表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ガール  作者: 烏賊 宙
10/81

エスケープ

「ねぇ、新入りさん? はじめてよね」


 アカリがすばやく病衣からメイド服に着替えている時に、声をかけられた。

 振り向くと、茶髪ボブカットのメイドさんがいた。

 ここはお屋敷のメイド専用の女子更衣室だ。

 アカリは、先ほど部屋の巡回に来たメイドさんの後をこっそりとつけてきたのだ。


「えっ? ええ、臨時ですが……。よ、よろしくお願いします」


 アカリは慌てて黒いワンピースのメイド服に白いエプロンを着る。慣れない手つきで襟もとにリボン、頭にはカチューシャをつけた。鼓動が早くなり手が震えた。


「そうね、こちらこそよろしく。あら? あなた、その銀髪――」


 茶髪のメイドさんは何かを思い出したように、アカリの顔を凝視した。


 ――バレたッ!?


 アカリの心臓が止まりそうになる。思わずギュッと目をつぶってしまった。


「カチューシャが曲がっているわよ。直してあげるから」


 そっと、茶髪のメイドさんは位置を手直ししてくれた。


「あ、ありがとうございますっ!」


 アカリは更衣室を飛び出した。手はぐっしょりと汗ばんでいた。


 夜、スマホに女神さんからの着信があった。……ということは、ここはやっぱり日本なんだ! いくらメカ音痴のアカリだって、電話会社がなければ電話が通じないことくらい分かるわ。


 月にリングをつけて投影したり、いくらみんなで演技しても、異世界だなんてもうごまかされないんだからっ!


 とにかくここから脱出して、スマホが通じる場所に行って通報することができれば……。たまたま、窓から近くにアンテナ塔が見えていたのよ。

 たぶん、お屋敷の中だと、石造りの壁で電波が届かないか、もしかしたら、妨害電波のようなものが出ているのかもしれないし……。


 いけない。このまま廊下を進んでも、そのうちに絶対バレてしまうわね。


 アカリは窓を開けると、すぐそばまで伸びている壁をはうツタを掴んで三階から外に身をのり出した。両手でしっかりと握って、足場を確保しつつ、少しずつ、ツタをつたって下りていった。

 やっと地面に足がついて、フウゥーッと一息いれる。


 夜空を見上げると、燦然と月が輝いていた。


 ……相変わらず、リングのついた異世界の月が……。


 そして、石造りのお屋敷の外に出たというのに、スマホは圏外のままだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ