✒ 導師になった経緯
セロフィート
「 天民と導師マオ様の事を説明するとしましょう。
遥か昔より語り継がれて来た伝承には、生き残った天民達は1人残らず “ 光の柱 ” を通り≪ 天上界 ≫へ帰った──と伝えられていますが、実は違います。
欲深い地上人達に捕らわれない様にと、≪ 地上界 ≫に残る選択をした天民達が手心を加え伝承の一部を改竄したのです。
≪ 地上界 ≫に残り、生きる事にした天民達は、細やかながら小さな≪ 村 ≫を作り、ひっそりと暮らし始めました。
行き場の無い者や身寄りの無い者を受け入れながら、小さな≪ 村 ≫は発展し、何時しか≪ 小国 ≫となりました。
生粋の天民達は皇族として、代々子孫を残しました。
導師マオ様は今は亡き、生粋な天民の最後の末裔なのです。
生粋な天民にのみ授かる “ 不思議な能力 ” を導師マオ様の故郷では “ 魔法 ” と呼んでいました。
魔獣の事は “ ジエンダ ” と呼んでいました 」
代表者は真剣な表情で、嘘八百なセロの作り話を聞いている。
セロフィート
「 導師マオ様が未だ “ 導師 ” となる前──、3歳の誕生日を迎えて間もない日、≪ 小国エルゼシア ≫は1体の魔神が率いる魔獣の大群の襲撃を受け、陥落しました。
魔法を使える天民の数が少なかった事も有りますが、魔神が率いる魔獣の大群は数でも強さでも遥かに天民を勝っていました。
それに魔神は天民を喰らい、自らを強化してしまう厄介な相手でした。
幼い皇子を守る為、両親である国皇と皇妃は、神聖な祭壇へ向かい “ 光の柱 ” を出し、≪ 天上界 ≫の天民へ助けを求めました── 」
全く以て感心する。
まるで息をするみたいに作り話がスラスラと、セロの口から出るわ出るわ。
代表者は完全に信じちゃってるんじゃないのかな……。
セロは罪深い事をしてばっかりだ。
セロフィート
「 ≪ 天上界 ≫から “ 光の柱 ” を通り≪ 地上界 ≫へ下りたワタシは、国皇と皇妃から幼い皇子を託されました。
皇子を連れて≪ 天上界 ≫へ帰っても良かったですけど、天民喰らいの魔神を野放しにする訳にはいきません。
≪ 地上界 ≫で生きる選択をしたワタシは、古代魔法を放ち、天民喰らいの魔神と魔獣の大群を消し去りました。
斯くして、≪ 小国エルゼシア ≫は滅亡するに至りました。
ワタシは放浪旅をする “ 吟遊大詩人 ” に扮し、幼い皇子を連れて≪ 大陸 ≫を旅する事にしたのです。
旅の途中で訪れた≪ 都 ≫にて、皇子が成人の義を無事に終えた日、大陸神の御遣い様が現れ、皇子に “ 大陸神の祝福 ” を授けられました。
怪我人の傷を癒し、治した奇蹟の力が、“ 大陸神の祝福 ” の1つ目です。
2つ目は武器の剣に魔法を纏わせる能力です。
3つ目は身体を宙に浮かせ、自在に動き回る能力です。
“ 大陸神の祝福 ” を授けられた事で、皇子は “ 導師 ” として役目を与えられ、“ 導師 ” として不浄から生まれる魔獣を倒す旅が始まったのです。
現在に至り──立ち寄る予定にしていた≪ 集落 ≫が魔獣の大群に襲われていた為、運良く助けに駆け付ける事が出来た──という訳です 」
導師マオ
「 長い話だったよな。
御免な、オグレさん…… 」
代表者:オグレ
「 とんでも御座いませんっ!!
貴重な話を聞かせて頂けて光栄で御座いますっ!! 」
セロフィート
「 実は導師マオ様の身の上話を子供用の絵本にして≪ 大陸 ≫へ弘め布教しようと考えています。
魔獣に苦しめられている陸民にとって “ 導師の再来 ” はまさに希望です。
大々的に “ 導師の再来 ” を伝えるべきだと考えています 」
導師マオ
「 じゃあ、大陸全土にオレの存在が知られちゃうって事になるのかよ?
それは一寸嫌かも…… 」
セロフィート
「 弘めたとしても直ぐには信じられたりしません。
子供用の絵本を大人が態々読む訳ないですし 」
導師マオ
「 じゃあ、どうやって──あっ!
《 教会 》だな!
《 教会 》を利用するんだな! 」
セロフィート
「 その通りです。
オグレさん、この≪ 集落 ≫には《 教会 》は有りましたか? 」
代表者:オグレ
「 い…いえ……《 教会 》は在りません 」
セロフィート
「 ≪ 集落 ≫の復興を進める際に、大陸神を崇め奉る《 教会 》を建てたいのです。
“ 大陸神の御遣い様 ” の石像を《 教会 》の祭壇へ建て、集民達の憩いの場として作る《 噴水広場 》には “ 導師マオ様 ” の石像を建てたいのです。
如何でしょう 」
代表者:オグレ
「 勿論、お作りになってください!
集民一同、賛成いたします!!
私達の≪ 集落 ≫は導師マオ様に助けて頂けたのです。
反対する者等居りませんっ!! 」
セロフィート
「 それは良かったです。
安心しましたね、導師マオ様 」
導師マオ
「 ははは…… 」
別の≪ 大陸 ≫でも訪れた≪ 村 ≫に《 教会 》を作った事が有るよな……。
もう立派なパターン化しちゃってるよ。
まぁ、今回は別に《 教会 》を作ったからって≪ 集落 ≫を乗っ取るとかはしなさそうだし、別に良いのかな。
導師マオ
「 オグレさん、無理を聞いてくれて有り難う 」
セロフィート
「 《 教会 》と《 噴水広場 》もキノコンに任せるとしましょう。
導師マオ様、≪ 集落 ≫周辺の見回りに行きましょう 」
導師マオ
「 そうだな。
キノコンには復興作業に専念してもらいたいからな! 」
セロとオレは代表者に挨拶をしたら、腰を浮かせて丸太の椅子から立ち上がると≪ 集落 ≫の出入り口に向かって歩き出した。