盟友 ⑦
ふむ?
僕らが森に籠もっている間に、森の外では技術的に飛躍している可能性も有るのか。
魔法技術の優位性まで失えば、いよいよ僕らは絶望的な状況に追い込まれる。
それは看過できないな。
「へえ。詳しく聞かせてくれるかな。原理や、構造も」
前のめりになってしまった。
物理現象だけで作られた乗り物か・・・、それは面白そうだよね。
チキュウ世界からもたらされた技術によって発展したものは数多く有る。
武器や防具や道具類は、その最たるものだ。
けれど、テツが語った技術の概念は、かつて、こちらの世界へもたらされたものとは根底から在り方が違う。
チキュウ世界には、“エンジン”という“内燃機関”を用いた、自動車、自動二輪車、飛行機、という道具があるらしい。
内燃機関というのは、密閉した筒の中で油などの燃料を燃やして、火炎の“熱膨張”という物理現象の力を、指向性の有る“運動エネルギー”に変換して、馬よりも速く、乗り物を動かすものらしい。
すごいね。思考の泉に沈んでしまいそうだ。
羊皮紙とペンを渡したら、色々と説明しながら絵に描いてくれたので、僕も、その説明をメモに取る。
機構も、かなり複雑そうで、エンジンの原理の理解から検証する必要があるね。
同じ機構のものが作れないとしても、別の切り口で、得られる効果が近しいものを作れれば、実現は可能なんじゃないかと思う。
それにしても、問題が一つ、見えてきてしまったね。
「直接的な障壁は、どんな形を取るにしても、実現するには高度な鍛冶技術が必要そうなことだろうか」
「実際、地球の乗り物は、どれも金属の塊みたいなものだしな」
どうやら内側からの膨張圧力や高熱を伴うものばかりらしくて、今の郷では道具的にも素材的にも作るのは難しそうだ。
「だとしたら、ドワーフ族の協力が欲しいね」
「やっぱ、居るのか。ドワーフ」
そりゃあ居るよ。
亜人種族の例に漏れず、奴隷に落とされたり、迫害されたり、とは聞くけど。
これも100年より前の情報だから、いま現在、彼らが無事かどうかは分からない。
「エルフ族と同じく、国としては滅んだけどね。ヒト族の辺境国家にも居るはずだよ」
「ヨシ。探して引き込む」
「ふふっ。頼もしいよ」
やれるか、じゃあなく、キミは、やる、と言い切るんだね。
自然に頬が緩んでしまう。
本当に頼もしい。
「もう一つ。欲しいのは、通信手段が有ると便利だ」
「つうしん? ・・・ああ、狼煙のような伝達手段のことだね?」
離れた場所と情報を遣り取りする方法、と説明されて理解した。
「この郷と森の外を行き来することになりそうだし、失敗して逃げなきゃならなくなった時にも、情報が早いと打てる手札の数が変わってくる」
「そうだね。とても欲しい技術だ」
僕と同じことを考える人がいた。
心が躍り出しそうだ。
「新しい伝達手段を作ろうとしたことは、以前にも有ったんだよ」
「ほおー」
感心した様子で、まじまじと見られた。
「お前、なかなか革新的なんだな」
「失敗、というか、満足できるものが作れなくて、文字通り、棚上げしたけどね」
自然に苦笑が出る。
ガラクタが乱雑に放り込まれた、壁際の試作品棚を指す。
盟友⑦です。
ドゥワーフ!
次回、属性考察!?




