プロローグ
プロローグ書いてなかったああああああああああああああああああああああああ。
人形峠。
――幼いころ、母に聞かされた言葉だった。
「人形峠の先には、いったい何があると思う?」
「うーん。何があるのかな?」
「それは誰にもわからない。でももし、人形峠に行く機会があったら、一式が見てきてほしいかな」
暖かい笑みで、母は笑っていた。子供の頃の記憶だから酷く曖昧だけど。
「お母さんも一緒に行こうね。人形峠」
「ええ。その時は一式に連れて行ってもらおうかしら」
――なんて、そんな約束をしたこともあった。
どうしてこんな夢を、思い出してしまったんだろう。
まだ、誰も見たことのない人形峠。架空の、それこそお伽話の世界だ。
子供を脅かす時にも、その言葉は使われていた。
『悪いことをすると、人形峠から人形たちが、あなたを攫いに来るわよ』、とかね。
でも、僕はそれに憧れていたんだ。連れて行ってくれるなら、来てほしいと。攫ってくれるなら、今を生きているこの地獄から救ってほしいと。
人形は、助けには来てくれなかったけれど、それでも、人形峠はあると思っていたい。
十六にもなって、そんな幻想を抱いているほうが馬鹿らしいけど。
サンタクロースを信じていたい子供のように、僕も人形峠を信じていたいんだ。
それが、母との約束で、最後の願いだったから。
そろそろ、夢が覚める。僕は、白く塗り潰れていく光景を目にしながら、ゆっくりとその意識を覚醒させるのだった。
プロローグって大事だよね(適当