえな!何でそんなに盲信出来るんだよ!!

 ほら、ドワーフさんにエルフさん!!もうこの状況を正せるのは貴方達しかいないよ!!


「タタキスギー、コウマンチェキー!私達も、一緒にやりますよ。」


「はっ?」


「ええっ!」


 誘われたー!!!いやいや、流石にそれはやらんでしょう?


「・・・・・・まじか。」


 えっ、てか宰相様ボイパなんか出来んの??えっ?


「いいから、やるのです。陛下がならしているのはベースのリズムです。さあ、乗っかりますよ!トゥントゥクトゥントゥクトゥントゥクトゥン。トゥントゥクトゥントゥクトゥントゥクトゥン・・・・・・」


 いや、無駄にうめーなあ!!いや、絶対やってましたやん!なんかそういうバトルとかしてる人の出す音やん!!

 なんだよトゥントゥクて。

 

 また陛下のとちょっと合ってるのが腹立つな。これが付き合いの長さか。


 そんなことを考えていたらエルフさんが怒った。そりゃそうだ。


「バカらしい!我らが真剣に相談しているというのに、何という事だ!」


 俺は思わず大きく頷いた。

 そうだ!もっと言ってやれ!さあ陛下どうしますか?流石にこの二人はやらないとおも・・・・・・


「これで一体何が変わると・・・・・・タタキスギー!貴様もそうおも・・・・・・「シャッ、シャシャッ!」タタキスギー!?」


 やってるぅぅぅ!!!しかもかなり乗り気な人のやつ、それ!


 いやいやいやいや、動きまでついちゃってるじゃん。LP回してるじゃん絶対!!


「シャッ、シャシャップシュゥー、シャッ、シャシャプシュゥー!!」


 だからプシュウーじゃねえよ!!何でどいつもこいつもクオリティ高いんだよ!


 ああ、ほら、エルフさんめっちゃ動揺してますよ?これ皆んな怒られても仕方ないやつですよ?って、あれ?何か覚悟決めたみたいな顔してない?


 えっ、えっ?やるの?やらないよね??



「ウィーヤオウィーヤオウィーヤオウィーヤオ。」


 はい、やりました!!そして正直、ちょっと期待してました!!そしてこの人も上手いな!


 どこから声出してんだよ。というか当たり前にできるものなの?スキルなの?


 いやほら、なんか通じ合ってるじゃん。頷き合ってんじゃん!

 入り辛い!というか出来ることなら入りたくない!!


 だが俺の希望は叶わなかったようだ。俺がしばらく無心で眺めていると、四人が一斉に俺の方を振り向いた。


「!」


 えっ、まじ!?これあれでしょ、絶対そうでしょ。


 そこでふと陛下が玉座から立ち上がり、他の面々と同じ高さまで降りてきた。

 当然その間も口から流れ出るリズムは一定だ。


 って、やめろ!下りてくんな!!

 ああ!なんか並び出した!そして近付いてくんな!

 普通に怖いんだけど!?


 俺は絶対やらないぞ?やらないからな??


 そんな中、ノリにノッたドワーフが前に出てきた。

 何でドヤ顔なんだよ!


「シャッ、シャシャッシャ、シャッシャッシュー、シャッ、シャシャッシャ、シャッシャッシュー。」


 いやだからドヤ顔やめて!なんなの!?さっきより進化してるし!

 才能の塊じゃない!?


 だが、甘い!俺は日頃からこういうのになるべく関わらないように訓練してるんだ!

 いくら指を刺されたからってそんなの・・・・・・。


 案の定、次はエルフが出てきた。てか陛下も宰相様も目つき本気じゃん!

 言っておくけどパワハラだからな!?世が世なら大問題のやつだからな!?


「ウィウィッ、パ、パ、ウィウィッ、パ、パ、ウェ。」


 くっ。

 

「・・・・・・チャッチャッ。」


 しょうがねえ!こんだけお膳立てされたらやるしかねえ!いいか?引くなよ?転生前に動画で練習した俺のボイパテク、しかと味わいやがれ!!


「チャッチャッ、フィー。ドゥ、チャッチャッフィー。ドゥクドゥクッチャッ、チャッチャッフィー!!」


 楽しい!楽しいじゃないか!!


 俺の歌い出しと共に俺たちはそれぞれを支え合うように盛り上がるように巧みにボイパを操った。

 そして、五人の音楽はピリオドの向こうへ――――。


「・・・・・・プシュー!!!」


 じゃ、ねえよ!!何やってんだ、俺は!

 ああ、やばい、誰かに見られてなくてほんとに良かった。

 ねえっ、知ってる??俺近衛だよ?近衛。

 これって近衛の仕事?ねえ!誰か!!答えてよ!!!


「おう、コウマンチェキー、お前なかなかやるもんだな。」


(俺達の関係に新しい可能性が見えたな。)


「ふん、貴様もな、タタキスギー。」


(ふん、まっ、こういうのも悪くないでしょう。)


 いや、謝れ!お前ら。拳とか打ち合わせてんじゃないよ!


「なるほど、陛下はこの為に音楽を。感服致しました。」


 あんたも!違うからな!何で毎回毎回いい解釈しかしないんだよ!!


「ふっ、音楽は種族をこえる、ということですね。」


 いやいいこと言ったみたいな顔すんな!!


「ああ、違えねえ。ちっちゃなことで争うなんて、馬鹿らしく思えるな。」


 いや、こんなんでおさまる争いなら最初から争うなよ!


「それがわかったのなら、これからやることももう、おわかりですよね?」


 わかんねえ!全然わかんねえ!!


「ああ。」


「面倒をかけました。」


 そういうと、二人は憑き物がすっかり落ちたような表情で謁見の間を後にした。


「それでは、陛下。私も仕事をして参ります。」


(後で妻に今日のこの偉大な功績を話そう。)


 奥さんもいい迷惑だよっ!!


 続いて、宰相様がその場を去った。


 なんだよ、男五人でなんかただボイパしただけじゃん。これで何で全部上手くいっちゃうの?世の中ってそんなもんなの??

 父さん!答えてよ!!


 気付けば俺は涙を流していた。このやるせない気持ちに俺は何と名前をつければ良いのだろう。


 ふと、陛下をみると、満足そうな顔で玉座に座っていた。


(ううむ、ボイパ・・・・・・ちょっとイメージと違ったな。)



 くそがあああああああああ!!!!!!!



 その晩、俺は人知れず枕を涙で濡らした。


 「・・・・・・トゥクトゥクトゥン、チャッチャッ、シュー、ドゥン、ドゥン、プシュウー。」


 うん、まだまだ全然いけるな。




王国は、今日も平和だ!プシュウ!!


 

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