冒険者 ⑮
「お前、どうやってショージョーを倒した? アレは一度目にした手は二度と通じないほど知恵が回ってな。どこの領地でも領軍を出しても手を焼いて、被害だけが積み上がる厄介な魔獣なんだぞ」
「おう。確かにクソ生意気で気にくわねえ猿だったな」
「で。どうやって倒した?」
何だ? ずいぶんと倒し方に拘るじゃねえか。
まあ、隠すようなもんでも無いしな。
「投石だよ」
「は? 石?」
よほど予想外だったのか、俺の答えにドネルクが目を丸くする。
投石を舐めんなよ?
有史以前から人類が持つ最古の攻撃手段が投石らしい。
“世界中の国々が核兵器を保有して互いにミサイルを撃てなくなれば戦争は石の投げ合いに回帰する”と言われているほど由緒正しい攻撃手段だぞ。
現に俺のDNAに刻み込まれた人類の叡智は十分な攻撃力を発揮して大猿の命を奪った。
「一撃必殺。当てるのは上手いんだ」
会社の福利厚生で作ってる草野球チームの交流試合でもKO勝ちを決める程度には、避けようが逃げようがほぼ百発百中で当てられる。
もっと言えば、狙っていなくても当てるつもりが無くても不思議と当たるんだよなあ。
害獣を狩るための有効な手段として期待したのかも知れねえが、本当にただの投石だからな。
信じ難いとばかりに顔を顰めたドネルクが首を振った。
「ショージョーの他の素材は?」
「別口で使っちまった」
魔石以外は郷の大人たちに渡しちまったんだが、誰に渡したのかまで教えてやる理由はねえな。
郷の存在が好まざる連中にバレるリスクは冒さねえ。
「別口ってのは?」
「色々、有んだよ」
俺に喋る気が無いことを察したらしいドネルクはサッサと諦めて次の質問へと移る。
「カル何とかってのは?」
「水に棲む魔獣です」
俺が口にした「ザリガニ」を綺麗にスルーしてドネルクが目を向けると、ケイナが簡潔に答える。
その上で確認するように俺へ目を向けて来やがる。
その確認のし方はどういうつもりだ? この野郎。
「直ぐに傷みそうだから置いてきた」
「初めて聞く名前の魔獣だが、“魔の森”のどの辺りで狩ったものだ?」
「道に迷ってる最中に狩ったヤツだが、俺に場所を訊いて分かると思うか?」
当時の俺は地理的な情報を何も持っていなかったからな。
嘘じゃねえが、真実でもねえ。
「今後の注意喚起の情報として把握しておきたかったんだがな。嬢ちゃんなら分かるか?」
「分かりません」
ドネルクに目を向けられたケイナも首を振る。
郷からそう遠くない場所にある塩水湖だったが、郷には地図もねえからな。
ケイナも嘘を言ってるわけじゃねえ。
場所が分かっていたとしても郷に近い森を冒険者にウロウロされても困るから、ケイナが答えるわきゃねえんだが。
変な疑いも持たれても面白くねえから少しだけ情報を出しておくか。
「池だったが、森の奥の方で何日間も迷ったからなあ」
「よく生きていた、と普通は言うところなんだがお前たちだしな。森から出て来たのはどの辺りだ?」
何か引っ掛かる言い方をしやがるな。
森から出て来た位置は聞き込みをされればバレるだろうから、嘘や誤魔化しは無しだな。
「森から出て最初に入った場所はエンツェンス領だったかな。路銀を調達するのに、そこの領軍で触角ヘビを1匹売った」
「東部地域だな。エンツェンス家にはギルドから確認を取っておく」
ギルドから確認?
あー。何か、それっぽいことを聞いたなあ。
課税の問題が有るんだったか。
「買い取った側も報告義務が有るんだったな」
「輸出品の統制だ。国策だから、お前らもちゃんと守れよ」
「分かった」
頷いたは良いが、あの爺さん、ちゃんと適正に処理するんだろうな?
家令だったか執事だったかのオットー爺さんの顔を思い出す。
商売っ気が強いのは良いが、国策ってことは監視が厳しいってことだろうから、判断を間違えればまずいことになりそうだぞ?
俺があの爺さんの心配をしてやる必要もねえんだけどな。
「ふむ・・・。森の中に池が存在するという情報もギルド内には無かったはずだが、出没場所も分からんのであれば注意喚起のしようも無いな。参考情報としてだけ記録に残しておくとしよう」
このオッサン、内部資料の有無も頭に入ってるのかよ。
筋肉の塊だと舐めてたが、意外と頭も良いんだな。
上級貴族ってのは知識層でも有るだろうから、当然と言えば当然か。
あんまり舐めて掛かると拙そうだから、付き合い方のレベルを一段上へ引き上げておくか。
冒険者⑮です。
事情聴取!
次回、密約!?




