大名行列と、おじいちゃんとおばあちゃん ③
かってに会社の門をあけて入ってきた大っきなクマさんは、えりかお姉ちゃんが怒っているのを放ったらかして、わたしの前へかがみ込みました。
座っているのに、クマさんのお顔はわたしよりも高い場所にあります。
あいかわらず、ずるいです。
ぬっ、と、伸ばされた大きな手が、わたしの頭をぐりぐり撫でます。
パパのお友だちは、みんな、わたしを見ると、ぐりぐりするのです。
「ひゃっ!?」
おもむろに、クマさんが、わたしの脇に手をつっこんで、もち上げました。
た、高いです!
高い高い、です。
わたし、もう、高い高い、で喜ぶほど、こどもじゃあありません!
「ヒナちゃんが、怖がってるでしょうが!!」
えりかお姉ちゃんが、クマさんの腰とか足とかを、ばしばしと、なぐったり、けったりしています。
でも、クマさんは、ぜんぜん痛そうじゃありません。
「・・・ダメか」
「ダメに、決まってんでしょうが!!」
ざんねんそうな顔をしたクマさんが、わたしを地面におろし、ぎゅっと、だきしめました。
フェンスのむこうで、ずぶとい、ひめいが上がっています。
「それ、セクハラだし、事案だからね!?」
じあん、って、あれだ。
おじさんは、あいさつしても、けいさつにつかまるって、パパが言ってたやつだ。
学校では、よい子は、みんなにあいさつしましょうって教えてるのに、つかまるんです。
なんで?
「あんたらも、うるさい!」
えりかお姉ちゃんが、怒っていますが、ぶーいんぐ? は、おさまりません。
わたしのからだを、そっとはなしたクマさんが、ぬっと立ち上がってフェンスの外を見ました。
ぴたり、と、しずかになります。
元気だせ。
そう、言ってくれたんだよね? クマさん。
ありがとう。わかるよ。
「・・・・・ハル、か?」
「そうよ。びっくりしたんだから」
ヘリコプターを見て、ぼそっと言ったクマさんに、ふてくされた顔で、えりかお姉ちゃんが答えています。
「・・・アイツのほうが、早かったか」
そういえば、クマさんのおうちも、あいち? で、とおくにあるんだよね?
なんで、いるの?
「・・・適当に動かしとけ」
自動車のカギ、かな?
フェンスのむこうのひとへ何かをポイッと投げたクマさんが、もういちど、わたしの頭をぐりぐりしたあと、だまって会社のほうへと歩いていきました。
のし、のし、と、歩いていく後ろすがたは、ほんとうにクマさんだと思います。
「お腹、すいたでしょう」
ため息でクマさんを見送ったえりかお姉ちゃんが、わたしに、にっこり笑いました。
お姉ちゃんのなで方は、ぐりぐりじゃなく、ふわっとしていてやさしいです。
「なにか、作るわ」
えりかお姉ちゃんに背中をおされたわたしは、フェンスのむこうのみんなへ小さく手をふりながら、おうちへと帰ったのでした。
大名行列③です。
事案さん・・・
次回、手続き!




