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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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奴隷 ②

 今、わたしたちが向かっているのは王国の北東側の“未開拓地国境”です。

 人類棲息圏の東端に有るクローゼリス公爵領という土地ですね。

 “魔の森”との境目なので“国境”というのもおかしいのですが、エテルナさんが用意してくれた書類には、そう書かれています。


 ああ、えーっと。クローゼリス領というのは、以前通った旧エンツェンス領の北隣に位置する大きな領地ですね。

 「旧」というのは、領主貴族のエンツェンス家が領地替えになったとかで、領主が替わったからだそうです。

 新しい領主はハリエット家と言いましたか。


 近い内にこのハリエット領にはギルドの出張所というものが置かれるそうで、私たちも王都まで素材を持ち帰る必要が無くなるそうです。

 そうなると荷馬車が軽くなりますから、さらに王都と森の行き来が楽になりますね。

 馬たちの苦労が減るのは良いことです。


 クローゼリス家はつい先日まで内戦鎮圧のために軍隊を出していたために魔獣討伐が疎かになっていたことから、ギルドに冒険者の派遣を要請されたようです。

 郷が有るのはもっと南側なので、郷の周辺に出る魔獣よりも少し強い個体が出るはずです。

 もしかすると、郷の傍で居座っていたショージョーは、その辺りから来たのかも知れませんね。


 クローゼリス領へは王都から片道4日で着きます。

 王都へ向かったときよりも、ずいぶんと移動に掛かる日数が少ないのは、場長さんの薦めでギルドで借りた荷馬車が速いからだそうです。

 この荷馬車の説明を聞いたテツさんは、馬を売ると言っていたのに、馬を売るのではなく、逆に王都で馬を1頭買って4頭に増やしました。


 どうして馬を増やすのかと訊いてみれば、「文字通り馬力が上がる」と。

 ぱわーうえいとれしお? が上がるとか何とか言っていましたが、説明を聞いても私にはよく分かりませんでした。

 4頭立てにすることで1頭1頭の馬に掛かる負担が分散して小さくなるのだとか。


 荷馬車の重さが加わるのだから馬の負担が増えるのではないかと場長さんに訊いてみれば、このギルドで借りた荷馬車は魔獣の骨を利用した特別製で、とても軽いのだそうです。

 普通の貴族でも買えないぐらい高いから絶対に壊すなとも忠告されました。


 今回で2度目の遠征となる私たちの手元には、冒険者ギルドが纏めた討伐依頼書の束が有ります。

 テツさんがギルド長と交わした密約の結果ですね。

 20枚以上にもなる依頼書の中身は、集落付近の農地や薬草採取場所へと出没する魔獣の討伐と魔獣素材の採取がほとんどです。


 通常の新規冒険者登録だとコツコツと実績を積んで、その実績を勘案したギルド内の評価で仕事を割り振るそうですが、ギルド長が便宜を図ると言った通り、私たちの手元には休む暇も無いほどの仕事が回ってきています。

 移動しては狩り、移動しては狩り。毎日がそんな生活です。


 便宜という面ではこの荷馬車もその一環で、依頼された討伐件数が多いのと想定される素材採取量が多いので、毎回、ギルドの負担で馬車を、ちゃーたー? してくれています。

 そして、もう1つ。

 王国内の貴族領と主要な街道が記された地図の写しです。


 この地図は軍隊が用いるものだそうで、情報を流出させないようにと何度も念押しされた上で手渡されました。

 テツさんが言うには、この地図は国の軍事機密情報とも言えるもので、地図が手元に有るお陰で無駄なく計画的に仕事をこなせると、ギルド長に感謝していました。


 魔獣とはいえ野生動物のことなので、普通は依頼者から情報収集をしたりして討伐対象との遭遇率を上げたりするものだと聞きましたが、私たちの場合、現場近くの集落へとお金を払って馬と荷馬車を預けたら、私たちだけで森へ入って数日間は森から出ません。

 私はテツさんと2人での狩猟しか経験が有りませんからよく分からないのですが、ギルド長が言うには、これって、ものすごく仕事が早いのだそうです。


 これはテツさんと私だけの秘密なのですが、仕事が早いことにはちゃんと理由が有るんですよね。

 テツさんの索敵範囲がさらに広がっているのが原因です。

 見えてもいない距離で危険な魔獣の気配を把握してしまうんですよ。

 それも、かなりの精度でです。


 事前情報も魔獣の痕跡も無視してテツさんが獲物を見付け、片っ端から私の魔法術式で追い立てて、獲物が逃げる方向を誘導するんです。

 テツさんが待ち構えている逃げ道に獲物が入ってしまえばこちらのもので、迫ってくる獲物の前に立ち塞がって殴り倒してしまいます。

 この狩猟方法をテツさんと私は“追い込み猟”と呼んでいます。


 討伐依頼対象だろうが対象外だろうが、私たちが決めた狩猟区域に棲む大型の魔獣は、おカネになる素材だけでマジックバックが満杯になるまで根こそぎ狩ってしまうのですから、それはそれは儲かります。

 金貨で100枚単位ですよ。

 盗賊をお小遣い扱いしていた頃とは貰えるおカネの桁が違いますからね。

 まあ、たくさん狩ってしまうと素材の重さで荷馬車が動けなくなるんですけれど。


 こういった形での狩猟を“乱獲”というそうです。

 生態系のバランスを崩して自然環境をメチャクチャにしてしまうことが有るから、本当はダメなのだとか。

 けれど、私たちが狩っているのは魔獣なので心配ありません。


 エテルナさんの話では、魔獣がどうやって生まれ出るのかについてはいくつかの説が有るそうなのですが、森の外に住んでいる人たちは知らないのでしょうか?

 余計なことを言って付け狙われるのは嫌ですから黙っていましたが、ずっと昔の研究者が魔獣が“発生”する瞬間を記録に遺しています。

 その方は“魔の森”に滞留する魔力から魔獣が“発生”するところを目撃したそうで、そのことをテツさんに教えると、とても悪い顔で笑っていました。


「次に狙うのは、鋼毛熊と鎧イノシシだっけな?」

「はい。森の入口で痕跡が発見されていて、人に被害が出る前に間引きして欲しいという依頼です」

 私の隣で手綱を握っているテツさんの独り言のような問いに、私は頷いて返します。

 こんな依頼書を今回も20枚以上、私たちで独占しているのですから儲かって当然ですよね。



奴隷②です。


変化した日常!

次回、計画!?

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奴隷...? 誰が、誰の!の!
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