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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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状況変化 ㊲

「子供が眠そうだから、俺らはそろそろ休むとするわ」

「おう。そうしろ、そうしろ」

 宿の晩メシで腹が膨れたケイナが眠そうだと理由を付けて、早めに酔っ払いどもからの情報収集を切り上げる。


 オバチャンたちの井戸端会議と同じで、大人たちの雑談ってのは情報収集の場として有効なんだが、雑談ってのは活用性の有るものばかりじゃねえからな。

 子供には退屈だろうし、オッサンどもにしても子供がいる場での猥談は憚られるもんだ。

 早々の撤収はオッサンどもにも快く受け入れられて追い出された。


 最新の世相を知るって意味では必要十分の情報収集は出来たし、明日に負担を残さないためにもサッサと撤収するに限る。

 例によって(たらい)の湯で体を拭いてスッキリとしたところで睡眠を取り、空が白み始める前に目を覚ます。


 ケイナが髪を編み込んで身支度をしている間に、切れ味抜群のドラゴン包丁でジョリジョリと無精ヒゲを剃って俺も身支度を整える。

 鏡もねえから手探りだが、見苦しくない程度には見栄えを整えられたはずだ。

 トンテキっぽい肉とマッシュポテトっぽい朝食を腹に詰め込んでから、馬小屋から牽き出された馬に跨がる。


 朝飯を食っている間に空は白んでいて、視界の明るさも街道を往くには問題ない。

 昨夜、酔っ払いどもから聞いた話では、今の季節は秋に当たるそうだが、相変わらず天気が崩れそうな気配はねえな。

 つまりは旅日和だ。


「んじゃ、行くか」

「はいっ」

 魔獣ではない野生動物だという、浪速のモーツァルトみたいなゴッツい巻き角と鋭い牙を持つウサギぐらいしか出てこない街道を、ウサギをブン殴って串焼きにして食いつつ進む。


 ブングブル領に入って1回の宿泊と1回の野営をした俺たちは、最後の関所を越えて王家直轄領―――、いわゆる”王都領”に入って宿場町で2泊した。

 もっと急ぎ足で先へ進むことも出来たんだが、決着したとはいえ国内の治安が乱れたばかりだから情報収集を兼ねて宿場町で宿に泊まる判断をした。

 そうして今、太陽がまだ中天へ至る前の時間帯に、ようやく王都そのものを望む距離まで来たわけだ。


「アレが王都か」

 なんつーか、特徴的な町だな。

 いや。あの規模だと街か?


 初めて見るこの国の首都は、50円玉の穴にピンを刺したような形をしていた。

 あの煙突状に立ってるヤツは塔か?

 かなりの高さが有るように見えるが、こっちの世界だと石造建築だろ。


 強度的に大丈夫なのかと心配になるんだが、アレ、何メートルぐらいの高さが有るんだろうな?

 地球だとサクラダファミリアの主塔の高さが170メートルぐらいだっけか。

 アレはもっと背丈が高いように思う。


 そんなに上ってきた感覚はなかったんだが、緩やかな上り坂が続いたと思えば頂上から見下ろした底に円形の街が有るんだよ。

 街の標高の方が低いから王都の全景が見えるんだろうが、まだ意外と距離が残っていそうだ。

 景色の霞み具合から考えて、まだ10キロメートルぐらいは有るんじゃねえかな。


「すいぶんと何もない場所に有る街ですね」

「あー。たぶん、盆地の底だからじゃねえかなあ」

 ケイナの感想は俺とは違うものだった。

 そう言われれば、確かにあの街の周りには何もないな。


 それが「何」なのかは、森の景色しか見ることが無かったケイナと、日本の景色を見て生きてきた俺では、「無い」ことに違和感を感じるものが違うのだろう。

 俺が違和感を感じるものは、大きな川が有るようには見えないことだな。

 多くの人間が住む場所には水源となる川が有ることが多い。

 ただし、例外はある。それが盆地だ。


「ぼんち?」

「おう。何に言い表せば分かりやすいんだろうな? トレイ? 深皿?」

「ああ。お盆ですか」

 すぐに思い至ったらしいケイナが小さく頷いた。


 何だ。普通に「盆」と呼ぶんじゃねえか。

 文化が違うと同じものでも名詞が違うからな。

 誤解を避けようと思うと言葉を探しちまう。


「そうそう。その盆な。真ん中が凹んで盆と同じような形をしている地形を“盆地”って言うんだ」

「盆地・・・。その地形に街の場所が関係するんですか?」

 言葉の意味は理解しても、地形との関連性までは思い至らなかったらしいケイナが首を傾げる。


「地下水だよ。水ってのは低い場所に集まるだろ?」

「そうですね」

「盆の大きさが巨大でも、低い場所に水が集まることには違いがねえんだ。だから、ああして一番低い場所に人が住む」

 言ってみりゃあ巨大な地下の“水溜まり”だ。


 日本での典型例で言えば京都や甲府なんかの地形だな。

 この国のように降水量がそれほど多くなくても水が有る場所には有るもんだ。

 カラカラに乾いた砂漠の国にだってオアシスは有る。


「地下水が豊富ということですか?」

「人が暮らすには水が要る。水が有って邪魔するものが無ければ畑も作りやすい」

「そういうことですか」

 納得顔で景色を眺めるケイナに釣られて俺も景色に目を向け直す。


 周囲の形式から想像するに、恐らくは、地中のどこかから地下水が流れ込む水脈が有るんじゃねえか?

 ぽつぽつと疎らにしか木々が見えないのは、降水量の少なさに起因するものに思える。

 なだらかな平野の底にある城壁の周辺を、小麦っぽい穀倉地帯が取り囲んでいるようだな。


 あれが、王都。

 俺たちの目指すゴール地点で有り、次のスタート地点ってわけだ。

 あそこを拠点として俺たちは本格的な戦いを始める。



状況変化㊲です。


ついに王都入り!

このお話で本章は最終話となります!

次話より新章、第14章が始まります!

次回、髪!?


※ここのところ構成が酷すぎたので色々と組み直していたら投稿時間が乱れる結果となりました!

 ひと山越えたと思うので、今後は元の投稿時間に戻せると思います!

 決まった時間にお待ちいただいていた方々には、誠に申しわけございませんでした!

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