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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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冒険者 ⑥

「見てくれからの先入観で決めつけるのは良くねえな。俺は拳闘士だから武器は使わねえんだよ」

「す、素手で凶暴な魔獣を狩ったと? 大方、他の冒険者が狩った獲物を掠め盗ったか何かに決まってます。その子供だって、どこかの村で攫ってきたのではないですか? 仕えもしない杖を子供に持たせる小細工までして、無知な子供は簡単に騙されますからね」

 痛いところを突っ込まれたせいか、職員の暴言がエスカレートする。


 しかし、まだだ。

 まだ釣られねえ。

 ケイナの手前、格好の悪い大人の姿は見せらんねえ。

 釣られ・・・、釣られ・・・、釣られクマ―――ッ!!


「ちょっと、あなた! いい加減に―――」

 俺よりも先に我慢の限界に達したケイナが抗議の声を上げるのを、ガシガシと頭を撫でて押し留め、声を低める。

 このバカ女、ケイナにまで暴言を吐きやがったな?


「そうかい。じゃあ、アンタの首をへし折れば信じられるか?」

「―――、ヒッ!!」

 一段高い通常用の接客カウンターに右手を掛けてガッシリと掴めば、ゴツい無垢材の天板にメキメキと破断音を立てて5本の指が食い込む。


 日本に居た頃の俺には全盛期の頃でも出来なかったことだが、今の俺はパワーが違う。

 グッと力を籠めればカウンターに据え付けられていた天板が、バキバキバキッ! と建物内の隅々にまで木霊するほど派手な破壊音を響かせる。

 俺の体重に天板の重量まで加わって足元の床板がミシミシと軋みを上げる。


 右腕1本で引き剥がされて持ち上がった無垢材の天板は結構な高級品だったようで、カウンターの反対側の端まで繋がっていたようだ。

 長さは10メートル以上は有るな。

 厚みが目測7センチメートル以上も有って反りも割れもない一枚板なんて、日本で買えば、一体いくらすることか。


 重さも数百キログラムどころかトン単位だろう。

 パワーショベルじゃあるまいし、普通の人間に出せるパワーじゃねえな。

 ところが、物理法則を力任せに捩曲げるような洒落になんねえパワーが今の俺には出せちまう。


「おっと」

 不注意にも持ち上がった天板の反対側の端が当たって天井板をブチ破った。

 ここの接客ホールは天井が高い方だが精々4メートルほどか。

 10メートルもの長さが有る板を持ち上げれば、当然、天井に干渉するわなあ。


「あなたは一体何をしているのですか!!」

「あん?」

 悲鳴のような甲高い怒声に目を向ければ、冷凍女だ。


 非難する目を先ず一般人に向けてくるのは身内に甘い役人の習性だが、この女もお仲間だからな。

 だが、人的被害を出さなけりゃあ意外とカネで解決できちまうのが世の中ってもんだ。

 やっちまったことを言い訳するつもりもねえから理由だけを教えてやる。


「貧相な平民に魔獣が狩れるわけねえだの、盗人だのと謂われのねえ疑いを掛けられたから、素手でも魔獣を狩れることを証明してやってるんだが」

「窃盗の疑いですって!?」

 目を剥いた冷凍女が部下なのであろう職員に顔を振り向ける。


「疑う根拠は俺の見た目だってよ」

「だだだだって! こんな農民に魔獣が狩れるだなんて誰も信じ―――、ヒィッ!?」

 天井板から引き抜いたカウンターの天板をポイっと後ろに投げ棄てれば、職員の言い訳を遮って、床板をブチ割って跳ねた天板と剥がれ落ちてきた天井板が激しい音と埃を舞い上げる。


「この国の人間は随分と短慮で狭量なんだな。悪い意味で驚いたわ」

「―――、うぐっ!!」

 お前もだろ? と目を向ければ冷凍女が言葉を詰まらせる。


 さーて。どうしたもんかねえ・・・。

 売り言葉に買い言葉の勢いで始めちまったものの、着地点を探るには相手が小物すぎる。

 冷凍女の方が会話は成立しそうだが、精々が部課長程度の中間管理職だろう。


 このままじゃあ信用どころか丸損させられ兼ねねえ。

 人間に危害は加えちゃいねえが、器物損壊で物損事件化は免れねえな。

 頭の中で算盤そろばんを弾く以前の問題だ。

 困ったもんだと頭を悩ませていると、体育館並みの広い室内に大太鼓を思わせる太く低い男声が響き渡った。


「こいつは何の騒ぎだ!!」

「「ぎ、ギルド長!」」

 問題の発端を作った女性職員は救いを得たかのような声色で、冷凍女は失敗を見咎められた子供のような声色で、男声の主を見遣った。


 同じ台詞を吐いても声色一つで随分と印象が変わるもんだなあ、なんて場違いな考えが頭の隅を()ぎる。

 俺も釣られて目を向ければ、ヒグマのような体格の大男がカウンター内の奥にある扉を狭そうに潜ってくるところだった。


「へぇ?」

「ほう?」

 意図せず俺の口から感嘆の声が漏れる。

 男の口からも俺と同じような声が漏れていた。


 男の年齢は俺よりも少し上の四十過ぎってところか。

 縦にも横にも大きく奥行きも分厚い体躯は、鍛え上げられた筋肉の鎧を纏っているものだと一瞥すれば分かる。

 男が漂わせている巨岩か大木のごとく揺るぎない雰囲気が、この男の踏み越えてきた場数を証明している。


 いわゆる「強者の気配」ってヤツだ。

 年齢的には肉体的なピークを過ぎているのかも知れねえが、そんなもん関係ねえ。

 この手の野郎は強えぞ。

 貴族服ってヤツか、絶望的に似合わねえ高級そうな生地の衣服を窮屈そうに着せられている男と目が合った。



冒険者⑥です。


強者の邂逅!?

次回、話し合い!?


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