初めての登校。
今日はこれで最後かな。
「はッ、はッ、はッ!」
周りの風景を見ながら僕は走る。川のせせらぎ、虫の声。車の音に、アスファルトから聞こえる自分の足音。
鳥籠の中から出された鳥は、自由に飛び回れる。確か、そんな昔話を幼いころに話された。
「くぅぅぅ!! 楽しいよ!!」
心臓が痛い。十年間、走ったりすることもなかった。新しい空気が肺の中を循環する感覚。子供の頃に味わった、充実感。僕の心はそれだけで満たされていく。
「はぁ……はぁ……」
額から流れる汗を拭うと、僕は空を仰ぎ見た。どこまでも広がる雲と、青い空。本当に鳥になった気分だ。
「す、少し休憩しよ」
はしゃぎ過ぎて、息が切れた。当たり前か。十年間、運動という運動をしていなかったんだから。
近くのベンチに腰を掛ける。息をゆっくり整えながら、僕は坂道の向こう側を見つめた。
桜並木の坂道を上ったところには、僕が通う高校も見えた。
「……ふぅ。さて、行きますか」
坂道は流石に、走る気にはなれなかった。入学式が始まるまで……まだ時間はある。
というより、走ったせいで、予定より早く来てしまったのだが。
――ここから始まる学校生活。新たな旅立ち、人生の分岐点。
心が躍るのもまた、仕方のない事なのだ。
坂道を上っていくに連れ、だんだんと、人の数も増えてくる。新入生、在校生。この学校の規模は一体どうなっているんだろうか。遠くから眺めていただけではわからなかった学校の全貌が明らかになると、ただただ僕は、唖然とする。
校舎は見上げるほど高く、天に突き刺さりそうな程、真っ直ぐに伸びていた。
待ち構える校門は、まるでどこかの城のよう。大きな扉は重低音を奏でながら開いていく。
「ふええ。十年でこんな大きな建物が建つんだねー」
なんともヘンテコな声が漏れた所で、ふと、僕を見つめる視線が増えてることに気付いた。
新入生も、今までは校舎を眺めていたのだろうが、あらかた心の中で整理がつけば、目に入るのは新入生の顔であり。
白髪(僕)という特殊なモノを見つめる視線は、肌で感じ取れた。
「……なぁ、あの子、めっちゃ可愛くね?」
「……髪の毛綺麗ねー、あの子」
「……どこかのご令嬢かしら?」
「……やべぇ、ちっちぇ。抱きしめたいなあれ」
――先行きが不安だ。まさかこんな早くに注目の的になるなんて。ひそひそ話だから声は聞こえないけど、どうせこの髪の毛の事を言われてるに違いない。
もしかしたら、この服が何かおかしいのかな?
制服なんて初めて着たから、それこそちゃんと着れてるのかも不安要素である。
近日中に、一ページ二千文字ペースで書けたらいいなと思っています。『目覚め、そして覚醒。』も、二千文字にまとめてみたり、大幅改変するかもしれないですが、内容は変わりませんので、大丈夫です。(内容は考えてないから、それこそ変わる要素がないというかなんというか)
では、また明日。