表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ガール  作者: 烏賊 宙
3/81

死神兼女神

「すみませーん。写真撮らせてもらってもいいですか?」


 後ろから声をかけられた。


 長くて大きな(かま)を肩にかけて、傷んだ黒いローブを身にまとったドクロが立っていた。眼孔(がんこう)がボヤーと青白く灯っていた。


「ヒィッ! 死神っ!」


 タマちゃんが素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げる。


「まさか、輝姫(キラリ)がこんなところにいるとは思わなくて。お久しぶり! 女神です」


 頭を覆っていたフードをとってドクロの仮面を上にずらすと、金髪で碧眼(へきがん)のかわいらしい少女の顔が現れた。


「いえ、私はアカリですけど……。死神なのに女神なの?」


「そうなんです。いつもひとりでやってるから、現場が離れると大変なんですよー。それじゃお願いしますね」


 女神はスマホをタマちゃんに渡すと、アカリの隣に並んで大鎌で刈るように両手で柄を持って構えた。アカリも負けずに手を口元に当て息を吹きかけるポーズを決める。

 タマちゃんはきれいに写真を撮ってくれた。


「ありがとうございますっ!」と、陽気にいうと死神兼女神(しにがみけんめがみ)は人ごみの中に消えて行った。


「雪女 vs 死神か。こうして見ると、アカリも友達の方も結構気合入ってたわねー。これは強敵だわ」


「ううん、彼女とは初めて会ったと思うんだけど……どこかで会ったのかなぁ? でも、雪女の正装がふつうの人に見えて、仮装に見えない時点ですでに大会は苦しくない?」


 スマホにコピーしてもらった写真を見ていると、

「おーい! お待たせー!」

 向こうからボロボロの服を着た、まるで浮浪者のような少年が手を上げて近づいてきた。


「遅いよ~、ハルマって、なにそれ? 貧乏神のコスプレのつもり?」


 タマちゃんが呆れたような顔をしてジロリと(にら)んで言った。ハルマは、タマちゃんの彼氏だ。


「どうよ、この衣装。古着屋でタダでもらってきたのを汚したり破いたりしてそれらしく加工したんだぜ。それに、このマスクをかぶるとだな……」


 ハルマはなにやら袋から取り出して、頭からかぶった。顔が半分腐りかけたようなゾンビのマスクだった。


「はぁ? いつものハルマと一緒じゃないのよ。ねぇ、アカリもそう思うでしょ」


「まあタマちゃん、さすがにちょっとひどいんじゃない?」


「おお、やっぱりアカリさんは優しいなぁ」


 あ、ヤバイんじゃ――と思った時には、もうタマちゃんはむくれていた。


「あっそ、それじゃ、ハルマはアカリとお祭りを楽しんで来たら? 私はもう知らないからっ!」


 また始まった。でも、タマちゃんは本気じゃないのよね。こうするとハルマがご機嫌(きげん)を取ってくれるし我がままを聞いてくれて甘えられるから、わざと怒ったふりをしているんだわ。


 そんな勘弁してくれよー、とペコペコ謝るゾンビのハルマとあさっての方を向いてプンプン怒る猫娘のタマちゃん。

 とりあえず、スマホに撮っておいた。


 これはこれでふたりの愛情表現なのよ、とアカリは心の中でちょっぴり(うらや)ましく思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ