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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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232/235

冒険者 ⑪

「大きく出たな。たかが個人の1人や2人で国際情勢を変えられると?」

「現状では可能性に過ぎねえよ。その可能性を掴み取る覚悟がこの国に有るのかによるな」

 馬鹿馬鹿しいとばかりにドネルクが俺に醒めた目を向ける。


 ドネルクの言ってることは何も間違っちゃいねえ。

 ド正論もド正論。

 人間1人に出来ることなんて高が知れてる。俺1人ならな。


 俺は代弁者、あるいは代行者としてこの場に居るが、俺1人の力で何かをしようとしてるわけじゃねえ。

 家へ帰ることも出来ねえぐらいだしな。

 ただ、この一週間、俺はこの世界のほんの一部をテメエの目で見て、テメエの耳で聞いて、テメエの肌で感じてきた。


 “魔の森”と呼ばれる危険でカネの匂いがする手付かずのフィールドの存在。

 地球の常識では説明が付かねえエルフ族が持つ技術の存在。

 “ヒト族”と呼ばれる普通の人間とその文明進度。

 こっちの世界に足りてねえ決定的なモノの存在。

 俺が持っているものの優位性アドバンテージが何かってことをな。


 その結果、俺の本能的な部分が「勝てる」と言ってる。

 こんなもんは野生の勘みてえなもんだが、30年以上を生きてきた人生で俺を裏切ったことのねえ絶対的な信頼を置くものが、そう言ってる。

 だから一歩も退かねえ。

 じっと見据える俺の視線を受け止めていたドネルクが根負けしたように小さな溜息を吐いた。


「その自信の根拠を聞こう」

「ケイナ。帽子を脱いでやれ」

「えっ!?」

 隣に座るケイナが目を見開いて俺を見上げた。

 今まで如何にして隠し通すかに腐心してきたんだから、そりゃまあ驚くわな。

 安心させるようにケイナの帽子頭をポンポンと撫でてやる。


「大丈夫だよ。このオッサンに現実を飲み込む度量がねえなら、この建物内に居る全員の口を封じて他の国へ逃げるだけだ」

「お前なあ。本人の目の前で殺人予告をしてんじゃねえよ。それと、オッサン言うな」

 苦虫を噛み潰したような顔で首を振るドネルクは本気にしてねえ様子だが、俺は本気も本気。

 ケイナの安全を脅かしそうな気配を見せた瞬間、俺はこの男の首をへし折る気で居る。

 この男の態度次第では、本気でこの建物内の人間を皆殺しにして高飛びするつもりだ。


「―――、!!」

 油断しておいてくれた方が楽に始末できたんだが、それなり以上の修羅場を潜ってきたので有ろう男は俺の本気を感じ取ったようだ。

 一度収めた気迫が目に戻り、武器を探すように右手が浮いて左腰へ向かおうとする。


 だが、俺たちが向き合っているのはソファーセットだ。

 嵌まり込むようにして一人掛けのソファーに深く腰を下ろしてる奴が、剣を佩いているわけがねえ。

 大事に使い込まれてきたので有ろう愛剣とやらは、ドネルクが座るソファーの肘掛けに立て掛けられている。

 そのことに気付いたドネルクの表情に苦味が増し、俺の挙動を見逃すまいと眼球が動く。


 気付いたか? 俺の右足はローテーブルの下に爪先が突っ込まれていて、どれだけ速くドネルクが剣を抜こうと、俺がテーブルを蹴り上げる方が速え。

 剣ってヤツは鞘から抜かねえと何も斬れねえ鉄の棒だ。同じ鈍器なら、前のめりに両肘を両膝に乗っけている俺の拳が先にドネルクの面を捉える。


 トドメに右拳を固めてやればギチッと固い音がする。

 この音は死刑宣告だ。

 正しく宣告を理解したらしいドネルクは観念したように体の力を抜いて内臓まで吐き出しそうな溜息を吐いた。


「参ったよ。完全にお前を舐めてた」

「そうだな」

 潔く負けを認めたドネルクに俺も拳を緩める。


 ローテーブルの上に置かれている紙切れを手に取ったドネルクが紙面の文字を目で追う。

 ドネルクの手に有るのは1階でケイナが記入した冒険者登録の申請書だ。

 ドネルクの口振りから察するに、どうやら申請書には冷凍女による注釈が書き添えられているらしい。


「職業は“戦士”で、口頭では拳闘士と申告・・・か。どこまでが本当のことだ?」

「どこまでも何も、嘘は何一つ書いてねえぞ」

 チラリと目を向ければケイナがコクコクと頷いている。


「それで? さっきの続きだ。王国が置かれた国際情勢をお前らがどう変えられると言うのか聞かせろ。確か、帽子がどうとか言っていたが」

 ドネルクが視線を滑らせる。

 方向は俺の隣、斜め下。


「坊主―――、じゃねえな。嬢ちゃんか? 歳は幾つだ?」

「・・・・・」

 不安そうに見上げてくるケイナを安心させるように頷いてやる。

 頭に両手を伸ばして飛行帽を脱いだケイナが耳を露わにした。


「・・・58」

「おま! ―――、エル・・・ッ!?」

 ボソリと小さな声でケイナが呟くと同時に、目を剥いたドネルクの手からハラリと申請書が落ちる。

 室内にドネルクの大声が響き掛けた瞬間、抑えるのを止めた俺の奥底で“黒いモノ”がザワリと蠢いた。


 ドン! とローテーブルの上に左足を載せて身を乗り出し、覆い被さるようにしてドネルクの目を覗き込む。

 本当に分かってんのか? テメエ。

 他所で余計なことを喋ってみろ。永久に黙らせるぞ。

 自分が大声で口走りそうになった言葉にハッと気付いたドネルクが、目を瞠りながら自分の口を手で塞いだ。


「アンタは勇者に会わなかった。ここにエルフ族なんて居なかった。―――いいな?」

 呪いを掛けるように念押しする。

 自分の声を飲み下すようにして頷いたドネルクが、心を落ち着けるように深呼吸を何度か繰り返した上で顔を上げる。



冒険者⑪です。


明かした正体!?

次回、交渉!?


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― 新着の感想 ―
どこまで情報の伝達がされているのかは分かりませんが、これフィオレに黙っているのがばれたらもうこの国見捨てて戦いを自分で初めてしまうのでは
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