目覚め、そして覚醒。
学校で投稿しました(
腰まで伸びた、自分の『白髪』。鬱陶しくもないが、流石に長すぎだろうか。
「切りましょうか?」
入学式の印象で、高校生活も変わってくる。ただでさえ、こんな髪の毛の色をしている生徒がいたら悪目立ちするだろう。
……そうだ。どうせ外に出られるんだから、いっその事切ってしまおう。
しばらく、この家には帰ってこれないことだし。少しの自由でも、僕は嬉しい。
高校は寮である。荷物など、その他私物は運んであるらしい。それに伴い、学校が始まる一週間前から、寮に入ってる生徒もまぁまぁいると聞かされた。
既に友人の輪が形成されていたら……大変だろうな。
他人と関わりを持たなかった僕が、いきなり友達づくりだなんてハードルを飛び越えられるのだろうか。……気持ち悪いと、言われないだろうか。
いや、そう言われないために切るんだ。うん、切る。絶対切る。
「髪の毛は切る必要ない。……お前はお前だ」
しかし。僕の友人づくり計画は、父の一言で却下された。学校でも僕に自由はないんですかね……。
「……はい。では、そろそろ行こうと思います」
はぁ。これでボッチ決定だろうか。学校に行って、誰にも話しかけてもらえず、自由だと思っていた三年間が終わってしまうのだろうか。
いやいや、ここで弱気になってどうする。僕は今までずっと一人きりじゃないか。
今日までの生活と変わらないか、友人ができるかの二択。ただそれだけの事だ。
「朝食は向こうの寮で食べるといい」
「はい、わかりました。父さんも、どうかお元気で」
――お辞儀をして、僕はリビングを後にした。
久しぶりの外。わくわくが止まらなかった。ある意味、冒険だったから。
十年ぶりの外の風景が見たいために、僕は意気揚々と家を出るのだった。
「シストリアは……目覚めなかったか」
私は、一式の部屋の前に立っていた。あの子のいなくなった部屋。それは私の罪を確認するためでもある。あの子がどういう心境で過ごしていたのかを知るために。
十年間あの子を閉じ込めてしまった。
けれど彼女は目を覚まさなかった。どれだけ、あの子の人生を無駄にしてしまったんだろうか。
考えれば、あの子に抱く罪悪感しか芽生えてこない。
一式は、よほど嬉しかったんだろう。十年間、あの子はシストリアと一緒に居た。でも、本当にそれだけの毎日。
そうさせてしまったのは私自身。あの子が、シストリアを目覚めさせてくれると確信していた、そう思っていた頃の自分を殴りたい。むしろ、今からあの子にしてあげられる事はないのだろうか。
十年、十年だ。長過ぎた。一番、遊びたい盛りの子供が、素直に私の言う事を聞いてくれたんだ。
「……ふぅ。シストリア。お前はあの子の何が気に入らなかったんだ」
部屋の戸をあける。真っ暗で、何も見えない空間がそこに広がっていた。部屋にはベットしかない。物音一つしないこの部屋に、あの子はずっといてくれたのだ。
「私は……馬鹿だったんだな」
子供に強いる事ではない。自分の犯した過ちは、思っていた以上だ。
当時の私は、目の前のことしか考えていなかった。利益、それを優先したんだ。
人形に魂を入れる。それを発見して、天狗になっていた。動く人形を創りだす事に成功して、ある一つの疑念に辿りついたんだ。
人形に愛情を注いだらどうなるのか、と。
自分の息子を実験台にして――本当になんて事をしていたんだろう。
「……シストリア?」
戒めの言葉を自分に投げかけている時に、ふと、その違和感に気付く。
――この部屋に、ベット(・・・)しかないという事を。
自分の糞みたいな文章を見直したくない、切実にそう思う。