初めての登校。
この場から逃げたい、ただその一心で。僕はその歩みを速める。
――校門の前では、なにやら検査が行われていた。
身だしなみのチェックや、持ち物を、腕章をつけた生徒が取り行っている。
大変だな、と僕はその横を通り過ぎようとするが……。
「そこのあなた。少し止まりなさい」
呼び止められた。メガネをかけた、知的な印象を受ける女生徒に。周りの生徒がざわついている。もしかしたら、どえらい人が出てきてしまったのかもしれない。
横を無断で通り過ぎようとしたからなのか。
でも、僕は荷物を持っていない。新入生も、荷物を持っていない人たちは横を通っていたし。止められる理由はないはず。
メガネをクイっと持ち上げ、女生徒はじろじろと僕の制服を見ていた。
「あ、あの。どうかされましたか?」
ただ、見ているだけの彼女。特に言葉は発しない。その空気に耐えられなかった僕は、その生徒に聞いていた。
問題があるなら早く言ってほしい。こんな所で目立ちたくはない。
「……あなた、一年生よね?」
「……そうですけど。な、何か問題がありましたか?」
「いえ、どう見ても高校生には見えなかったから」
グサっと突き刺さる、無慈悲な言葉。彼女は至って真面目に疑問を抱いたから、その質問を投げかけてくれたのだろうが。それは男の僕には辛すぎる。
「それに、その服。男子生徒のものよね? ここの規則では、服装は自由だけど、違和感しかないわ」
グサっ。
「それに、着飾ったりもしてないし。女性なんだから、身だしなみをきちんとしなさいな」
グサグサっ。
「確かに顔立ちは綺麗で、肌も雪みたいに真っ白だけど。化粧とか、アクセサリーとか。年頃なんだから、そういうものに興味も持つでしょう? いくら化粧をする必要がないからって、あまりにも女性らしさが欠けてると思うわ」
「……僕――」
「僕? 淑女たるもの、自分の事を僕とは言ってはいけないわ。一人称を私に変えてみることから始めなさい」
「――男……なんですけど」
瞬間。周りの空気が凍った気がした。興味本意でやりとりを見ていた生徒も含め、目の前の女生徒もまた然り。
目を白黒させて、僕の発言を脳内再生でもしているのだろうか。暫く固まっていた彼女。
復活するなり、僕の肩を掴み、前後に揺すり始めた。真剣な眼差しで、だ。
「嘘でしょう!? 嘘だって言いなさい! あなたはどうして自分の性別を忘れてしまったの!?」
「あうあう。あんまり強く……揺すらないでくださいぃぃ」
「だっておかしいでしょう!? こんな子が、男だなんて! 信じられるはずがないでしょうが!」
今日はもう一話、投稿したいですね。