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異世界の語り部~僕は主人公じゃない AnotherStoryteller   作者: 時雨
第1物語目 魔女は復讐戦争にて破滅する
2/4

第一話 雪原に落ちた、復讐者

原作:魔女は復讐戦争にて破滅する

作者:かわかみさん

お借りしたキャラクター:アウレリア・カーティス・ベヒトルスハイム(今回の作中では、アリーさん・アリーちゃん)

 突如自身の目の前から姿を消した、魔女を狩る魔女『ランペルツ』、奴は攻撃の対象を私ではなく仲間…いや…私の家族の居る家へ向かい『撃った』。

 私は彼女ら、彼ら、を守るべく私は身を乗り出した。


 熱い


 痛い


 苦しい


 ここまでは覚えている、だがその後にあの私の家族達がどうなったかは分からない。

 私は死んだのか?

 計画を成せず、志半ばで死んだというのか。



 少女は雪原の中、ただ一人曇天の空を見上げ、ただぼんやり自分の死が近づき、地に帰るのを眠るように迎える。

「…さん!!ここに、女の子が!!」

「何だって!酷い怪我だ…すぐにあいつの所に連れてくぞ!死ぬなよ!」


 私は赤子の様に体を抱き上げられ、一人の男に抱え上げられ、焦点の定まらない目で流れる雪原の風景を眺めていた。




ーーー雪原森林・キャンプ場ーーー


「リューコ!この子の手当を頼む!ミアは介抱を、仁君はミアとリューコの手伝いだ」

 この男の部下だろうか、男が私をベットへ寝かせると、桃色の髪をした女性が何やら此方へ魔法…だろうか、淡いライトグリーンの光を当てているではないか。

「酷い怪我…ジュン!ちょっとギリアム呼んできて、火傷が酷すぎる。大至急氷を作らせて」

「おう!」

 今ジュンと呼ばれていた男は、急ぎ足でテントを駆け出したと思うと、また違った男を連れてきた。

 彼も今私に治療を施している女性の指示に従いながら、治療に参加している。…私を『魔女』だと知らないから、出来る事なのか。

 大勢の人間に見つめられながら、私の意識は一度ここで途切れた。


ーーーあぁ、エルザ、ロドノフ、カミラ…皆、もう一度あなた達の顔が見たかった。


 あれからどれほど時間が経過したのか、私は外の何かがぶつかり合う激しく、けたたましい音によって意識を眠気の渦から引き上げられた。

 どうやら私は助かったらしい。

「あら?目を覚ましましたか?」 

 透き通って優しい声の持ち主が、此方を覗き込む様に話しかけ、額に乗せられている濡れた手拭いを交換している。

「起き上がれますか?」

 彼女の手を借り、私は枕に腰掛けるように起き上がり、鈍痛の残る体を宥めている。

 そこに自分と同じ年頃の少年が、盆を持ちテントの中へと入って来た。

「あぁ良かった!無事だったんですね…、あっミアさん野菜のスープ作ってみたんですけど、味見してもらっていいですか?」


 彼は盆の小皿を照れくさそうに彼女に渡し、ジッと彼女の評価を忠犬の様に待っていた。

「美味しいですよジンさん。また腕を上げましたね」

「ありがとうございます!」

 柔らかく微笑み、彼の持ってきたスープを褒める彼女は、皿を預かると此方へ差し出してくる。

「温かい内にどうぞ、美味しいですよ。」


 ゴロッと転がった野菜に、調味料も殆ど使ってない事を証明する様な、野菜の甘い香りが漂い鼻孔をくすぐる。

 鮮やかに染まった根菜をスプーンに乗せ、口に運んでいくと自然の甘みが広がり、ゆっくりと冷たかった体も温まっていく。

「…美味しい。」

「うふふ、お口に合ったようで良かったです。ジュンさーん、あの子が目を覚ましましたよー」

 彼女が外に向け声を掛けると、外の煩かった破裂音は止み、頭の上から湯気を登らせ一筋の汗を流す男がテントの中へ顔を見せる。

「おぉ!良かった良かった!」

 青年とは思えない、小さな子供の様にクシャっと顔を歪め、こちらに微笑みを向けると他の呼んだ。


 そして彼らの仲間が全員揃うと、突然自己紹介が始まり各々名乗っていく。


 雪原で倒れていた私の第一発見者『オカノ ジン』

 ここへ運んで来てくれた男『アカイワ ジュン』

 起きるまで開放してくれた女性『ミア・アカイワ』

 ムスッとした顔で、タバコを吸っていた男『ギリアム・ツェッペリン』

 緑髪と猫の様な耳と尻尾が特徴の少女『アスタロッテ』

 一晩掛けて傷を癒やしてくれた女性『リューコ』


「さてそれじゃ、君に質問して良いかい?」

 ミアさんの横に腰掛け、組んだ手に顎を乗せ微笑みながら話しかけてくる。

「アウレリア・カーティス・ベヒトルスハイム。アリーで良いです」

「アリーちゃんねOK。んじゃアリーちゃん君はイーリアの出身かい?」

「イーリア?」

 何やら聞き慣れない名だ、国名か地方の名前だろうか。


 そこから色んな質問が飛んできたが、私個人として話せるものは有れど、此方が聞き返すとどうやら常識等も私が知っている物と大きく異なり、勝手も少し違うらしい。

「んじゃ最後の質問だ。君はあの空に浮かんでいた『ヒビ』に関して何か知っているか?君を回収したポイントの真上に合ったんだが」

 今までのニヤケ面とは打って変わって、細まっていた目も開き、声色も真剣そのものだ。

「いや、それに関しては私は知らない。」

「ん~…そっか!じゃあ仕方ねぇ!」

 アカイワ氏は急に大きな声で豪快に笑ってみせ、私の答えをそのまま受け止めた。


「でもアリーちゃんの故郷?ってのは多分ココとは違う世界、即ち『異世界』と推測出来るな。」

「異世…界?」

「そう。ココとは違う時間軸・惑星・次元、深い事はわからんし、俺も調査中だ」

「簡単には帰ることは出来ないみたいですね」

「…悪いな、だが何とかして、アリーちゃんを元の世界に戻す方法探してみっからさ!」

 彼はそう言うと、豪快にグシャグシャと頭を乱暴に撫でてくる。


「さあさあ、男性の方はそろそろテントから出てくださいね~」

 そう言うと彼女は、男性が出るのを確認すると私の着替えを手伝い、ほつれていた箇所等を完全に修復し新品同様になったコートを渡してくれた。

 テントの外に出ると、やはり外には雪が降りしきり、辺り一面銀世界で寒さが肌を刺す。


 その中アカイワ氏とギリアム氏は、半袖で組手に取り組んでいた。

 互いに徒手で戦い、一流の武芸者という事は一目見て取れる。

「いだだだだだだ!!!アカイワてめぇ!手加減しろや!」

 ギリアム氏背後を取り、右手で彼の右腕を後ろに引き、二の腕を左手でシッカリとロックし関節を決めるアカイワ氏。

「いやぁ、やっぱギリアムと組手すんのが一番だわ」

 彼の降参を聞き取ると、決まっていた関節技を解き、タオルを渡し互いに汗を拭き取る。


「うふふアリーさんビックリしましたか?」

「えぇまぁ。彼らの技術には驚かされました」

 ミアさんはそう言うと、コーヒーを差し出してくれ、隣に腰掛け話しを聞かせてくれる。

 彼女と会話をしていると、脇で腕立てやら腹筋等の個人トレーニングを終了し、すっかり体の温まったジン氏がアカイワ氏に礼をし、二人とも戦闘態勢に入った。

「苦ッ!…彼はあの二人に比べると、格段に実力が劣る様ですが」

「あら苦かったですか?そうですね~、ジンさんは確かにまだ弱いかも知れませんが、今一番伸びしろが有るんですよ」

 彼女はミルクと砂糖を追加し、甘く飲みやすいコーヒーを新しく出してくれた。

 そのままボヤーッと二人の組手を見ていると、ポンチョを着て鼻を真っ赤にしたアスタがやってきた。

「ミアちゃーん!さーむーいー!」

「ちょっと、アスタちゃん!」


 ミアさんの羽織っていたマントの中に潜り込み、顔だけを覗かし此方を見るとニヤっと笑いかけてくる。

「ふっ…」

「アリーちゃんも一緒に入ろー!」

 彼女はそう言うと私の手を引き、ミアさんのマントの中へと引きずり込み、ギュッと抱きついてきた。

「もう…アスタちゃんはいつまで経っても甘えん坊なんですから…」

「あっミアちゃーん!…えー何々?アスタちゃんも、アリーちゃんもミアちゃんに甘えてんの?あたしもー!」

 何処からかリューコさんがやってきて、この状態を見ると彼女もマントの中へ潜り込み、殆どマントの意味を成してないが、押しくら饅頭の様に4人の体温が混じり合い、雪原とは思えない位暑い。


 一体私は、この右も左も解らない世界で、何をして、何の為に、生きればいいのだろう。

 元の世界に置いてきた家族の事、これからの自分の事、そんな事を考え疲れた頭に甘ったるいコーヒーがよく染みる。



To Be Continued

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