月のリング
アカリは、目の前で突然泣き出した国主と名のったオジサマに困ってしまった。
泣き出したいのはアカリの方なのに……。
先に目の前で取り乱されてしまうと、逆に少し余裕ができて視野が広がった。ふと、窓から月明かりが見えた。
今は夜だったんだ……。
窓を通して夜空を見上げると満月が出ていた。しかし、違和感があった。どこかいつも見慣れた月ではなかった。
まるで土星のように、月にリングがついていたからだ!
「キャァァァァアァーッ!?」
アカリが思わず悲鳴をあげると、すぐに部屋に数名の女性が駆け込んできた。ナースではなかった。クラシックなメイド服を着ていた。
「つ、月が、月が違うわッ!! なんでリングがついてるの!? 全然訳がわからないわ! いったいどうなってるの? 帰してッ!! アカリを帰してよッ!!」
「輝姫さま、落ち着いてください。もう大丈夫です。ちゃんとお屋敷に帰ってきたんですよ。とにかく、今はゆっくり休みましょう――」
メイドが用意したハーブティーのようなものを飲まされると、スーッと意識が軽くなるのと対照的にまぶたが重くなっていった。
アカリは眠ってしまった……。