視線
こんばんは。あらあなた、どこかで会ったことあるかしら。なんだか知ってる顔してるわ。こんな夜更けに出会ったんだもの少し話を聞いてくれるかしら。
私ね、人間観察が好きなの。人って面白いじゃない。
特に夜なんて最高。仕事から帰ってきて疲れた顔してる人とか、眠れなくてぼーっとスマホいじったりパソコンつけたり。ああそう、あなたみたいに小説投稿のサイト見てみたり。エッチなサイト見てる人と出会っちゃったら何だか悪い気がするんだけどね。
…え?なんで他人のそんな所が見えるのかって?
うーん、まあ色々あるのよ。方法は。
…え?知りたいの?方法を?申し訳ないんだけどそれは出来ないのよね。だって私も自分がどんな姿に見えてるのか分からないんだもの。
気になってね、お風呂場覗いてみても、映らないの。私。でもちゃんといるのよ。そこに。だって目が合ったら逃げ出す人なんてしょっちゅう居たもの。失礼よねほんと。
でも私、今はそんな事あんまりないの。方法が分かったっていうか、上手くなったっていうかね。何処でも入れるようになったんですもの。例えば…本棚の隙間とか、ベッドの下とか。あとは…扉の下の隙間から見たりもするわ。天井に張り付く事も出来るし。
あとは今みたいにカーテンの隙間からみたりね。
ところであなた、もう少し画面から目を離したら?視力が落ちるわよ。私ったら生前から世話焼きで気になっちゃうのよね。
あら、今更カーテンの隙間なんて気にしたって遅いわよ。何処からでもみてるんですもの。まあそんなに私の姿が気になるなら、後でトイレに行く時にでも振り返ってご覧なさい。
もしかしたら暗くて見えないかもしれないけど、私、そこに居るから。
大丈夫ですか、視線、感じませんか。