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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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状況変化 ㉟

 関所ってヤツは出る側と入る側のダブルチェックを受けるんだが、基本的に出る側よりも入る側のチェックが厳しくなる傾向が有るようだ。

 ここの関所でもその傾向は同じで、ヘイレンヤード領を出るときは盗品やらおかしなものを所持していないかを確認されただけだが、次の領地側の関所ではしっかりと聞き取りを受けている。


「冒険者の親子で、行き先は王都だな?」

「ヘイレンヤード領で手紙を預かったんで届けに参りやす」

「ふむ。冒険者ギルド宛ての至急便か」

 一応はヘイレンヤード領を出た格好になってはいるのだからと、レイバンから預かった手紙を示してみれば、手紙の表書きに目を走らせた兵士が頷く。


 あんにゃろめ。

 レイバンは封筒に「至急便」、―――恐らく、「速達」とでも書いてくれていたのだろう。

 むさ苦しい顔をしていたわりに細かいところに気が回る男だったらしい。

 いよいよ、また顔を見に行く理由が出来ちまったな。


「通ってヨシ。ブングブル領へようこそ」

「ありがとうございやす」

 手紙を返して貰って兵士に頭を下げる。

 あとは窓口で通行税を収めれば通関手続きは終わりだ。


 面倒事を避けてヘイレンヤード領から脱出した俺たちが向かった先は最も近い領境で、ブングブル領側の関所を抜けるとヘイレンヤード領側の関所以上に通関待ちの列が伸びていた。

 午後も遅い時間なのに今からヘイレンヤード領に入っては陽の暮れまでに領都には着けないだろうに。

 不思議に思ったので、暇そうに荷馬車の御者台に座っている行商人っぽい男の傍で馬の脚を止める。


「なあアンタ。こっちはヘイレンヤード領へ入るための列だよな?」

「ああ、そうだよ」

 よほど暇だったのか、御者台の男は何の警戒をするでもなく、むしろ嬉しそうに見える態度で返事を返してきた。


「いつもこんなに人が並ぶのか?」

「いいや。いつもはここまでじゃないよ」

 首を伸ばして前方を見通した男がヤレヤレとばかりに首を振る。

 男に釣られて検問所の順番待ちを振り返れば、まだまだ男の順番は回ってきそうにない。


「何か理由が?」

「明日はヘイレンヤードの領都で市が立つ日だからさ」

 市場? これ全部が明朝の市場に店を出す領外からの商店なのか。

 ヘイレンヤード領の地元民も店を出すのだろうから、エンツェンス領での市場よりも明らかに規模が大きいんじゃねえの?


「へぇ? 今の時間からじゃあ領都に着く前に日が暮れちまうだろうに。これ、全部が商人かい?」

「これだけお仲間がいるんだから野営も安心ってもんさ。この行列も商人は6割7割だろうね。あとは農家や畜産農家だよ」

 この男のような行商人は野営になれているだろうが、農家も野営してまでヘイレンヤード領へ向かうのか。

 予想は付いているが敢えて訊く。


「もしや、農家も市に店を出すのか?」

「そりゃあそうさ。稼ぎどきだからね」

 そう言って男は商売人らしい顔でニヤリと笑う。

 稼ぎどきねえ?


「普通の市とは違うのか?」

「内戦が終わったからさ。もう財布の紐をキツく縛って暮らさなくて済むんだよ」

 なるほどと納得する。


 終戦の影響がこんなところにも出るのか。

 昨日と今日で領都の空気が違って町に活気が有ったことを思い出す。

 フェイクも「活気が戻った」と言っていた。


 この男が言うように住民たちが「財布の紐をキツく縛って」いたのなら、住民たちは状況が悪化して戦火が広がった際に備えて支出を抑えていたってことなのだろう。

 平和に慣れた現代日本人では思い付かねえ感覚だが、理に適ってる。

 民間による自己防衛の知恵ってヤツか。


「いつもよりも大きな市になるってことか? こりゃあ惜しいことをしたな」

「アンタたちはヘイレンヤード領から出てきたんだろ?」

 わりと本気で惜しかった。

 普通よりも規模が大きな市場なら、珍しい商品も並んだかも知れなかったのによぉ。


「ああ。急ぎの用事が出来ちまって王都へ急がなきゃならなくなってな」

「そりゃあ残念だったね。王都もお祭り騒ぎだろうけど、あっちは物価が高いからねえ」

 ふぅん? 王都の物価は高めと。


 王都って言うぐらいだからヘイレンヤード領以上に人の数が多くて活気が有るんだろう。

 人が多く暮らしていれば需要も多くなるのは必然だ。

 物流が未発達で商品の供給が脆弱なら物価が上がるのも頷ける。


「お祭り騒ぎってのは?」

「昨日、討伐軍がレンドルフ領を通って王都に帰還したそうだよ」

 ほう? 討伐軍ってのは反乱の鎮圧側って意味か?

 レンドルフ領ってのがどこなのかは分からねえが、ここの領地の近くなんだろう。


 このブングブル領ってのも西隣は王都のはずだからな。

 北部地域を制圧しに行っていた討伐軍が行き来するルートなら王都の北側か?

 位置的にブングブル領が王都の東隣なんだから、レンドルフ領ってのはブングブル領の北西側と考えるのが妥当だろうな。

 そこを通って体制側の軍隊が凱旋を終えたと。


「へぇ? 祝勝のお祭りってわけか。それはそれで楽しみだな」

「戦争なんて、そうそう起こるもんじゃないしね。アンタたちも楽しむと良いよ」

 男の言う通り戦争なんて頻繁に起こられては困るし、起こらないのだろう。

 滅多に無いお祭り騒ぎだというならケイナにも見せてやりてえ。


 男の言葉に頷いていると前方の荷馬車が動き始めた。

 検問所の待機列に並んでいるこの男の荷馬車も動かす必要がある。

 話の切り上げ時を俺も男も感じ取る。


「そうするか。色々と聞かせてくれてありがとうよ」

「ああ。アンタたちも道中気を付けてな」

 互いに片手を挙げて別れを告げる。

 これはこれで、有益な情報を聞けたな。



状況変化㉟です。


3つめの領地!

次回、噂!?


※ 今日はちょっと私用が有りまして遅めの投稿となってしまいました!

  お昼に投稿を待たれていた型は申しわけございませんでした!

  たぶん明日はいつも通りの時間に投稿となります!

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