タピオカを食べに行く(短編版)
とびらの様主催、「あらすじだけ企画」に参加しております。
地方都市にある、かつてお嬢様学校だった私立の共学。ヒロインはそこの高等部二年生。
顔立ちはモブでダサい眼鏡、おとなしいがリアリスト、そこがクールでいいなんて慕ってる後輩たちもいる。
しかし家業の資金繰りが怪しく、夏休みの間に転校するかも、と親友だけに漏らしていた。新学期になっても変わらず登校してきたヒロインに安堵する親友。
だが、送迎の顔ぶれがおかしい。大学生ぐらいの儚い美青年と、二十代のロン毛の黒服。
まさか身売りかと心配すると、後ろ暗いところはないが、実際彼らは婚約者とその使用人であるという。
相手は有名な神社の神主の息子。経営が傾きかけた家に申し込まれ躊躇したが、そのうち資金繰りも正常化し、話を受けたそうだ。
旧家のお嬢様でもある親友は納得する。その神社には何か‘本物’がいると聞かされてきたからだ。
既に神主である祖父の持ち物の小さな一軒家に同居しているという。とはいえ二人っきりではなく、お目付役兼お手伝いのお婆さんと孫息子(例の黒服)との四人暮らしだ。
その後文化祭や行事もあり、面倒見のいいヒロインは委員などで活躍、下校時や催しには相変わらず(従兄と称して)男が迎えに来ては同級生を牽制する。ちょっと彼とも打ち解けてきた親友「ベタ惚れやん」
そんなわけない、とヒロイン。「男二人が両思いでしょ?」
彼女はどうもこの縁談・同居を「いいとこのお坊ちゃんが同性パートナーと暮らすためのカモフラージュ」だと思っているらしい。邪魔しないように隅に引っ込んでるのにロン毛黒服に威嚇されるんだよねえ、と笑う。
そんなバカな、じゃあ男二人でいちゃいちゃでもしてたのか、と聞くと、それはなかったが、と言葉を濁す。怪しんで追及すれば、ヒロインは引っ越し初日に唇を奪われていたという。
しかしその後その手のアプローチはなく、入れ替わりにロン毛に威嚇されるようになったので、つまりは浮気相手にされかけたと思い込んでいるのだ。
そんなわけないだろ、と親友が男にも探りを入れると、やっぱりべた惚れで合っていた。
よくないものに取り憑かれていたヒロインを不憫に思って仮の嫁契約を結んだが、自分のテリトリーに受け入れた瞬間かつてない衝動によろっとしたらしい。そしてお婆さんにめちゃくちゃ怒られた。
段階を踏むべきだが、人間との付き合い方がよくわからないと泣きつかれる。ロン毛の従者は「我が主の魅力を解さない不届者」とヒロインに刺々しいので助けてもらえない。
いろいろすれ違った挙げ句、俺が好きなのは君だから! と決死の告白をする男。親友には明かさなかったが、何度か人外に頼んで彼女の窮地を手助けしていたことがバレての土壇場だった。君リアリストだからこういう気持ち悪い男いやでしょう、と言うのにヒロイン「リアリストだから、存在するものをしないとは言えないんですよね」
とりあえず今度の週末、デートから始めてみましょう、ということになった。
ところでこれはヒロインにはまだ明かされない旦那の物語。
二十年前、彼の母親に当たる人が産んだのが、魂の欠けた赤ん坊だった。心の弱かった母親は、祭神にその子の延命を願ってしまう。
神は、その子の魂に自分が入ってやろうか、と提案する。そして成長したのが今の旦那。人間として生きているが、精神がちょっとだけ神から目線。
そんな彼は、ある魂をずっと見守っていた。
太古の昔、彼がただ自然の中の「力」だった頃、彼の傍らにあった、彼からしたら自分と一続きの「力」。
しかし人が彼ら「力」の漂っていた場所に近づいてきた頃、片割れは己を人間の中に交じらせることを望んだ。彼にはその発想が理解できなかった。
相手は消え、異能持ちの人間として現れた。そして生を終え、新しい人間、また次の人間、と生まれ変わっていった。
何万年、何千年もの間、片割れの魂を宿した人間は、重宝されたり、迫害されたりしていた。妖怪変化の類に好かれているようでもあった。
そのうちに「彼」も神として崇められ、社に祀られるようになった。社会が変わり、片割れは完全に異能を忘れたようだった。彼らと並べる視点を神はいつか夢想するようになっていた。
赤子を抱いた女の訴えは、渡りに船だった。
人間になったからには、覗き見はマナー違反であろう。そう自重していた。
しかし再会した相棒は、
「幸運の神と貧乏神とその他諸々を背負ってる上にめっちゃ痴漢に遭ってる……」
そのため保護して、まあ自分は半分神だから欲とかないぜって思ってたのに、いや思っていたからこそ失敗した。
事ここにいたり、ヒロインが多少は慣れてもここまで重いとどん引きしちゃう性格なの察してるので、詳細は自分の立場が安泰になるまでバラさない。
好意や執着的なものが芽生える予定はなかったので、内心めっちゃテンション上がっている。これがアレかー。
とりあえずタピオカデートあたりからしたらいいんじゃないかな、とは親友によるまとめである。