大名行列と、おじいちゃんとおばあちゃん ②
「うっ」と、おまわりさんたちが、のけぞりました。
ハルおじさん。めがねの奥の目が、すごく冷たいです。
パパよりも、ほんのちょっとだけ低いですが、ハルおじさんも、じゅうぶんに背が大っきくて、あんまり、しゃべらないから、なかなか、はくりょくがあるひとなのです。
わたしも、つられて、かべのほうを見ました。
1時? うそ・・・、夜の1時?
「ラビリンスのオーナーには、“自分”から、補償の話をしておきましょう」
パパと同じぐらい、大きくて固い手で、頭をぐりぐり撫でられました。
そうそう。ハルおじさんは、“オレ”とか“ボク”じゃあなくって、自分のこと“ジブン”って言うの。ヘンなの。
「じゃあ、ハルさん。あと、お願いね」
わたしは、えりかお姉ちゃんに、肩を、だかれて、椅子から立ちました。
ちょっとだけ、ちらかった、机の上から、わたしのランドセルを持った、えりかお姉ちゃんが、「行こう」と、わたしの背中をおしてくれます。
これ、パパの机です。
「・・・・・パパ」
じわり、と、また、目の前が、にじみます。
ぽんぽん、と、やさしく、えりかお姉ちゃんが、わたしの頭をなででくれます。
だいじょうぶだよ、と、言われているような、なでかたです。
「お父さん、あたし、テツさんちでヒナちゃんと寝るから」
決まっていることを、当たり前に、びしっと決めつけるような言いかたに、社長さんが、「お、おぅ」と、にが笑いしています。
えりかお姉ちゃんも、わたしと、いっしょでママがいません。
社長さんは、こんやは、ひとりきりになってしまいます。
社長さん、ごめんなさい。
「どうせ、今日は、酒盛りでしょう」
あたしなんて、いらないから。と、お姉ちゃんは、笑います。
社長さんは、パパたちの、だいせんぱいで、みんなと仲よし、なんだって。
こうこうと、あかりが点いている会社の玄関から、まっくらなお外にでて、わたしは目をまあるくしました。
「ヘリコプター?」
「そ。驚いたでしょう?」
えりかお姉ちゃんも、会社の駐車場の、どまんなかに止まっている、大きな機械を見て、あきれたように笑っています。
すっごいよねー。って。
「報せを聞いて、福岡から5時間で飛んできたんだって」
ほら、と、えりかお姉ちゃんが、会社のまわりのフェンスのむこうを、さしました。
「みんな、ヒナちゃんと、テツさんを心配して、来たんだってさ」
暗いから、気づかなかったけど、フェンスのむこうの、どうろに、いっぱいの自動車が、とまっています。
自動車のあたりに立っているひとたちと、目があいました。
「「「「「うおおおおおおーーー!!」」」」」
大きな声があがって、わたしは、びくっとしました。
何十人―――、何百人、いるんだろう。
知らないひとが何人もいるけど、知っているひとも、いっぱい、います。
「うっさいわよ!? ご近所迷惑でしょうが!!」
えりかお姉ちゃんが、どなり返しているけど、みんな、げらげら笑っています。
「ヒナちゃん! 心配すんな!」
「テツさんが帰ってくるまで、ヒナちゃんは、オレが守る!!」
「抜け駆けすんじゃねえよ!」
「ヒナちゃんは、オレら、みんなのアイドルだぞ!?」
「えりかちゃーん、中、入れてよー」
「うっさい! ロリコンは帰れ!!」
わーわー、ぎゃーぎゃー、ギャハハハハ。
おおさわぎしているところに、ズボボボ、と、太いエンジン音が近づいてきます。
「うわ。また来た・・・」
えりかお姉ちゃんが、げんなりした顔をしました。
フェンスのむこうの、どうろの真ん中に、白い大きな自動車がとまります。
ドアがひらいて、クマさんみたいに大きなかげが、ぬっと立ち上がりました。
「あっ。ゴンのクマおじさんだ」
つるつるの、すきんへっど? の、おじさんは、何度もあそびにきたので、わたしの知っているおじさんです。
やっぱり、クマさんです。
わたしは、そう呼んでいます。
大名行列②です。
クマさん現る!
次回、クマさんvsお姉ちゃん!?




