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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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冒険者 ⑭

「それで良いのかよ」

「良いんだよ。厳密に言えば不正蓄財もまた王家に対する裏切り行為だ。廃爵処分を食らわずに済むなら文句も言わんだろう。―――それよりもお前、本当に何の武器も持たずにバンダースナッチやバジリスクを討伐したのか?」

 この野郎。一本取ってやったとばかりにニヤついてんじゃねえよ。

 そこはかとなく感じる敗北感をグッと飲み込んで、ソファーの横に置いてあったリュックに手を掛ける。


「アンタなら現物を見りゃあ分かるんじゃねえの?」

「ここに現物を持ってるのか? なら、見せてみろ」

 ギルド長の要望にお応えして、ローテーブルの上に、毛皮、蛇皮、生肉、魔石と積み上げていく。


 一つ二つと積み上げる度に目を剥いたドネルクの顔が考え込むものになり、呆れたものに変わり、最後には思考を放棄したように首を振っていた。

 一本取り返したか?

 俺の実力で取り返したわけじゃねえが、いくらかの溜飲は下がった。


「その背嚢は魔法道具か」

「借り物だがな」

 そりゃあ、ただのリュックじゃねえと気付くわな。


 どう見ても中から取り出した物量とリュックの大きさが見合わねえんだから。

 これが何を表すかと言えば、神教会による魔法道具の製造技術独占に風穴が空くってことだ。

 しかも劣化コピーの模造品を作ろうってわけではなく、刻印術式とかいう根幹技術はレイクスたちエルフ族が持っているものこそがオリジナルだ。


「にわかに信じ難い話だが、確かに情勢をひっくり返し兼ねんな」

「分かっているだろうが、“情報の取り扱い”には気を付けろよ?」

「ああ。了解した」

 俺の念押しにドネルクは慎重に頷いた。

 この善良な本質を持つオッサンと信頼関係を築けたなら、いくらかは肩の力を抜いて生活できるようになるだろう。


 ドネルクが毛皮の傷を確認する間は会話が途切れる。

 ドネルクがチェックしているのは手に取った毛皮の首や腹の辺りのようだ。

 野生動物に限らず生物の急所に当たる部分だな。


「バンダースナッチの毛皮と肉と魔石に、バジリスクの皮と肉と魔石。本当に武器を使わずに討伐しているんだな。バジリスクの毒腺は採ってないのか?」

「要るのか? あんなもん」

 触角ヘビが毒蛇で毒腺を持っていることには俺も気付いていたが、骨や内臓と一緒に埋めちまってた。


 致死性の毒なんて危険物を持って歩けば、所持品チェックを受けた場合に不利な立場に追い込まれる恐れが有るからな。

 日本的な感覚だろう自覚は有ったが、“君子危うきに近寄らず”ってヤツだ。

 ドネルクが探るような目を向けてくる。

 コイツ・・・。俺を試してやがるな。


「西方諸国では需要が有るらしいぞ」

「毒の需要なあ。ああいうのは取り扱いたくねえんだよ」

「なんでだ?」

 取り繕う必要なんて何もねえな。

 むしろ、本音を探られているのだから日本人感覚の本音で答えた方が良い。

 そもそも、毒の需要ってヤツに問題が有る。


「“問題”が起こった際に疑いを掛けられ兼ねねえだろ」

 毒なんてものを何に使うんだ?

 普通に考えて使い道なんて一つしかねえよな。

 生きていられると都合の悪いヤツを物理的に排除―――、暗殺だ。

 武器に塗って殺傷力を引き上げるなんて原始的な用途も有り得るだろうが、どのみち良いイメージはねえな。


「本人の目の前で平然と殺害予告をするような奴が、ずいぶんと慎重だな」

「だからだよ。線引きだけはハッキリさせておかねえとな。目先の欲だけで動く奴を信用できるか?」

 いつ裏切るか分からねえ利己的な奴を俺は信用しねえ。


 人間のすることだ。失敗することも有るだろう。

 短期的には不利益を被ったとしても、簡単に裏切らねえヤツを信用するのは自己防衛の観点からも当然のことだ。

 ただし、他者にそう在ることを求める以上、テメエもそう在らなきゃなんねえ。


「超えてはならん一線は守れと?」

「お互いにな」

 俺の答えはドネルクが満足するものだったらしく、厳つい面を緩めて頷いた。


「まあ良い。で、コイツとコイツは何の魔石だ?」

 目線を落としたドネルクが指先で平べったい石コロを突っついた。

 テーブルの上に置かれた魔石の中でも一際大きなサイズのものが2つ有る。

 他の魔石は緑っぽい色と赤っぽい色だが、その2つだけは青っぽい色と黄色っぽい色で特に目立っている。


「それは大猿とザリガニだな」

「オオザルにザリ、何だ?」

 ドネルクが首を傾げる。

 俺の答えは自動翻訳に弾かれたのがドネルクに伝わらなかったようだ。

 俺に代わって横合いからボソリとケイナが助け船を入れてくる。


「ショージョーとカルキノス」

「ショージョーだと!?」

 落雷を思わせる大声を真正面から浴びせられたケイナがビクリと身を竦めた。

 カチンと来て反射的に怒鳴り返してやる。


「いきなりデケエ声出してんじゃねえよ! 俺の娘が怖がってるだろうが!」

「お、おう。悪かったな嬢ちゃん」

「いいえ」

 怒鳴り返されるとは思っていなかったらしいドネルクが仰け反って、バツの悪そうな顔でケイナに謝罪した。

 咳払いで仕切り直したドネルクが真剣な目を俺に向けて来る。



冒険者⑭です。


自己防衛!

次回、最古!?

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