幕間〜王様とノママーニ〜
次回から再び本編です。まあ本編も中身のある話かと言われれば困るんですが笑
楽しんで頂ければ幸いです。
ある日の昼下がり、いつものように謁見を終えた俺たちだったが、その日はサヨーデ宰相様と謁見に来たものだけがその場を去り、俺と陛下はまだ部屋の中に残っていた。
当然その場合、俺は陛下が立ち去るまでそこを離れることは出来ない。
黙り込んでいる陛下を眺めながら、俺は時間が過ぎるのを・・・・・・いや、まてい。時間が過ぎるてなんだよ、なんで謁見終わったのに動かんの、陛下。
(今日も余の知らぬ間に問題が解決しておったな。)
無言の圧力を送っている俺の頭の中で陛下の思考が響いた。
(いつもいつも余が解決したみたいになっているのは、何故だ??)
そりゃ陛下の言葉を皆んなすごい色んな角度から捉えて解決方法に当てはめてますからね。
(もしかして、あれか?余って実は凄いんじゃないか?)
ポジティブ!!陛下!!何もしてないです!!そしてそれを自覚している!つまり!!!凄くない!!わかって!!
陛下はなおも何かを考えるように目を伏せた。俺は下から陛下を見上げているが、そうしていると本当に何か凄いことを考えているように見えるから、不思議だ。
(サヨーデも毎回、余に流石だなんだ言ってくるし、無意識に解決策を余が出している?余、やっちゃってる??)
んだよその言い方!やっちゃってる??じゃないよ!陛下!!仮にそうだとしたら逆に怖くないですかっ!
あー、だめだ。気にしちゃ駄目だ。落ち着けー、俺ー、うん、深呼吸だな。
(そこの近衛、ノママーニだったか。此奴に聞いてみるか。)
「ぶふぉ!!げほっ!」
俺は深呼吸の息を吐き出してしまい思いっきりむせてしまった。
えっ、俺に聞くの??
陛下は咳き込む俺に視線を向けた。
(此奴、具合でも悪いのか?)
あんたのせいだよっ!!
(話して余も具合が悪くなってはまずいな。)
そうそう、変なことで部下に絡んじゃいかんよ。
(いや、やっぱり気になるな、聞くか。)
いや、やめて!気にならないで!!
(いや、やめておくか。)
そうそう。
(いや、でもやっぱり聞いた方が・・・・・・。)
おっさん!何なんだよこの人!俺とおんなじ能力持ってんじゃないの!?
俺と陛下は無言のまま一進一退の攻防を繰り広げていた。繰り広げていた自覚があるのは俺だけなので、はたから見れば俺と陛下は何も言わないまま見つめ合っているという構図になる。
俺はふと近衛の面接を受けた時のことを思い出していた。
そういえば・・・・・・あの時もこうやって謎に見つめ合っていたな。
名前を呼ばれて入ったのはそこまで大きくない規模の部屋だった。
前世で例えると学校の教室くらいだろうか。
部屋の中央には長机が並べられており、一人の男が座り、他に四人くらいが男の側に立っていた。
陛下だった。隣ではサヨーデ宰相様が俺の経歴を読み上げている。
俺は陛下の正面から大股で五歩という距離に立たされたが、陛下のその剛胆さに驚きを隠せなかった。
騎士の面談とはいえ、国王と臣下だ。その距離は本来想像もつかないくらい遠い。
しかしこの五歩という距離はあまりにも近い。狙われても文句が言えない距離だ。
つまり、狙われても問題がないと陛下は考えておられるのだ。何という自信の現れだろう。俺は知らず陛下に尊敬と畏怖の感情を抱いた。
(うーむ。・・・・・・近くない?新人近衛の面接ということだったが、この距離は流石に近くはないか?余、王ぞ?)
あんたも思っとるんかーーい!
俺は思わず右手を振り抜きそうになるがすんでのところでとどまった。
あっぶねー!危うく不敬罪で騎士になるどころじゃなくなるところだった。
俺は内心で冷や汗を大量にかきながら陛下の顔を一心に見つめた。
(ふむ、余の顔を動揺することなく真っ直ぐに見つめておる。忠誠心を感じさせる熱い目、そしてその度胸。気に入った!)
気に入られたっ!?えっ、不敬働こうとしたのを踏みとどまって堪えてただけなんですけど!!
・・・・・・そんなこんなで俺は無事に近衛騎士になった。今もこうしてお側で働いているわけだが。いやはや、何がどう転ぶかわからんね。
「ノママーニよ。」
不意に陛下に呼ばれ自分の思考に埋没していた俺は慌てて意識を陛下へと向けた。
「はっ!」
短く返事をして頭を下げる。
顔を上げて再び陛下と視線を合わせた。
陛下は俺を見つめていた目をふっ、と緩めると、ゆっくりと口を開いた。
「・・・・・・胸と尻、どちら派だ?」
「何の話やねんっ!!!」
「っ!!!」
我に帰った時は遅かった。俺は右腕を陛下に向けて振り抜いてしまっていた。もちろん身体は離れているから実際には当たらない。しかし問題はそこじゃない。
やべー!!やっちまった!!
「へへ、陛下!た、たいへん、申し訳っ、申し訳ございません!!」
俺はすぐに跪き頭を床に擦り付けた。頭を下げる瞬間、陛下の呆気に取られたような顔が目に飛び込んだ。
国の最高権力者にとんでもない口を利いたのだ。良くて国外追放、悪くて死罪だろう。
俺は絶望感に襲われながら陛下の沙汰を待った。
「・・・・・・よい。確かにいきなりな話だったゆえ、今回のことは不問に処す。」
「ははっ、有り難き幸せっ!!」
ひょー!!助かった!陛下、神!!優しい!!神!!!
俺は歓喜に震えて再び頭を床に擦り付けた。生え際が擦られているが知らん!俺は無事に済んだことを心から喜んでいた。
(はあ、びっくりした。此奴少し空気の読めぬものであったか。)
くっ、これは言われても仕方ない。
「よい。頭を上げよ。」
(ふふっ、それにしても驚いたが、この余にあんな口を聞いたものは他におらぬ。オーセ・ノママーニか。ふっ、気に入ったぞ。)
まさかの気に入られたっ!?何というご都合展開!!
更に驚く俺を横目に陛下が含み笑いをしながらしばらくはニヤニヤしていたのだった。
こうして陛下に気に入られた俺が、王太子に呼び出されたり、陛下と釣りに行ったり、サヨーデ様に嫉妬で辛くあたられたりするのはまた別の話。
王国は今日も平和だ。
(はて、結局ノママーニは胸と尻どちら「もういいよっ!!」)
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