裏謁見〜孤児院長の場合〜その2
皆さんこんばんは。
裏謁見、後半です。
楽しんで頂ければ、幸いです!
「学校、で御座いますか。」
(これは考えるまでもないな。予算は出せない。)
まあ、そうだよな。ああ、宰相様黙り込んじゃったなあ。
俺は陛下の方に目を向けたが、陛下は変わらず目を瞑っていた。
てか陛下、いい加減目を開けて会話に戻りましょうよ!
(そういえば、王妃とお茶の約束をしておった、顔に出るやもしれぬ・・・・・・くっ。)
くっ、じゃねえよ!もうバレちまえよっ!!
ああ、ダメだ。陛下の思考を、読めば読むほど疲れる。こういう時はあれだ、無心になろう。心頭滅却して、オブジェになり切るんだ、俺っ!!
しばらく誰も口を開かない、うう、空気が重い。
(とりあえず、陛下の判断を、仰ぐしかないか。いや、返答を先延ばしにして今日は時間を理由に帰らせるか・・・・・・。)
確かにそれは名案かもしれない。断るにしてもすぐに断るとやっぱり角がたつからなあ。
「ううむ、これは、なかなかに難しい問題ですね。」
「はい、こちらとしても波風は立てたくないと考えてはいるのですが、大きな組織ゆえ全員がそう考えているかというと・・・・・・。」
(反応は芳しくない、ですか・・・・・・ここは親王家派であることをアピールしていくしかない。)
「よからぬ思想を植え付ける可能性があるかもしれぬ、と。」
(自分から教会が一枚岩出ないことを明かした?何のつもりだ??)
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
(確かに・・・・・・現在の枢機卿の何人かは反王家派の筈。成る程、この件で注意するべきはそいつらの動向というわけですか。)
(流石は宰相様だ。懸念点をすぐに指摘してしまわれた。これで邪魔が入ったとしても反王家派だとわかる筈。)
(話の流れから見るに儂の花街通いはバレておらぬようだ。それにしても、学校か・・・・・・。)
おおっ、なんかそれっぽい!これで教会の中に暗躍する闇の勢力とかいたら完璧だ!
陛下?シカトだシカト!
「・・・・・・友達。」
ん?
「はっ、今、何と??」
(よもや、反王家派を抱き込めという方でしょうか?)
神父様は弾かれたように顔を上げ、陛下を見つめた。
(最初は出来ると思ってたんだ。「百人」わし王子だったし・・・・・・しかし、結果ほとんど出来ず、誰も「一緒に登校」してはくれなんだな・・・・・・。)
まじでか陛下・・・・・・友達、居なかったんですね。陛下の気持ちは痛いほどよくわかる。俺も、前世は友達は少なかったから。
(登校だけじゃない。学校行事、儂はいつも一人であった。取り巻きはいた。しかし出来ることなら・・・・・・。)
陛下・・・・・・それはさぞかし苦い思い出ですね。・・・・・・でも、今は関係ないですよね?そろそろ真面目に話、聞きません??
「給食・・・・・・ピクニック・・・・・・修学旅行・・・・・・舞踏会・・・・・・。」
(給食でのおかず交換・・・・・・皆で向かう森へのピクニック、儂は取り巻きとつまらなそうに参加していたな。修学旅行も、サヨーデを含む配下候補生達と一緒だった。夜抜け出したり、好いた女子と密会することも、出来なんだ。・・・・・・ああ、舞踏会。一人でいる儂を見かねて、姉様が踊ってくださった。そして学生の最大の行事といえば、確かあれは、何であったか・・・・・・。)
ダメだっ!深みにハマってる!!というか、一つずつ行事思い出すなよ!重いよ!!辛いよ!!
俺は思わず滲みそうになる涙を堪えた。ふと違和感が頭の中をよぎるが、宰相様の声にかき消されてしまう。
「こ、これはっ!出たっ!!!!陛下の連続多弾単語っ!!!!」
(何という言葉の奔流!!ああ、わたしを暗闇から救ってくださったあの時を思い出すっ!!!)
いや、違うからっ!何だよ!ワーズ・バレットって!ただ陛下の悲しい記憶が強すぎて単語が漏れてるだけだからっ!!今まさに陛下が暗闇にいるよ!
誰か!陛下の悲しみに気付いてあげてっ!!
俺は神父様を見た。迷える子羊を救ってきた神父様ならきっと陛下の哀しみにも・・・・・・。
(おお、陛下。おお、おお、陛下、おお、陛下。)
この神父やべーな!!おい!何だよ、ぜんっぜん気付いてねえよ!というか微塵も感じてないよ!!
何だよおお、陛下て。俳句みたいに言うんじゃないよ!!
「そ、それはもしかして我々の学舎と王立学園とを併設していただける、とっ!!」
ええっ!?今の思考の中身ってそういうことなの?
思考ぶっ飛び過ぎじゃね!?
「確かに、学園は貴族層と平民層に分かれて立てられている!その平民層の方に孤児院達を入れて授業を受けさせれば、全ての問題は解決するっ!!」
あんたもかーい!!!待って、普通その解答に辿り着くの?えっ、俺が馬鹿なだけ??
いや、なんか興奮して震えてるけど、震えたいのこっちだよ!!
あんたらの意訳能力に震えが止まらないよ!!
(・・・・・・思い出した!!儂は意中のエリザベスさんともペアになれなかったどころか、男性とペアとして踊らされ・・・・・・「くぅわあぁぁぁ!!」もはや当時の儂ではない!あのような行事、無くしてしまおうぞ。おのれ!「キャンプ、ファイヤー!!!」)
「ああっ!!」
「おおっ!」
「陛下ぁぁぁ!!!!」
(おお!陛下から言葉のオーラが滾っている!?)
(まこと、このお方の言葉は我が教会の教皇様と同じくらいの熱量と魂を含んでおられるっ!)
やめて、陛下!そちらはダークサイドよ!!戻って、戻ってぇぇぇ!!!
(儂も、青春時代を・・・・・・楽しみたかった・・・・・・。)
陛下は力尽きたように玉座へと身体を沈ませた。
陛下にそんな過去があったなんて!!すいませんっ!今度からもう少し優しくします!
(ああ、このお方は孤児院の為にここまで消耗されるほどの熱意をっ!神よ!わたしは今日再び救われました!!)
(陛下。陛下はあの時と何も変わらない。変わらず、全てに全力で問題へと向き合ってくださる!!)
俺は陛下の気持ちを一人慮り拳を握りしめた。目からは涙が溢れてくる。陛下、とんでもないぼっち時代があったんですね!なんとお労しいっ!!
あれ、陛下興奮し過ぎてちょっとよだれ出てない?あ、目も奈落の底のようだ!
うわあ、ちょっと引くわあ。
そんな陛下の様子には気が付かず、宰相様達は動き出した。
「財務省に校舎の増設を掛け合って参ります!!それと、文官達に新たな教師の登用の指示もっ!」
「私はこのことを教皇猊下にお伝えし、すぐにでも許可を頂いて参ります。」
「ノママーニ卿、貴殿は教育に使う教科書などの在庫の確認を頼む!」
えっ、陛下このままにしといていいの??闇落ちしてるよ?ダーク陛下だよ??ダークナァルフォードって響きなんかいいよねってそんなこといってる場合じゃない!
「はっ!仰せのままにっ!!」
俺も宰相様の言葉に頷き、その場を離れようとした。
「陛下、私の忠誠は神に捧げております。ですが、私のこの身体は陛下の為の働きに捧げることをお約束いたします。思想を偏らせる不届な輩は未然に必ず排除してみせます。ナァルフォード陛下に、神の幸が在らんことを。」
深く頭を下げた神父様は、そういって部屋から立ち去っていった。
(子供達に同じ思いを味合わせてはいかん、か。)
陛下はもたれかかるようにしてゆっくりと息を吐いた。
陛下・・・・・・。そうですね、陛下が辛い思いをしたのであれば、もっと友達が増えるような行事を作りましょう。
俺は陛下に頭を下げると、二人を追いかけた。
追いついた俺に二人の会話と思考が入ってくる。
「ニハクニレイ院長。正直に言う。私は教会のことは信用していない。だが貴方は受けた恩情を忘れるような恥知らずではないと、そんな人間ではないと、思っている。」
(恩を仇で返すようであれば、全力で排除してくれる。)
「ご安心くださいませ。私は今日、陛下に神のお導きを感じました。この心は、神と、この国と共に御座います。」
(やはり信用はされないですか。とりあえずは反王家派を全て排除することが課題ですね。)
二人とも顔は穏やかなのにすげえ物騒だな。解決策が排除するのみですかっ!
俺はふと先程の違和感について考えた。
そういえばどうして陛下は友達が出来なかったんだ??王子といえばちやほやされないわけがない。コネを作りたい貴族の子供が放っておかない筈。まして好きな子と踊れなかった?何故だ、王妃になれば権力は欲しいまま。何としても手に入れたいポジションだと思うが、何故陛下はぼっち街道を進んだんだ??
(それにしても・・・・・・。)
ん?俺は入り込んできた心の声の方向に目をやった。そこには、遠い目をしている宰相様の姿があった。
(陛下との学園生活は充実していた。私が陛下に近づく不貞な輩を全て排除した甲斐もあって、立派な国王へとなってくださった。配下冥利につき・・・・・・)
お前が原因かぁぁぁぁぁぁ!!!!!歪んだよ!そのせいで、陛下すっごい歪んだよ!!!
返してっ、陛下の青春時代返してあげてっ!!
心の中で叫ぶ俺には当然気が付かず、宰相様は満足そうな表情を浮かべて廊下の向こうへと消えていった。
王国は、今日も平和だっ!・・・・・・一人の心を除いてっ!!
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