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幕間〜ノママーニ卿のお見合い大作戦〜その4

幕間です。もはや新たにシリーズにしようか検討中です笑


楽しんでいただければ幸いです。


 それから俺と彼女は互いにグラスを持って彼女が座っていたテーブルへとやってきていた。


 ここへくるまで、いや、来てからも彼女は本当に表情一つ動かさない。


 けど・・・・・・。



(どうしましょうどうしましょう!なんだか改まって話したいと言われると照れてしまうものなのね!ああ、でも話すといっても何をどうやって話せばいいのっ!)


 彼女はとてもお喋りだ。俺はなんだかおかしくなってしまって気が付けばくすりと笑みを溢していた。


 その声を聞いた彼女は椅子に座り無表情のまま首を傾げた。


「いえ、失礼しました。俺、いえ私はオーセ・ノママーニと言います、ノママーニ家の三男で、謁見の間付きの近衛騎士をしています。」


 俺は先程怖がらせてしまったことを思い出して、なるべくゆっくりと落ち着いた声色で話しかけた。


「良ければ、お名前を教えて頂けませんか?」


(あ、思ったより優しそうな人で良かったですわ!でもどうしましょう、これまでの皆さんはわたくしの名前をご存知でしたし、どうやって自己紹介したら。)


 えっ、そうなの?まじか、有名なのか??どうしたものか・・・・・・そうだ!!


「もし良ければ、お名前を心の中で呟いて貰えませんか?」


「えっ?」


「実は、自分は大魔法使いなんです。」


 我ながら気障だとは思うけど、しょうがない!


(どういうことかしら。なんだか面白そう!・・・・・・わたくしの名前はリーン・ノースと申します。ノース家の次女です。)



 リーンさん、素敵な響きの名前だ。それにノース家だなんて、なんて由緒ある・・・・・・ノース家!?まてまてまてまて、このお見合い伯爵以下しか参加出来ないんじゃなかったのか!!ノース家って北の公爵家じゃねえかっ!!そら有名だわ!


「んん゛っ!」


(?どうかしたのかしら??)


 彼女は心配そうに俺の顔を覗いてきた。俺は取り繕うように笑顔を向けた。


「なるほど、わかりました。ノース嬢、どうぞ、よろしくお願いいたします。」


(まあっ!ホントにわかったの!?ううん、流石に冗談よね。でもなんだかちゃんとお話出来てるように感じる、ただわたくしが心の中で呟いているだけなのに、不思議。)


 リーンさんは驚いたように心の中で声を上げた。表情は微動だにしていないが何となく纏っている空気が弛緩したように思えるのは、俺の気のせいだろうか。


 俺は自分の能力を打ち明けるかどうか悩んだ。そしてそんなことを考えている自分に驚いていた。


 だってそうだろ?他人の心が読めるなんて、正直嫌すぎる。隠したい気持ちも、本心も、全部全部そいつにはわかってしまう。


 だから俺はバレないように最大限気を配ってきたし、すすんでその能力で何かをしようなんて考えてこなかった。使ってもこいつ空気読めるな、くらいで済む程度だ。


「どうですか?私の魔法は。」


 俺は僅かに動揺する内心を隠すように笑顔を貼りつけた。


(ふふ、見かけによらずロマンチストな方なのね。)


 はい、ロマンのかけらも無さそうな見た目ですいません。


「種明かしは出来ませんが、俺・・・・・・私はあなたと会話することが出来ます。あまりに詳細なことは()()()()ですが。」

 

 結局、俺は嘘をついた。本当のことを言って困惑させるよりも、彼女にも楽しい時間を過ごして欲しいと感じたからだ。


(それが本当なら素晴らしいことだわ!多分表情を読むのがお上手なのだとは思うのだけれど。でも、そうね・・・・・・私と言うのが慣れていないなら、俺で良いですよ?)



「バレてましたか。わかりました、今後は俺を使いますね。」


 彼女の気遣いに俺は思わず苦笑を漏らした。ダサすぎる!俺っ!!普段こういう場に来ないのが一発でバレたな。


(えっ!!もしかして本当に心が読めるの!?)


 彼女は心の中で再び驚きの声をあげるが、俺はそれにはあえて気付かないふりをして、グラスを傾けた。


 少しぬるくなったが、緊張で渇いている喉にはちょうど良く感じられた。

 

(あら、今の感想には反応していない?やっぱり心が読めるわけではないのね。)


 残念そうに呟いた彼女は視線を下げた。

 少し心が痛んだが、その仕草ですら俺は見惚れていた。


 その後、俺は彼女とのお喋りに没頭した。いつの間にか周囲の心の声も気にならないくらい、夢中になって彼女との会話を楽しんだ。


 どのくらい時間が経ったのだろう。やがて会場にはテンポのゆっくりとした曲が演奏され始めた。


 音楽に合わせるように、ペアになった男女がそれぞれ手を取り合って進み、踊り出していく。


 俺はその様子を視界に入れながら、気になっていたことを尋ねた。


「そういえば、ノース嬢はどうしてこちらへ?確かこの企画は伯爵以下しか参加していないはずでずが。」


 俺の問いに彼女は目を伏せた。彼女の纏う空気が、少し曇ったように感じられる。


(どうしましょう。なんて答えればいいのかしら。わたくしがこんなだから、爵位の近い人はわたくしとの縁談を皆嫌がった、だなんて。権力争いなんて物語の話だもの、わざわざ表情も読めない会話も出来ない女を誰も選ばないわ。)


 確かに俺が転生する前の知識では、爵位が高い家の次女なんてものは引っ張りダコだった。ノース嬢でいえば、結婚すれば公爵家の後ろ盾を得られるのだから、それも当たり前だろう。


 けれど、この国は違う。領地の分割を禁止している上に、爵位が高いほど税金と責任が増すから、権力を持ったところでやれることがあまりないのだ。


  

 まあ、確かに優先順位としては低くはなるわなー。心が読める俺は気にならないけど、一般の人だと確かに奥さんが何考えて、どんな気持ちなのかわからないっていうのは、辛いか。


 なんて事を考えていたせいだろう。意図したわけではないのに、気不味い空気が出来上がってしまっていた。


 やっちまったー!!そんなつもりじゃなかったのに!

 どうするどうする、なんか明るい話題は・・・・・・。



 焦る俺は、聞こえてくる音楽の調子が変わった事に気が付いた。


 ゆったりとしたスローテンポだった曲が、少し抑揚ののついた明るめの曲へと変わったのだ。


 これだっ!!


 俺は思いつくままに席を立ち、目を伏せたままの彼女の前に立った。

 

 彼女は目の前に立った俺を見上げた。その表情はどことなく不思議そうだ。


(えっ、どうしたのかしら?)


 くそっ!可愛いなあ!無表情だけど!いや、なんかもうそれがちょっと可愛く見えてきた。


 気付かれないように生唾を飲み込んだ俺は意を決して手のひらを自分の胸に当てた。



「変な質問をしてしまい、申し訳ありません。ノース嬢、お詫びに・・・・・・俺としては褒美になっちゃうんですが・・・・・・。」


(はあ。)


「その、俺と、一曲踊って頂けませんか?」


 勇気を出して絞り出したその言葉は、思ったよりも震えていた。知らず手のひらに汗が滲む。


 鏡がないからわからんが、間違いなく顔も赤くなってるな。


(ええっ!?○♯◇★■・・・・・・!!)


 言葉にならない彼女の感情が流れ込んできた。


 側から見たら、これはどういう風に見えているのだろう。彼女が冷たい人間のように思われてしまうのは嫌だなあ、なんて事を考えていたら、再び彼女の()が聞こえてきた。


(どどどど、どうしましょう!ダンス!ダンスのお誘いよね、これは!ホントに、どうしましょう!わたくしがダンスに誘われる日が来るなんて!!でも、こんな女が踊って迷惑にならないかしら、ノママーニ様も楽しくないんじゃないかしら。)


 動揺がすごい!!なんか誘ってごめん!


「大丈夫ですよ。気にしませんし、むしろ誇らしいです。」



 だって俺みたいな顔面偏差値平均の男がめちゃ美人と踊れるんだぜ。迷惑に思うわけがない。


(優しい方。やっぱりわたなんかと踊ったら好奇の視線で見られて・・・・・・でも。)


 彼女はまだ迷っているようだ。よし押せっ、押すんだ、俺は!今だけは俺はオセ・ノママーニだ!!


「俺に、貴方と踊る栄誉を与えて頂けませんか?」


(・・・・・・。)


 俺の言葉にしばらく悩んだ彼女は、もう一度俺の目を見るとゆっくりと頷いた。


 立ち上がった彼女の手を取り、ダンスを踊る位置へとエスコートする。


「ノース嬢。承諾して頂いてありがとうございます。」


(こちらこそありがとうございます、ノママーニ様。どうか、わたしのことはリーンとお呼び下さい。って、流石に伝わらないわよね。)


「・・・・・・リーン、俺のことも、オーセでいいです。」


 名前呼び!!くっ、ちゃんと呼べただけで俺は俺自身を褒めてやりたい。


(えっ、どうして。それに、わたしが呼んだこともわかってる?えっ、もしかして本当に心が読めるの?)



 内心で戸惑う彼女に俺は悪戯っぽく笑いかけた。正直俺がやってもあんまり決まらないけど。


 俺たちは位置について、曲に合わせてステップを踏み始めた。


 周囲の目がこちらに集まってるのがわかる。不快な思考や、面白がる思考が俺の頭で次から次へと響いた。


 俺は頭からそれらを押し出して、出来るだけ楽しく見えるように、笑みを浮かべた。


 目の前で踊る彼女の表情は変わらないけど、天井から降り注ぐ照明の明かりで照らされた彼女はこれまで以上に綺麗に見えた。


 おおう!何という透明感!ホントとんでもなくスペック高いな。


 その後は一緒に何曲かを踊り続けた。

 俺は汗を煌めかせながらも無表情で踊る彼女を見て、彼女の笑った顔も見たい、とそう思った。

 



いつも読んで頂きありがとうございます。

誰かが読んでくださっているということが毎日本当に励みになっております。


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