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猫ロ眠@囚人Pの作品群をリスペクトしています。
「ねぇ、聞いてるの!? この可愛いボクが! 話しかけてるんだよ!」
「おおお、とりあえずかわいいね」
「ふふっ〜ん! そうでしょ! ねぇ、どれくらいかわいい?」
「天下一武道会で優勝しそう」
「そんな、ブロリーみたいな可愛さ求めてないよっ!?」
筋骨隆々、ムキムキマッチョ。
それらは、このボクのかわいさフィルターにかからない。
「別に無視してたわけではないよ。なにせ私は2年しか生きていないから、返答に困ってた」
「えぇ〜、40歳は超えてそうに見えるよ?」
ふたりほど寝れそうな机を挟んで、斜向かいに座っている彼女は、どうも2歳には見えない。
呪われているみたい窶れてて、40歳ぐらいの女性ののような?
「いろいろあるんだよね。あぁそれが大人なのかもしれない」
━━大人とは何か。それが、彼女への話題だった。
15歳のボクにいつも遍満する感情が、40歳を超えてそうな大人に、ふとそんな話題を投げかけていた。
思えば15歳のボクは、
ナニにでもなれる期待に満ちていて、
どこにもいけないような焦りに苛まれていて、
今なら間に合いそうな夢で溢れているのに。
もう手遅れな不安が静かに胸を締め付けくる。
未来は抗いようもないほど堅実で、
過去は購いようもないほど事実で、
でも今日だけが貴重な財産で。
貴重な財産を湯水のように使いながら、
日々あてもなく走り続けているような。
「私にとって大人になるとは......最も強い欲を満たそうとする行為だね」
彼女は、そう静かに結論づけた。
欲かぁ。欲って三大欲求とかってこと?
いっぱい食べたいし、いっぱい寝たいし、いっぱいぶひぶひしたいってことかな。
なんだか彼女を見る目が変わったも?
「......っ! なんか引かれてる!? つ、次は、私から話題を振るよ」
━━最も強い欲は何か。それが、彼女からの話題だった。
「知ってるよ! 三大欲求でしょ!」
「たしかに、その考えはなかったよ」
「えっ〜!? そんなことある!?」
彼女の「2年しか生きていない」という言葉は、あながち嘘ではないのかもしれない。
いっぱい食べたいし、いっぱい寝たいし、いっぱいぶひぶひしたいってことじゃないのか。
「三大欲求はどれも生存に必要な欲だね。でもそれらは最も強い欲の足元にも及ばない」
「その最も強い欲は、生存に不必要なのに、ましてや生存を脅かすのに、自ら求めてしまう」
「そう、衝動とも捉えていい。三大欲求で生きることができ、その最も強い欲で息ができる」
衝動かぁ。あぁそうか。ボクは息がしたかったんだ。
あてもなく走り続けているような日々に、息遣いを感じたいんだ。
でも、息をすることが怖い。
息をすることを覚えてしまえば、息が詰まることも覚えてしまいそうな気がする。
「な、なるほどね! ちなみに最も強い欲ってどんなのか聞きたいなぁ......」
「私は、自分の人生の主人公になりたい」
「ふはっ、急に何言ってるの!?」
その面白おかしさに、ボクの不安が少し和らいだ気がした。
と同時に、彼女の息を詰まらせてしまったなら申し訳ないな、とも思った。
でも、彼女はそんな僕のリアクションを笑顔で受け止めてくれて。
「大丈夫だよ」
ボクの不安を見透かしたかのように、安心を前置きしてくれて。
そして、一呼吸、間を入れて。
「君の大人にならなければいけない瞬間は、いつだって唐突に訪れるから」
最後に、とてつもなく怖いことを言ってきた。
あとがき
プロローグで登場した女性が主人公ではなかった!
主人公は15歳のボク。ちなみに年齢に深い意味はないです。
実はこれから登場する人物の年齢は5の倍数です。
その方が覚えやすい気がします。
そしてまたしても展開される会話ベースの物語。
いつになったら、情景や背景設定が描かれるのか。
それは未来の僕に任せましょう。
本文 1/10です。次は、本文 2/10で!




