⭕ 旅芸人一座 2
──*──*──*── 馬車の中
馬車の中は此方の予想を遥かに裏切って広かった。
外見は普通の馬車なのに、馬車の中はまるで一軒家の部屋みたいだ。
導師マオ
「 凄ぉ……。
これが馬車の中ぁ!?
どうなってんの!? 」
セロフィート
「 これはこれは… 」
大陸神の御遣い
「 “ 大陸の意思 ” が人間を減らしたい要因を垣間見たエリ 」
導師マオ
「 大陸神の御遣い様!?
そういう際どい発言は控えた方が── 」
大陸神の御遣い
「 お口が滑っちゃったエリ。
うっかりんりん丸エリ★ 」
キノコンってば、絶対に態とだぁ!!
セロフィート
「 大陸神の御遣い様、お戯れが過ぎます 」
セロは何が可笑しいのかクスクスと静かに笑っている。
導師マオ
「 セロぉ~~ 」
セロフィート
「 はいはい。
笑ってません 」
ガッツリと笑ってたくせにぃ!!
導師マオ
「 初めまして、団長さん。
オレは魔獣を倒して旅をしている導師マオです。
此方は大陸神の御遣い様のキノコンと吟遊大詩人のセロフィートです 」
セロフィート
「 初めまして、団長さん 」
大陸神の御遣い
「 宜しくエリ。
魔獣の群れを倒した報酬を請求に来たエリ。
素直に報酬を支払えば、故障した馬車を元通りにしてやるエリ 」
導師マオ
「 一寸ぉ、大陸神の御遣い様ぁ!
いきなり何言い出してんの!? 」
大陸神の御遣い
「 交渉エリ 」
導師マオ
「 交渉って── 」
セロフィート
「 団長さん、大陸神の御遣い様は世間に疎いのです。
導師マオ様は謝礼が欲しくて魔獣を退治した訳では無いので、ご安心ください。
此方から報酬の請求は致しません 」
マオ
「 セロぉ~~(////)」
セロフィート
「 魔獣に襲われた馬車の状態を勝手ながら確認させて頂きました。
馬車を直す手立ては有ります? 」
団長
「 ………………有りませんな。
馬車の件に頭を抱えていた所です……。
我々は旅芸人一座 “ エバンジェリン ” と申します。
私は一座の団長、グエルナと申します 」
セロフィート
「 旅芸人の一座ですか。
何処へ向かわれる予定なのですか? 」
団長:グエルナ
「 ≪ 王都 ≫へ戻る道中でした。
幾つかの≪ 街 ≫と≪ 都 ≫を経由しながら≪ 王都 ≫を目指していました 」
セロフィート
「 目的地は≪ 王都ベルフエルク ≫──ですか。
現在地は分かりますか? 」
団長:グエルナ
「 はい。
タリスト、地図を此処へ 」
若い男:タリスト
「 はい。
私は団長の補佐をしているタリストと申します 」
タリストさんは地図を持って来ると、テーブルの上に広げてくれる。
セロフィート
「 導師マオ様、此処が≪ 王都ベルフエルク ≫です 」
セロは何処から出したのか、宝石をコトリ……と地図の上に置く。
セロフィート
「 最近、滞在した≪ 集落 ≫は──、この辺りになります 」
綺麗な宝石を地図の上に置いて、≪ 集落 ≫の場所まで教えてくれる。
セロフィート
「 そして、現在地は此処になります 」
導師マオ
「 地図で見ても結構な距離が有るんだな… 」
セロフィート
「 差し支えなければ、グエルナさん達の経路を教えてください 」
団長:グエルナ
「 構いません。
私達は≪ ディテイマの街 ≫を出発し──、現在地の此処で魔獣の群れに襲われ現在に至ります。
当初の予定では、この先に在る街道へ入り── 」
団長さんは、分かり易い様に赤い紐を使ってくれる。
地図の上に赤い紐を置いて、長い画鋲みたいなピンで止めてくれる。
セロフィート
「 成る程……3つの≪ 街 ≫と2つの≪ 都 ≫を経由して≪ 王都ベルフエルク ≫へ到着する予定だったのですね 」
団長補佐:タリスト
「 馬車も残念な事になりましたが、魔獣に馬車馬を何頭か喰われてしまいましたし、逃げてしまった馬車馬もいます。
これでは次の≪ 街 ≫へは迎えません。
仮に馬車の修理を出来たとしても馬車馬がいなければ── 」
セロフィート
「 そうでしょうね。
エバンジェリン一座が使っている馬車は特別製の様ですし、修理には専門の職人が必要でしょう 」
団長:グエルナ
「 そうなのです!
この馬車は王家に籍を置かれている有名な錬金術師様が作られた特殊な馬車なのです。
我々に出来るのは応急処置くらいでして、作られた錬金術師様ではない限り完全に修理するのは難しいかと── 」
導師マオ
「 今迄は魔獣に襲われたりはしなかったの?
今迄にも魔獣に襲われた事は遭っても何とかなってたの? 」
団長:グエルナ
「 今迄は魔獣を寄せ付けない魔導具が有りましたので、魔獣に襲われる事なく旅をする事が出来ていました。
然し、魔導具が≪ ディテイマの街 ≫で紛失してしまいまして……。
今回が初めて魔導具無しでの旅となったのです…… 」
セロフィート
「 成る程──。
魔獣に襲われた経緯は分かりました。
災難に遭われましたね 」
導師マオ
「 そんな大事な魔導具が紛失するなんて有り得るのか?
盗まれたんじゃ── 」
セロフィート
「 その線も有りますね。
過ぎてしまった事です。
仮に犯人を特定し捕まえる事が出来たとしても、魔導具は既に売り飛ばされているでしょう。
犯人を責めて罰を与えても肝心の魔導具は戻って来ません。
新しく購入するしか無いでしょう 」
導師マオ
「 残念だけど、そうだよな……。
でもさ、盗人には相応の罰を与えてから、償いをさせないと悔い改めないだろ。
捕まえて絞めてやらないとさ 」
セロフィート
「 導師マオ様、過激な発言は控えてください。
馬車はワタシが直しましょう。
今は吟遊大詩人ですが、その前は錬金術師でしたから、馬車くらい元通りに出来ます。
馬車馬がいなくとも馬車が走れる様に構造を変えます。
馬車より早く、次の≪ 街 ≫へ迎えますし、遅れも取り戻せるでしょう 」
団長:グエルナ
「 そ…それは本当ですか!? 」
セロフィート
「 勿論です。
天民に二言は有りません。
沈まない豪華客船に乗ったつもりで、大いに期待してください 」
大陸神の御遣い
「 大盤振る舞い過ぎるエリ。
無料でするなんて、言語道断エリ! 」
セロフィート
「 勿論です。
タダな訳が無いです。
それなりの条件を付けます 」
導師マオ
「 条件って? 」
セロフィート
「 導師マオ様の活躍を宣伝してもらう事です。
大陸神様の化身で有らせられる大陸神の御遣い様の存在──、≪ 天上界 ≫より舞い降りた天民で有るワタシの存在──を広く知らしめてほしいのです。
“ 導師マオ様 ” という希望の存在が、≪ 地上界 ≫に現れた事を大々的に知らせてほしいのです。
どうでしょう。
グエルナさん、エバンジェリン一座では出来ませんか? 」
団長:グエルナ
「 そ…そんな事で宜しいのですか? 」
セロフィート
「 これは重要な事です。
現在、魔獣を倒す事の出来る人物は、大陸神の御遣い様より祝福を受けた導師マオ様しか居ません。
【 導師再来 】という名目で、訪れた≪ 街 ≫≪ 都 ≫≪ 王都 ≫で大いに宣伝してください 」
団長:グエルナ
「 分かりました!
旅芸人一座エバンジェリン団長グエルナが、大陸神様と大陸神の御遣い様に誓わせて頂きます!!
訪れた≪ 街 ≫≪ 都 ≫≪ 王都 ≫で、導師マオ様,大陸神の御遣い様,天民様の存在を【 導師再来 】の演目で披露させて頂きます!!
≪ エンデバリル王国 ≫全土に “ 導師の再来 ” を広めてみせます!! 」
セロフィート
「 宜しく御願いしますね。
期待していますよ。
呉々も大陸神様の信頼を裏切る事の無いように── 」
団長:グエルナ
「 はい!
肝に命じます!! 」
セロフィート
「 良かったですね、導師マオ様。
これで≪ 王都 ≫に到着する頃には有名人ですよ 」
導師マオ
「 ははは…… 」
セロフィート
「 今夜は此処でキャンプをしましょう。
グエルナさん、馬車を直すのは明日でも構いませんか 」
団長:グエルナ
「 も…勿論で御座います! 」
セロフィート
「 時間を頂き感謝します。
此方の宝石は魔導具を買う時の足しにしてください。
導師マオ様の故郷の鉱山で発掘されていた宝石です。
出回っていない為、非常に稀少価値の高い宝石です。
魔獣を寄せ付けない魔導具の値段は知り得ませんけど、多少の役には立つでしょう 」
団長:グエルナ
「 よ…宜しいのですか?
馬車を直して頂くだけではなく、稀少価値の高い宝石まで頂いてしまっても…… 」
導師マオ
「 依頼するのは此方だし、報酬の前払いって事で受け取ってよ。
導師のオレが持ってても使う機会が無いんだよね 」
団長:グエルナ
「 分かりました。
有り難く受け取らせて頂きます。
この御恩は子々孫々迄、語り継がせて頂きます!! 」
導師マオ
「 大袈裟だなぁ~~(////)
大袈裟序でに、セロが直した馬車は “ 家宝 ” として大事に使ってほしいな。
呉々も解体したり、売ったりしないで、“ 家宝 ” としてエバンジェリン一座の子孫達に継承してほしいかな 」
団長:グエルナ
「 はい!
その様に取り計らわせて頂きます!! 」
導師マオ
「 うん(////)」
セロフィート
「 良かったですね、導師マオ様 」
◎ 訂正しました。
逃げてしまった馬車馬も居ます。─→ 逃げてしまった馬車馬もいます。
馬車馬が居なければ── 」─→ 馬車馬がいなければ── 」
襲われた事は有ったけど、何とか─→ 襲われた事は遭っても何とか
馬車馬が居なくとも ─→ 馬車馬がいなくとも
それなりの条件は有ります 」─→ それなりの条件を付けます 」