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樞繰人形町  作者: 雪月飴
一章 過去の記憶。広がる未来
2/15

目覚め、そして覚醒。

初投稿でございます。誤字脱字等がございましたら、報告の方お願いいたします。

「おはようございます。一式さん、早く起きないと遅刻してしまいますよ」

 感情のこもっていないその人形が、僕の体を揺すった。

 緑色の髪をだらんと下げ、僕の顔を覗き込むようにして。

「うん……わかってるよ」

 温もりを感じないその手を優しく払いのけ、カーテンの隙間から見える太陽に、僕は目を細めた。

 氷を溶かしていくように、じっくり脳内を覚醒させていく。まどろみ状態で、視界もはっきりしていないからか、体がいつも以上に重く感じた。

「大丈夫ですか?」

「眠気も覚めてきたよ。……いつもありがとう」

「いえ。命令ですから」

 十年間続いた、いつも通りの会話だった。何もない、それこそ、人間として足りない部分を隠そうともせず。一切表情を変えない彼女は、ただ頭を下げるだけ。

「もう平気だから。仕度を終えたらすぐに行くよ」

「了解しました。では、これで失礼します」 

 名前を持たない彼女は、ただ静かに部屋から出ていった。その戸が閉まると同時に、僕は一つため息を零す。

「はぁ。……学校、か」

 思えば長かった。こんな生活、もうこりごりだった。

 身の回りの事は、なんでも人形がやってくれた。それこそ、掃除に洗濯、炊事まで。

 操り人形のような生活。部屋から出してもらえない虚無感。やりがいも何もない。ただ、時が過ぎるだけを待つことが毎日の日課だった。

 それが今日で終わる。改めて過去を振り返ってみれば、本当に僕は何にもしていなかった。思い出もなにもない、からっぽな日々。

――強いて言うならば。

「シストリア。君だけが僕の全てだったんだよ」

 喋らない人形、シストリア。僕は自分の身長よりも高いその人形の頬を撫でる。

 磁器製の人形の頬は冷たく、生気は感じられない。

 僕にはすることがなかった。だからこそ、一番親近感を覚えるのも彼女だった。喋りはしない彼女だけど、子供の時から一緒に過ごしてきた。同じ空間で、同じ時間の中にいた。

「でも、今日で君ともお別れか……。なんか、寂しいよ」

 名残惜しくもあったが、僕はシストリアから手を離す。いつまでも降りてこない僕に、また人形たちが部屋を訪ねてくるかもしれない。この空間に、本来ならば誰も干渉してほしくない。

 身支度を終わらせ、僕は部屋を出る際、もう一度シストリアの方に顔を向ける。

「行ってくるね。今までありがとう」

――カタッ。

 部屋の戸を閉めるときに、何か物音がした気がするが、僕は気にせずリビングに向かうのだった。

少なかった……ですね。まぁ仕方ないんですよ。まだ初投稿ですし大目に見てください(白目

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