氷イチゴ
「先に行って、その辺の出店を見て回ってくるね」
タマちゃん達に仲のよいところを当てられるのもしゃくなので、アカリはふたりから離れて歩いて行った。
仮装コンテストの賞金狙いなのか、お祭りに来ている人はみんな何らかのコスプレをしていた。
たぶんこの人は河童よね、頭にお皿をのせているし……。で、こっちは金棒を持っているから鬼。黒マントで牙がむき出しのこの人は吸血鬼でしょ。
コンビニの前を通ると買い物をしている女の子がたくさんいた。背中に羽をつけたドレス姿の天使や妖精たち。うさ耳をつけているのはバニーガール? それになんだか、看護婦さんや客室乗務員の制服を着た人までちらほらいるんだけど……。あの婦警さんは本物なのかな? そもそも職場の制服を着ただけで仮装っていえるのかしら……。
仮装コンテスト中だから許されるけれど、妖しい格好をしたオネーサマたちが通りでたむろしているのを見ると、なんだかアブナイ街みたい。
混雑した仮装行列の中を歩いてきたせいか、なんだか身体が熱くなってきた。アカリは出店の中にカキ氷屋さんを探した。
氷印の暖簾を見つけてお店に行くと、店員さんは雪だるまだった。
わあっ、着ぐるみなのかな? 結構本格的なんだ。
「雪だるまさんっ、氷イチゴください!」
アカリは嬉しくなって、つい大きな声で注文してしまった。
「いらっしゃいませっ! 元気のいい雪女のお姉さんには、おまけしちゃうよー!」
声からすると、雪だるま中の人はバイトの大学生のお兄さんなのかな。
みるみるうちに大きな氷が削られると、カップからこぼれ落ちる程の特盛カキ氷が出来上がった。赤いイチゴシロップをたっぷりかけて、サクッとスプーンを差して渡しくれた。
「うわぁ、ありがとう。雪だるまのお兄さんっ!」
隣の店員さんが、雪だるまとのツーショットをスマホに撮ってくれた。