入学式。
眠い。投稿遅くなりました。
あーだこーだと、そこから二人は何かを話していた。無論、僕はほとんど会話を聞いていなかったけど。
しばらくして、『全員席に着くように』と体育館へアナウンスが流れる。
慌てて席を確認すると(してもらった)、偶然にも隣の席だったらしく、三人共同じクラスだということもわかった。
なんだか、離れ離れにならなくてよかったと思う。友人、と呼んでもいいのかわからないが、こうして話ができる人物とクラスが違うのは、どうにも心許ないから。
――しかし。
「あ、あのカナメさん」
席につくと同時に左手を握られていた。それはもうがっしりと。
入学式は始まっているというのに。
「何~? いっちゃん」
それでも、のほほーんと、笑顔を浮かべているカナメさんは、教師が怖くないのだろうか。
この状況で見つかれば、確実に注意されるというのに。緊張感がないというか、何というか。
この人は、度胸と精神面が以上に強いのだろう。……僕が弱すぎるのかもしれないけどね。
と、そんなことを考えていると。
「えと、鈴さん?」
右腕にも同じような感触。反対側を見れば、真っ直ぐ壇上の方に視線はむけているものの、右手を握っている鈴さん。
「どうした一式」
視線をこちらに向けず、僕を気遣う鈴さん。
……いや、なんかもういいです。
どうやら、この人たちには教師の注意など、どうでもいいらしい。いや、鈴さんのほうは辛うじてセーフだと思うが、カナメさんはアウトだ。ずっとニコニコしている。式なんか興味ない、とでも言うように。
――入学式も進み、終盤。新入生代表挨拶が始まった。
……もちろん、その間ずっと手を繋いだままである。
壇上に上がる一人の生徒。黒く、まっすぐ伸びた髪の毛をなびかせながら、彼女は堂々とした面持ちで、マイクの前に立つ。
「在校生の皆さん。この度、代表挨拶をさせていただく雨宮心です――」
雨宮と呼ばれた少女の挨拶は、それは丁寧なものだった。校長や在校生。新入生にもそう印象付けられただろう。
かくいう僕も、その対象外にはならなかった。
凛々しい、素直にそう思える。キリッとした目つきと、整った顔立ち。緊張なんかものともせず、動じない。声は透き通るような、心地のいいもので、入学式も終盤。終わりが近づき、だらけていた生徒も、彼女の挨拶にはきちんと耳を澄ませていた。
……まぁ、両隣に例外の人がいるみたいだけど。
「いっちゃんの手、あったかいね。ねぇ知ってる? 手があったかいと、眠いって証拠なんだよ?」
「確かに一式の手は暖かい。というかカナメ。お前その手は何だ? 入学式の最中に、影でこそこそ何をしてるかと思えば。一式も大変だったろうに。少しは一式の意見も尊重してやれ」
「あー! そうやってまた鈴ちゃん一人だけ逃げようとしてるの!?」
「何を言う。私はちゃんと前を向いて話を聞いていた。カナメはずっと、一式の方を見ていたんじゃないのか?」
「……あの、まだ入学式終わってないですよ?」
もう少し声のボリュームを落としてほしい。というか、近くにいる何人かの生徒は、こちらをちらちら伺っていた。
しかし、鼻で笑う鈴さん。
「関係ないさ。所詮、こんな行事、あってもなくても変わりはしない」
「そうだね~。いっちゃんは気にしすぎなんだよ~」
鈴さんの意見に便乗するカナメさん。
……あれ? これって僕が間違ってるのかな?
明日も学校がありますので、推敲は今度やります(もういつやるのかも決まっていない