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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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220/230

状況変化 ㊱

 関所という防波堤を挟んで、ヘイレンヤード領領主の伯爵だったかの手は逃れた。

 こっちのブングブル領領主は子爵か何かで階級はこっちの方が低かったと思うが、そう簡単に手は出せまい。

 本格的に手を回される前に王都へ入っちまえば、さらに手を出しにくくなる。


 そうして向こうが手をこまねいている内に冒険者ギルドにレイバンの手紙を渡して、冒険者登録を済ませれば仕事を請けて別の領地へ移動する。

 もしも、ヘイレンヤード伯爵が俺を犯罪者に仕立てようとしても、管轄が変われば濡れ衣で吹っ掛けた容疑を証明することは難しくなる。


 日本の警察でも管轄地域の壁は存在するんだぜ。

 封建制で自治権が強い世界で管轄が変われば、どうなるかなんて想像するまでもねえ。

 逆に言えば俺たちが無実を証明することも難しくなるわけだが、それ以前に、俺の顔を見たことも無いヘイレンヤード伯爵が、どうやって俺を特定する?


 鉱山の一件は冒険者ギルドを通して請けた仕事じゃねえし、コウモリを駆除したヤツらと俺たちが同一人物だと証明するのも困難なのは分かりきってる。

 というわけで、このブングブル領で1泊してベッドで眠るぐらいの時間的余裕は有ったわけだ。

 早めに取った宿でもメシを食いながら情報収集し、終戦の情報に間違いがなかったことは確認が取れた。


 北部地域へ叛逆者の鎮圧に向かっていたのは、北部地域で最大の領地を持つリヒテルダート公爵家の長男で、国王直轄の“王都騎士団”の騎士団長を務める、ドネルク・リヒテルダートという男が総大将だったらしい。

 さらには、西部国境地域で散々に暴れまくった“南部の雄”のフレイア・ピーシスとかいう女傑も、西部地域を平らげた後、北部地域に駆けつけたんだと。

 そうなると、とてもじゃないが勝ち目がなくなった叛逆者たちは、降伏するしかなくなったと。


 今回の内乱では、西部地域の貴族家がいくつ叛逆罪で根絶やしにされ、屁理屈抜きに道中の怪しい領地も踏み潰して駆け抜けたせいで、当主が隠居に追い込まれたらしい。

 そして、北部地域を平定した騎士団長も反乱を未然に防げなかったって理由で引責辞任したそうだ。

 体制側の圧倒的な勝利なのに国家安定に寄与した功労者たちも表舞台から姿を消すらしい。

 そして、情報を訊き出している商人風の男たちの口は、まだまだ止まらない。


「まったく! ウォーレス侯爵様と特務様だけでなく、騎士団長様まで隠居させるなんて国王陛下も何を考えてるんだか!」

「なあ。その“特務様”ってのは何だ?」

 口を挟んだ俺に酔っ払いどもの視線が集中する。


「特務魔法術師のフレイア・ピーシス様を知らないのか?」

「あれ? そのフレイア様ってのは“南部の雄”じゃなかったか?」

 他の酔っ払いから聞いた話では、そうだったと思うんだが。


 酔っぱらいたちがヤレヤレと首を振る。

 まだほろ酔い程度のオッサンどもの数人が、オススメ定食のスプーンを手に首を傾げる俺と、湯気を上げるスープカップを両手に持ってフーフーと息を吹きかけてるケイナを見比べる。


「そういや、アンタたちは旅人だったか」

「王国一の有名人だから、誰でも知ってるもんだと思ってたが」

「俺らは修行ばっかりしてたから、どうにも世相に疎くてな」

 肩を竦めて見せれば、オッサンどもが納得したように肩を竦める。


「フレイア様ってのはピーシス子爵家のご当主様で、ピーシス家ってのは、“南部の雄”ウォーレス侯爵家の傍系なんだよ」

「そうそう! ウォーレス家は建国以来、ずっと南部国境を守り抜いてきた武門で、“ウォーレスは王国の盾、ピーシスはウォーレスの剣”ってな! 格好良くてシビれるぜ!」

 ほろ酔いのオッサンが解説をくれて、ベロベロに近い男が手にした木製ジョッキをビシッと俺に向けてきた。

 酔っ払いは声がデカくて五月蠅えんだが、口が軽くて情報収集には持って来いなんだよなあ。


「しかも、フレイア様は国王陛下から特務魔法術師の任務を与えられた特別な権力を持っていてな。権力を笠に着て悪さを働く貴族どもを懲らしめてくれていたお方なんだ」

「ほほぅ。国王陛下は、そんなお方たちを隠居させちまったのか」

 結構な重要人物たちってわけだ。

 酔っ払いが五月蠅く文句を垂れるのも、一理有るっちゃあ有るな。


「武勇で鳴らした先王陛下とは比べ物にならない凡庸なお方だからな」

「へぇ? 今の王様ってのは凡庸なのか?」

 ツッコんで訊けば、オッサンどもが微妙そうな顔をする。


「先王陛下の頃と違って、今の国王陛下は戦争を好まないお方だから重税も掛からないし、良い国王陛下ではあるんだがなあ」

「税金が安いのは助かるな」

「まあな!」

 現国王ってのは争いを好まない、市井でも凡庸と噂される人物らしい。


 本当にそうか?

 俺には表面上のバランスを取っているように見せて、国内貴族の不満が溜まるのを避けただけに見えるが。

 だってよ。辞任させられた“南部の雄”も、特務様ってのも、騎士団長も、消えて無くなるわけじゃねえんだぜ?


 表だっては出て来なくなるだけで、戦力としては温存されるわけだ。

 噂話を聞かせてくれた商人たちは国王が下した処分に不満タラタラだが、どうにも政治的な臭いが鼻につく。

 恐らくは、残った国内貴族の反発を抑え込むために“喧嘩両成敗”的な決着に収めたんじゃねえかな。

 ヤクザなんかがよく使う揉め事の収め方で、”手打ち”ってヤツだ。



状況変化㊱です。


市井の評判!

次回、いよいよ王都へ!?

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