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猫ロ眠@囚人Pの作品群をリスペクトしています。
「んなぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ""!!!」
産声と肩を並べるような声量で、再びボクの物語が始まった。
そして、開始早々、ボクの耳がお亡くなりになりましたとさ。
ちゃんちゃん。
「またかよっ! また知らないところだぁぁぁ.....ぅ"が」
「うるさいよ、と僕なら言うでしょう」
ボクは絶叫に耳を塞ぎながら、目を薄く開いた。
知らない女性が二人。
見事に頭部にハイキックがお見舞いされていた。
これまたボクと同じ転移(?)されてきたのかな。
彼女らと違い、とりみだすことがなかったボクを褒めてほしいね!
「想像以上に騒がしいね......とはいえ、これでみんな揃ったね」
ボクが転移(?)してからずっと話していた女性は、あたかもこの光景を想像してたみたい。
仕切っている40代の窶れた女性がひとり(自称2歳)。
ハイキックされた30代にみえる女性がひとり(痛みに悶えてる)。
ハイキックした20代にみえる女性がひとり(姿勢がいい)。
そして、15歳のボクがひとり(ずっと黙ってる)。
あれれ、みんな顔が似通っているような?
「とりあえず、みんな席に着いてくれるとうれしいな」
「......なんだよこれ、はぁ」
「......むむむ、と僕なら言うでしょう」
ふたりは、なるようになれという雰囲気で気怠く席についた。
ボクの真向かいに座ったのは、ハイキックされた女性の方。
ボクの隣に座ったのは、ハイキックした女性の方。
そして、隣に座るハイキックした女性とボクの目が合う。
と同時に、彼女の眼が開かれる。
嫌な予感がする。
「っ!......キミは僕のフィアンセじゃないか!」
うげ。やばい人だった。
そもそもフィアンセってなんだ!フィアンセって!
ボクも最高にかわいい女性なんだが!
「LGBTQよりも大事なのは、フィアンセかそれ以外かッ!」
一言も話してないのに、会話できちゃってる!?
「キミのことならなんでも解るよ。僕のフィアンセ」
フィアンセでもなんでもないよ!?
いろいろ言いたいけれど、今はもう話したくないよという目線を送るに留めた。
それを理解してくれたのか、解られたのか、彼女は口をそっと閉じた。
口の端はにやけているけれど。
そんなこんなでボクらは仕切っていた女性に目線を向け、話を促す。
けれども、それを遮るように、ハイキックされた女性が口を挟んだ。
「俺が知りたいのは、ここから出る方法だ」
『俺』が一人称のその女性は、怪我してもなお、曇りない敵意を迸しらせている。
そして、『もちろんだよ』と、仕切る女性は口の端をにやけただけで受けとめた。
あれ、口の端をにやけるその表情、既視感が。
「キミのことならなんでも解るよ。私のフィアンセ」
なにが起こっているんだ!?
ボク一言も話してないのに、こんなに話って進むかな!
なんかボク寂しいよ!
閑話休題。
ここから脱出する為の大事な話をするね、と仕切る40代の女性が口火を切った。
「キミたちは、私によって転移された」
それはみんななんとなくわかっている。
議論の始まりは前提条件のすり合わせからだね。
落ち着いた議論が始まり、ふと転移したこの場所を見渡す余裕が生まれる。
ボクらが腰掛ける椅子は、青と黒が綯い交られ、少ないながらも散りばめられた赤が存在感を放つ。机も床も壁も同じような色彩で。狭くも広くもない。
天井は無く、夜空そのものが広がる。ただその中で、動かない星々が、不気味にボクの不安を煽ってくる。
「先ほどそこの少女に『大人ってなんだと思う?』と聞かれてね。それを話そうと思う」
「えっ関係ない話するの!?......しかもボクのせいにされてる!?」
「ふふっ関係はあるよ。いやでもまぁ十分かな。ここから出る方法について話すよ。と、その前に」
その前がまだあるのかよっ!
まぁ話やすいなら、そうしてくれると助かりまするでございまする。
それにしてもこの場所の居心地、なんだか嫌いじゃないんだよね。
「実は......私ら、同一人物なんだよね」
「............」
「その少女が15歳の私。ボクっ子かわいいね」
「その少女の隣が25歳の私。ハイキックかっこいいね」
「私のとなりが35歳の私。ハイキックの衝撃逸らしは脊髄反射かな」
「そして、私がキミたちの42歳の姿だね」
「............」
「そして私の手の中にあるこれが、あらゆる因果を断ち切るナイフでね。たとえば、これで未来の自分を殺せば、その未来に辿り着くことはなくなる。また、過去の自分を全員殺せば、今までをやり直すことができる」
まるで自分自身を誇るように、優れたナイフだろう、と彼女は言った。
「脱出条件はただ1つ。私以外がここから出たいと思うこと」
「............」
とても簡単だろう、と彼女は言った。
だが実際問題、簡単ではなかった。
ただ、みんなが脱出したいと思うだけなのに。
脱出できていない現状がここにある。
「あれ、脱出できないね。もしかして、みんな過去の自分か未来の自分を否定したかったりするのかな」
あぁ理解したよ。
彼女が、先に脱出条件を言わなかった確信的さも。
ここが、殺し合いの場所であることも。
ボクは大人にはなれないと、未来を決定づけてしまっていたことが。
ボクがボク自身の確信犯であったことを。
あぁそうか。
この物語は.......。
このボクの物語は......。
過去を殺せないボクでも、
未来に夢がなかったとしても、
それでも息をしたいと死んでゆく物語。
━━『死ぬ運命でさえも、それを後悔にしたくないから』
あとがき
やっと背景描写が終わりました!
前の後書きで『ちなみに年齢に深い意味はないです。実はこれから登場する人物の年齢は5の倍数です』と言ったのですが、早速42歳が登場。いやぁプロット完成だけで描き進めるとこうなりますねw
まぁ全てが完成してからだと1年はかかった思うので。。。
完成したら再編集ですね。
プロローグに書いた通りに全員死んでしまう。。。
実は、囚人Pの物語もそんな感じなんですよね。
囚人Pのような深い哲学描写ができるようになりたい!
本文 2/10でした。次は、本文 3/10で!




