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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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251/308

奴隷 ⑧ ※どこかの王城にて

 窓から陽光が差し込む廊下でも、奥側の日影では口元の動きも読まれにくい。

 耳元に顔を寄せ声を潜める官吏からの報告を囁かれた初老の男は眉を顰めた。


「・・・なに? それは誠か」

「はっ」

 (くら)い期待感に目を輝かせる傘下の法衣貴族が、静かに小さな頷きを返してくる。


 またか・・・。という思いが、男にも無くはない。

 だが、派閥を束ねる首魁としては、“寄り子”である弱小貴族の権益を確保してやるのも“寄り親”の務め。

 それが主に国家の内政や法務に携わり領地を与えられていない法衣貴族ともなれば、外交での権益は死活問題だからだ。


 領地が小さく交易に頼らざるを得ない弱小領地貴族の“寄り子”も苦境にある。

 新たな試みが生まれようとしている現状を鑑みれば、男の心情としては渋面を作らざるを得ない。

 このバカどもが、という本音を表に出さないように留意しながら、男は法衣貴族を労う。


「陛下には私から報告しておこう」

 男としても配下の報告を信じたわけではない。

 しかし、急激に勢いを増した“保守派”の増長を少しでも抑え込んでおきたいのも事実。

 国内が安定に向かう“芽”が育ちつつ有る今、いきなり天秤が片方に傾けば天秤ごとひっくり返る恐れが有る。


「ふむ・・・」

 目立たぬように去って行く“寄り子”の背中を見送って、男は廊下を戻り、重厚な両開きの扉を両脇で守る衛兵に手振りで合図した。

 衛兵の手によって扉がノックされ、扉越しの入室許可を確認して衛兵が扉を開ける。

 扉の内側の両脇にも衛兵が立ち、壁際には侍女も控えている。


「戻ったか。サリトガ」

「は」

 歴史の重みを感じさせる豪奢かつ気品有る執務室の大窓を背に、大きな執務机の奥に座っている男が手元の書類から目を上げた。


 宰相サリトガにとって少しだけ歳の離れた幼馴染みであり、親友であり、仕事仲間でも有る執務机の男も初老の入口に差し掛かろうとしている。

 年月の流れは早いものだ。


 ほぼ毎日、この顔を見続けて数十年にもなる。

 時に凡庸とも優柔不断とも酷評される主君の名は、オーグスト・エンリード・リテルダニアという。

 先王ご存命の頃からリテルダニア王国の宰相を任じられていたサリトガの主君だ。


「サボって居らんで其方も手伝え。いつまで経っても書類が終わらんではないか」

「陛下。お人払いを」

 執務机の脇を回って国王の隣にまで歩み寄ったサリトガは、書類に手を伸ばす振りで国王の耳元に囁いた。


 ソファーに移って腰を下ろし、侍女に淹れさせたオーグストが軽く手を振ると侍女も退室する。

 報告を聞かせると、お茶に口を付けかけたオーグストが向かい合うソファーに腰を下ろしたサリトガに胡乱な目を向けてくる。


「ドネルクに叛逆の疑いだと?」

 人払いが為されていなければ、凡庸を装う化けの皮が剥がれてしまいそうな目差しだ。

 オーグストが深い溜息を吐いた。


彼奴(あやつ)ら。まだ、そんなことを申しておるのか」

「ドネルクはまだ地盤が弱い。追い落とすまでとは行かずとも、今のうちに食い込んでおきたいのだろうよ」

 オーグストの反応は予想した通りのものだった。


 王都騎士団団長の任を退いて冒険者ギルドのギルド長に収まったドネルクが、一部の冒険者に便宜を計り何やら結託している、と“寄り子”から得た情報を告げたのだが、もちろん、サリトガもそんな戯れ言を信じたわけではない。

 ドネルクという勤勉で実直な男は目先の利に転ぶ性質ではなく信頼に値する。


 オーグストにとっても妻である王妃アマリリアの実兄であり、軍事面でオーグストを支え続けたドネルクは手放しで信頼を置ける義兄なのだ。

 他方、ドネルクが便宜を図っている事実は、法衣貴族の密告を受ける前からサリトガも情報を掴んでいる。

 ドネルクにはドネルクなりの、現状を何とか打開しようとする考えが有るのだろう。


 国防と自国経済を最優先とする“保守派”には、大中の領地貴族や軍事色が強い貴族ばかりが名を連ねている。

 王国北部地域を束ねる公爵家の長男だったドネルクは、分家して侯爵家を立ち上げた今でも“保守派”の首魁で在り続けている。

 名目上の首魁は本家の公爵家なのだが、事実上、“保守派”の旗頭をドネルクが務め続けている現状を疑う者は、国内に誰1人として居まい。


 本家の公爵家を継いだのは実弟だが、実弟とドネルクの関係も良好で“保守派”に揺らぎはない。

 そして“南部の雄”ウォーレス家の存在だ。

 ドネルクがウォーレス家の娘を妻に迎えることが決まって、そちらとの関係も良好。


 東部地域を束ねるクローゼリス家にもウォーレス家の娘が嫁ぐことに決まって、不安が残るのは西部地域だけとなった。

 その西部地域も主要な“融和派”が“南部の雄”の手で排除され、統治者がいなくなった領地は王家の手に戻った。

 ようやく身中の虫を駆除できて王国が安定に向かおうとしている大事な時期に、ドネルクの醜聞は王国にとって良くない。



奴隷⑧です。


陰謀オジサンたち!

次回、ヒマ!?


※ もう遅刻がどうとかという時間ではありませんが遅刻です!

  ゴメンナサイ!

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― 新着の感想 ―
真実を知らされたら、違う意味で頭が痛くなるやろなぁ
大丈夫です! いつまでも待ってます。 もし展開に詰まっているのでしたら(全く感じませんが) しばらく間をおいても待ってます。 こんな面白く素敵な話読ませていただく有難さ 読者冥利に尽きます。
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