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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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冒険者 ⑨

 宿場町で会った冒険者も変わり種の部類で、今この国には本格的に冒険者が居ねえらしい。

 冒険者の目には王国に勝ち目がねえと映っているのか、それとも騎士や兵士の下に付かさせられるを嫌っているのか、冒険者側の理由は直接訊いてみねえことには分からねえが、売り込んで食い込む好機であることには違いねえな。


「お陰で魔獣討伐依頼の消化も滞っていてな。国内のあちこちで素材不足と魔獣被害が増えつつあって、ギルドとしても頭を抱えている」

 仕事は山ほど有って、魔獣素材も品薄だってことだな。

 需要に供給が追い付かなければ市場価値が上がり、取引価格も上がるのが市場原理だ。

 商品を供給すればするだけ売れる。


 面白えじゃねえの。

 魔獣を狩れば商品の仕入れが出来ると同時に獣害も減って、ギルドのメンツは立つ。

 俺たちがギルドの苦境を打開すれば、俺たちに対するギルドの―――、王国の依存は強まる。

 足場作りの第一段階として食い込むには十分な好機だし、勝負に出るだけの価値は有るか。


「つまり、稼ぎ時ってことだな」

「本気か? お前」

 覚悟を見極めようとするようにゴリラが俺の目を真っ直ぐに見据え、その目差しに肩を竦めて返す。


「強い魔獣は大歓迎だ。見返りが妥当なら出張サービスも“可”、だな」

「強い冒険者はギルドとしても歓迎するんだがな。状況が状況だから、結果が付いてくるなら便宜を計ってやる。が、神教会の問題は別だ」

 はああ~・・・、とゴリラが深い深い溜息を吐く。


「そもそも、なんで戦争が近いかも、なんてことになってるんだ?」

「国内が割れていたのが最大の原因だな。―――ああ、いや。それは国内においては、だな。もちろん、最大の原因と言えば神教会勢力の野心だ」

「神教会勢力というと?」

 ゴリラが難しい顔でこめかみをグリグリと揉んでいる。

 過労じゃね? ちゃんと休んだほうがいいぞ。


「西方諸国の中でも神教会と関係が深いいくつかの国は、緩衝地帯である小国家を挟んで、元々、王国とは対立関係にあったんだ。魔獣素材を辺境国が独占しているのが気に入らん、とな。王国としては難癖に等しいし、首根っこを押さえられていた部分も有ったから強気には出ていなかった」

「辺境地域ってのは開拓の最前線なんだろ? 必要に駆られて魔獣を狩っていただけじゃねえの?」


 難癖にしても理由付けが浅すぎる。

 その難癖に同調するってことは、ゴリラが言うように大義名分は何だって良いんだろう。

 正論っぽく聞こえる必要もないとなれば、それは神教会そのものが侵略戦争を目論んでいる意志の現れと見て良い。

 渋い表情のゴリラが吐き捨てるように答える。


「その通りだ。しかし、関係国から神教会へ上奏が有って、神教会は神の名の下に、神教会への莫大な資金供出と、辺境地域に住まう亜人種族の献上を要求してきた」

「人間を献上? 他所様の国に対して、そんな要求が通るもんなのか?」

 ポーカーフェイスを意識しつつ首を傾げて見せる。


 この点は俺たちにとって最も重要な部分だ。

 反応次第では別の選択肢を考える必要が有る。

 俺の問いに対するゴリラの答えは怒りを隠そうともしない反論だった。


「通るわけないだろ。そもそも、王国をはじめとした辺境に近い国々は精霊信仰がほとんどで、神教会の影響力は小さかった。亜人種族もまた重要な労働力でヒト族至上主義なんで馬鹿げた宗教思想も受け入れちゃいない。武力を背景とした宣戦布告と取られてもおかしくない横暴だ」

 ほぉん。国の思想としては合格点だな。


 内部の腐敗を力尽くで粛清し、国力を疲弊させることなく短期間で終わらせた統制力も悪くねえ。

 封建制ってのは権力が敵に回れば危険だが、味方で有れば庇護者として機能する。

 精霊信仰を持つ文化ってのもエルフ族の立ち位置に近い。

 てことは、俺たちも腹を据えて掛かるべきだな。


「首根っこを押さえられてた、ってのは?」

「塩だ。内陸国の王国では塩が自給できなかったために、国外との断絶を避けていた。他にも神教会が製造技術を独占している魔法道具も王国は輸入しているが、そっちの重要度は低い」

 過去形だな?

 ただの言い回しかも知れねえが、一応訊いておくか。


「状況が変わったのか?」

「ああ。ウォーレス領が岩塩鉱脈を発見したお陰で、抑制的に接する必要が無くなった」

 弱点を気にする必要が無くなったってのは目出度いことだが、これ、大丈夫か?


「またウォーレス領か」

「また、とは?」

「内戦を終息させるのに駆けずり回ってたんだろ? 外国の機嫌を伺う必要が無くなっても、今度はそのウォーレス領の機嫌を取る必要が有るんじゃねえの?」


 トップよりも強すぎる身内は権力の二重構造を生み出して組織を分裂させ兼ねねえ。

 この国を庇護者とした場合、別の勢力の台頭は俺たちにとっての不確定要素を増やす。

 俺が抱いた不安にゴリラが怪訝な顔をする。


「どういう意味だ?」

「ウォーレス領の名前はあちことで聞いた。さらには、この国の生命線もウォーレス領が握っているわけだ。そりゃあ危ういんじゃねえの?」

 武力と国民の信頼と戦略物資の全てをウォーレス領とやらが握ってやがる。

 真っ当な指摘だと思うが、ゴリラは集ってきたハエを追い払うようにパタパタと手を振った。



冒険者⑨です。


国内・国際情勢判明!

次回、名前!?

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