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仮題  師を仰いで

作者: 暁夢路

NoMa社Radioの方々と加藤(食物繊維)さん、ダイソンさんが出演・投稿されている「2年B組加藤先生」「夢菓子」の二次創作小説。

取り敢えず上げてみるので、感想やアドバイスをお願いします。


*注意

常さんと現が200年前から夢菓子の仕事をしていることは判っていましたが、何年前から存在しているかが不明だったため、其処と隠と出会った年は私の加減です。

そして、常さんと現と隠が妖(悪さはしない)という設定にしています。




……時は、望が夢菓子に会ってから半年経つ頃。


彼の歪んで止まっていた時間はその出会いによって動き出し、少しずつではあるが着実に前へと進んでいた。

それに柄にもなく安心する現と常に、林花は微笑みを落としていた。


人ならざる彼らだが、実体というのは大分似通っていて、人と同じく感受性に富んでいる。

もしかしたら、それは人以上なのかもしれない。

なぜなら、彼らの持つ《心》は人のそれよりも遥かに澄み切って、正に「純粋無垢」なるものだからである。


人の受け継いできた機能は実に優れている。

二足歩行に始まり、火を扱い道具を繰り、秀でた知性によって多大なる繁栄を遂げた。

それだけではない、心の面でも秀でており、未だ来ぬ「未来」を予想・予測し、過ぎ去った「過去」を振り返ることができる。

他人の心情を考えることだって、誰かを思い愛することだってできるのだ。


だがしかし、人にだって弱点はあった。それが、「欲望」「自己保身」である。

他人を制し頂点に君臨する、何があっても自分だけは可愛くて仕方がない……

そんな愚かで醜い感情を、人と言う生物は生まれながらにして持ち合わせている。

生まれたての赤ん坊は純粋無垢ではない。唯何も知らないだけの無知なる個体なのだ。

人間には元より純粋無垢と呼べるだけの個体は存在しないのである。


その点において、彼ら「夢菓子」は人よりも秀でている。

他人を退けてまで押し通す「欲」を感じず、そうすべき際には自らの身すらも譲ることができるのだ。

それを無理に我ら人間の言葉で表すをすれば、「個人主義」と呼称するのだろうか。


……その辺りの真実が判らずとも、ただひとつこれだけは確実に言うことができるだろう。



「あーあ……常兄さん、チェスでもしません? 今私、途轍もなく暇なんですよ……」



定位置の椅子に気怠そうにして座り、その前に置かれた机にこれまた気怠そうに上半身を預け、腕も前に突き出すように乗せて、そう言った彼――(ウツツ)――と、



「お前もそうか……俺もだ、奇遇だな……。というか、今はチェスより将棋の気分だな」



現に向かい合った椅子に同じ様に腰掛け、同じ机に同じ様にしている彼――(トコ)――は、かなりの天然だ。




       ――     第一章  「人ならざる者」     ――




「えー、将棋ですか……将棋だと私に勝機0なんですよ? チェスだったら未だほんの少し可能性が……」

「じゃあやらねぇ。いくら暇と言えどもこれは譲れない……」

「えー……そこは譲歩しましょうよー……」



そう言って現は不服と言わんばかりにムッと頬を膨らませる。


ボードゲームで自分がどれだけ弱いかを承知している彼にとって、「常兄さんチェス勝負拒否事件」は周囲が認識するより重大な案件なのである。

別に負けたらどうこうなると言う訳ではないのだ。しかし、負け続けることが心地よくないのは読者の皆様も理解の範疇だろう。


それ故に、現はその反対に心折らず説得を試みる。



「だって、猫の食費を工面してるの私なんですよ! それを加味して選択の権利を与えてくれてもいいじゃないですか!」



些細な怒りを声に乗せて常へと向ける。

まあ、それに常が感ずかない筈も無ければ動じる筈も無かったのだが……

何時もならば早々に断って猫に向き合うか寝てしまう彼だったが、今回ばかりは違ったようだ。



「……わかったよ、チェスでいい。ついでに先攻もお前でいいから」

「え!? いいんですか!?」



常の言葉に瞬間的に反応した現は、机につけていた顎をバッと浮かせ、驚きに目を見開いて言った。

自らの発した言葉にそうも反応されるとは予想していなかったのか、常は呆れ混じりに大きくため息を吐く。

そして、動くことが面倒なのか、顔の位置をそのままに目線を上げて言った。



「いや、お前がそう言ったんだろう? 素直に喜べよ」



それに対する現は、戸惑いの色を隠せないままに何とか言葉を紡ぐ。



「そ、そうですけど……いつも堅くなに意見を貫く常さんが、こうもあっさりと折れるのが……

 珍しいと言いますか、何と言いますかー……」



共に長いときを過ごしている彼らにとって、相手の意外な一面のほんの一部が見えただけでもそれは随分な発見になるのである。

それもそう、彼らはおよそ400年もの間を共に過ごしているのだ。

「相手のことを理解するには1トンの塩をなめなければならない」という言葉があるが、正に彼らは1トンの塩をなめるだけの食事――時間――を共にしてきている。



「まあ、偶にはそんなことだってあるさ。

 ……それより、チェスやるのか? やらないのか? はっきりしてくれなきゃどうもできない」

「あっ、やりますやります! 勿論ですよぉ、自分で言ったんですからね!」



そう言う現は、それはもう気怠そうな素振りの一切無い元気な姿勢になり、活気の滲み出る明るい声であった。

いきなりの大きな声に驚いたのか常は少し肩を跳ねさせていた。



「……声がデカい。もう少し静かにしろよ」



そう言いながら、むくっと机に預けていた上半身を起こして、椅子に腰掛け直す。

そんな風に言う声色こそ気怠そうだが、表情の方は何処かワクワクしているような明るさを主張していた。

ふと頭に浮かべた「弟と仲良くボードゲームをする」という字面に和んだのかもしれない。



「あっ、ごめんなさい……。

 で、えっとー……チェスのボードは何処だったかな……」



はっと気が付いた様に謝ると、早速ゲームをしようと道具を探しに席を立った。

きょろきょろと辺りを見回して少々歩き回ってみるが、肝心の道具は見当たらない。

それに現は「あ、あれ……?」と時々口にしながら、内心焦りを感じていた。

「折角常兄さんが誘いに乗ってくれたのに、できないのはもったいない」と思っているのが、それを見る人にも伝わってくる。


当然ながら常にそれが判らない筈も無かったのである。



「……はは、何やってんだか彼奴は……」



子を見る母のような視線を現に送りながら、常は微笑みを浮かべていた。

そして、道具が見つからず焦る現がいよいよ面白くなってきて、小さく笑う。

小さな笑い声だったが、現はそれを聞き逃さなかったようだ。

その場でガバッと振り返り、これまた不満げに頬を膨らませた。



「ちょっと、何を笑ってるんですか!」



その言う現の様子も面白く見えたか、今度は大小ともつかない笑い声を響かせる。

自分を見て笑う常を少し嫌に思ったか、現は更に不満そうな表情で「もー!笑わないでください!」と言った。

常はそれに更に増した笑いを感じるも、そろそろ「現に悪い」と思ったのか、どうにか笑いをこらえていた。



「いや……何でもない。気にするな」

「いやいやいや、自分のこと見て笑われてたらいくら何でも気にしますよ! 吃驚させないでください?」



現には真剣な話だったが、それを常は特別気にすることもない話であったので、彼は「分かった分かった」とはぐらかすように話を逸らす。



「……というか、何もそんな焦らなくてもいいじゃないか。

 俺は『やる』って言ったんだ。いきなり『やらない』だなんて言い出さないのは、お前も解ってるだろう?」



常の言葉は現の思っていた事を的確についていた。現はその言葉に目を見開いて驚いた。

そして、その言葉に安堵の表情を浮かべる。


現としては、常からかけられるそういった言葉は、他の誰の物よりも自身を落ち着けてくれるものなのだ。



「……そうでしたね。常兄さん、もうちょっとだけ待っててください。

 確かこの辺にあるんですよー……」



その言葉を機に、現はくるりと元々向いていた方に向き合い、再びチェスの道具探しへと戻った。

常が其れを優しく見守り、「あーっと、前回はこの辺に置いた筈で……」と、探す手の合間に発される言葉以外は一切を静寂が取り仕切る――




――その筈だった。


……そうであってほしかったと、常は思った。



その刹那、微かに常の耳に届いたのは、何者かの「呻き声」。

泥の底から這い出て来るかのような汚れたその音は、人がいくら醜くても発することはできないであろう。

彼の経験上、こういう声は「人ならざる者」――特に指し示すべきは「妖」――のものであることがほとんどだった。


その音と思考とに弾かれたように、常は懐から武器を取り出し現の方へと駆けた。

……彼は何故其処に駆けたか。

その訳を挙げるとするならば、その《妖》が現に害を及ぼすことを危惧したからか、其方に()()を見たからだろう。



「ちょ、常さん!?」



駆ける音に驚いて振り返った現だったが、夢中で探し物をしていた彼にとっては、常が何故武器を右手に此方へと駆けて来るのかまるで分からなかった。

唯、常の真剣過ぎる表情に恐れを感じて足を竦ませるばかりであった。



「黙れ!!」



その言葉とほぼ同時に、常はその武器を大きく振りかぶって、()()()()()()()()を強く打った。

途端に、辺りにけたたましい叫びが響き渡る。思わず耳を塞ぎたくなるような音は、彼らの脳を強く叩く。


もし、今彼らを見る人があるとしたら、常の表情に胸を痛め現の声に冷静さを欠くことだろう。

それだけ、その音は彼らにとって悪影響を与えるものなのである。


それを堪え、常は現の正面から左手で肩を抱き、体当たりをするようにしてその奥の空間へと押しやった。

横目で現が頭を打たないような体制で背中から倒れるのを見ると、そのまま駆けていた足を左足で止め、その足で進行方向からして後方へと右回りで跳ぶ。

そして、先程打った所に対して現を自分の背にして守るように立った。


いきなり突き飛ばされる形になった現は背中から倒れたが、どうにか手をつき頭を強打するという最悪の事態は免れた。

それがあまりにも突然のことで何が何だか分からなかったが、先程常が打った所から溢れる「それ」により現は全てを察した。


その刹那に彼は思った、「……嗚呼、此れは不味い……」と。



「大丈夫か、現?」



「そこ」を見据えたまま、常は現に聞く。



「ええ、まあ……」



こくりと一つ深く頷きつつ、当惑の色が残る声でどうにか答えた。

そして、嫌々ながら「それ」を見やるとやや引き攣ったような顔をする。



「常兄さん、『それ』ってまさか……」



現は常の姿越しに見える澱みを指差し、否定を望む質問を投げかける。

「これが嘘であってほしい」と、それこそ「夢であってほしい」と、今二人は強く思っていることだろう。

そこまで焦る理由が、読者諸君には判らないかもしれない。しかし、此れは非常事態であり「異常事態」なのである。

その様に割り切って、見ていて欲しい。



「……ああ、恐らく《(あやかし)》だ。それも、かなり面倒な」



そう吐き捨てる常は、随分と苛立っているようだった。

それを見る間もなく、というよりはそれより前に、常の発した言葉に現は落胆していた。

「嗚呼、これは現実なのか」と目が覚めたようだが、できることなら覚めて欲しくはなかっただろう。



「これは……早急に、何か手を打たなければいけませんね……」



「何か手を」とは言っても、その関係が専門でない彼らにとって打つ手など皆無に等しかった。

このままでは、数十秒も経った暁には激しい戦闘が始まることだろうが、二人ではそれを凌いで収める程の力は無いのである。


常の「戦闘能力」は非常に高いが、相手が妖ではそれもあまり意味を成さない。寸刻の猶予を稼ぐだけで、根本は水を刀で切ろうとするようなものだ。

対妖の場合、妖を封じ込めることが出来る「妖力」の高い者が居なければ話にならない。

しかし、現の妖力は普通以上とはいっても、専門でないことに柔軟に対応できるほどの能力はない。


つまり、外部へと助けを求める他に選択肢など無いのである。


……で、だ。少し目を離すのも危険で数十秒も経てば身が危険にさらされるこの状態で、悠々と当てもなく外へと助けを求めるのはリスクが高すぎる。

そのくせしてローリターンと言う訳だ。それで身を滅ぼしては元も子もない。


さて、どうするか……と、現が危うく長時間の思考に陥りそうになった時、ハッと頭に或る物が浮かんだ。



「……そうだ!常さん、いいものがありますよ!」



そう言うと、現は素早く立ち上がり、何やら懐をあさり出した。

常には現の言う「いいもの」が何なのか全くもって想像がつかなかったが、「何でもいいから早くしてくれ……」と言わんばかりのオーラを醸し出していた。



「あっ、ありましたありました!これですこれ、えーっと……『浄薬(じょうやく)』って言うんですって」



そう言って、彼は粉の入った小瓶を取り出し、それを貰った際に受けた説明を回想した。


ガラス製の高さ5cm程の小さな瓶に光を受けてきらきらと光る銀色の粉が瓶の半分の高さまで入っており、瓶の口にはコルクで蓋がされている。

その下のくぼみには「隠より お守りでーす (´Д`)ワアアアア」という何ともふざけた文字が並ぶ紙が紐によって括り付けられていた。



「げ、彼奴のかよ……まあこの際だ、何でもいいから早くしろ。

 あと30秒もすれば乱闘開始、最悪そのまま取り込まれるぞ!」



常は肘を曲げ手の甲を現に向けて、親指人差し指中指を立てて見せる。これは30秒を強調しているので、つまり「急げ」ということだ。

常の背中、ついにはその声色からも焦りが窺える。



「分かってますって!ええっと、ん? ちょ、これどうやって開けるんですか!? 固すぎて開かないんですけど!!」



瓶のコルク栓は思った以上にきつく入っていて、現が力一杯引っ張っても開きそうになかった。



「渡せ!俺がやる!」



常は急げのサインを出していた手を下ろし、掌を後ろ、現の方へと向けて言った。焦りからか、何時もは出さない大きな声であった。

現はすかさず、開かれた常の左手に目掛けて小瓶を投げた。


唯一の懸念で会った「小瓶が落ちる」という事件もないまま上手く常の手に収まったそれを、常は早速開ける。

ポンッとコルク栓が抜ける音が刹那に心地よく響くと、現は思わず「おおーっ!開きましたね!」と感嘆の声を上げた。



「非常事態の楽観思考はオススメしないぞ!呑気に『開きましたね』なんて言うな!

 ……って、これどう使うんだ!?」


「中身をそれにぶっかけちゃってください!常さん早く早く!」


「解ってる!!」



瓶の口をそれに向けて、瓶を投げ出さんばかりの勢いをつけて振る。

瓶から飛び出した銀色の粉がひらりと舞う姿はまるで雪の様で、思わず見蕩れてしまいそうになった。

舞った粉も、普通ならばそのまま床に散り落ちるだけである。しかし――


――あの「隠」が寄越したものだ、そうであっては困る。


そんな常の思考を読んだかのようなタイミングで、舞う「雪」が常が打った一点へと集中し始めた。

既に落ちた粉から未だ舞う粉までもが、澱みを取り囲むように高さのある円を形作っていた。



「っ……!」



……段々と、円が狭まっていく。その間《妖》は、聞くに堪えない程の金切り声や呻きを上げていた。

現はそれに耳を塞ぎ、常は辛そうに片目をつぶっている。


円が縮み切る頃にはそれも已み、残っていた粉もはらはらと何処かへ消えていった。



「……せ、セーフ……です、かね……?」



目の前の事態が収束したように思った現は、耳を塞いでいた手を下ろして常に問い掛ける。

その顔には未だ焦りの色が残っているが、それは常においても同じであった。


問い掛けに対し、武器を構え警戒態勢だった常は懐に武器を収め、静かに現の方へ向き合って言った。



「一応、この場はセーフ……だろう。流石にすぐには来ないと思うが……」



――「いずれ、確実にまたやってくる」。

そう言葉が続くのは明白だった。それ故に、手放しでこの状況を喜べはしなかった。



「まあ、一時的でもしのげただけ良いでしょう」



現はどっと疲れたような顔をして言う。



「それよりも私は、さっきのが一体何処の何奴で此処にどうやって干渉したのかに興味ありますよ……これまた面倒なことになりました」


「ああ、そうだな……。俺もあれには心当たりがない」



彼らが自ら発した言葉によって、彼らは増々顔色を曇らせた。


……彼らが此処まで焦る理由は、この場所の特殊性由来のものだろう。

本来此処には、夢菓子と彼らに呼ばれた客しか来られない筈なのである。

       

妖の世と現世の()()()に存在しているこの特殊な空間に、ただの妖では入ることはできない。

「夢菓子に許されたもの」しか入れない空間にああも襲撃されるとなると、相手はかなり力の強い奴と予想される。

あの呻き声からして、おおよそ人が恨みや多大な「欠陥」を抱いて死んだのが妖となったパターンだろう。

しかし、恨みの力だけど此処に侵入できるとなれば、其奴には生半可な体術や妖術では勝てない。


とどのつまり、二人では根本的な対策はできないのである。

多少の反抗も、破滅までの時間を僅かに引き延ばしただけにすぎないだろう。

それを専門としていない彼らにとっては仕方のないことなのだが、「何もできない」という無力感は二人に重くのしかかった。


そんな空気の中、言葉を絞り出すように現は声を発した。



「さて、どうしますかね……完全にノープランですよ?

 ここは一度、現世に行って多少でも調査をしますかね?」


 「いやいやいや、そんなことしても何も得られやしませんってばぁー!

  現ってば莫迦なんですか? その年でもうポックリいきたいんですか?」


「それは嫌ですねぇ……ではどうしたものか……って、ちょ、え!!??」



常のものではない「もう一人」の声に何気なく頷いていた現が、何かに気が付いてそれが発された方から飛び退く。

その「もう一人」が誰なのか分かっていた常は、あからさまに嫌そうな顔をしながら溜め息を吐いた。


当の「もう一人」はというと、自分の言葉に普通に反応していた現にいきなり飛び退かれたことに驚いていた。



「ちょっとぉ!? 何、いきなり飛び退くのは心臓に悪いんでやめてくださーい? 全くもう、ひっどいなぁー」



その手入れの行き届いた濃紺の髪はショートカットに切られており、長くした前髪を左に流しヘアピンでとめている。

その黄色が、紺色にとても映えていた。目の色は透き通るような黒だ。

白いワイシャツに黒いズボンを穿き黒いベルトを締めている。

少し明るめの黒のジャケットを羽織り暗い茶色の膝が隠れる程長いブーツを穿き、ズボンの裾をブーツに入れていた。


そんな出で立ちの彼女の名は――



「――隠、酷いのはお前の方だ。何だ、いきなり出て来やがって」


「もー! おどかさないで下さい?! こっちこそ心臓止まっちゃうじゃないですかぁ」



隠と呼ばれたその人物は、それらの言葉を「あー、すいませんすいませーんでーしたー……ハイ謝ったもう気にしなぁい」と軽くあしらった。


このマイペースぶりというのは、昔――およそ300年前に初めて会った時――からあまり変わっていない。

こんな口調ではあるが、実は凄腕の「大禍守(オオマガノモリ)」なのだ。

「大禍守」とは、読んで字の如く「大禍から守る者」のことだ。

では大禍とは何か――それは、時として妖のことであり霊のことであり、また「心」のことでもある。

つまりは、善の者に危害を与える「悪なる存在」――大禍――から依頼人を護衛することを生業とするものが「大禍守」なのである。


その仕事の内容故に、それらに対抗し得るだけの高い能力や知力、体力がある者でなければ任務は務まらない。

そんな厳しい条件をクリアしてきた妖(現役で任務に就いている大禍守)の数は百程だが、彼女はその中でも上位3位に入る実力者であった。

何時もの様子では予想し難いが、一度彼女が戦闘をしているところを見るとそれも覆るだろう。



「てか、そんなこと気にしてる場合じゃあないですよねぇ?

 お二方がお守りに渡した浄薬使ったから、軽く任務放棄してきたんですよ? これで何もなかったなんて言わせませんよー?」



まだまだ続きますよ。取り敢えず1章くらいは完成させたい。

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