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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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状況変化 ㉙

「誰だぁ?」

「おう。レイバン」

 仕事に邪魔をされて不機嫌そうなオッサンに片手を挙げて挨拶すると、汗だくの体にシャツを貼り付かせたオッサンが表情を明るくした。


「おお! 昨日の冒険者じゃねえか! コウモリはどうした?」

「片付けてきたぞ」

 この野郎、俺の服装が農民っぽいからって、まだ舐めてやがったな?

 大人な俺は舐められた程度で腹を立てたりしねえけどよ。


「何!? もう終わったのか!!」

「終わってねえのに戻ってくるかよ」

 目を剥いて驚くってことは、まだ信じてねえのか。


 半信半疑らしいレイバンを引き連れて入口脇に繋いである馬へと向かい、馬の背に括り付けてある麻袋に手を掛ける。

 ちょっと臭う皮膜の袋が複数と、上質なものだとビクトルが渡してきた珪石の袋が有って、珪石の袋は一つだけだ。


「見るか? コウモリの皮膜だが」

「そんなもん出すな! 工房ん中まで臭くなっちまう!」

「チッ」

 あんまりにも生意気なら工房内に皮膜をバラ撒いてやろうと考えてたんだが、レイバンはコウモリの臭さを知っていたらしい。


「舌打ちすんな! ―――、ったく。それで、鉱山はどうなった?」

「ビクトルからだ。代金はアンタに付けとくってよ」

 抗議をガン無視して、馬の背から下ろした珪石の麻袋をレイバンに差し出す。

 重量が優に50キログラムは有る麻袋が引ったくられた。


「貸せ! ―――、おおっ! 珪石だ!」

 固く縛って有った麻袋の口をゴツゴツした職人の手でもどかしく開き、麻袋に突っ込んだ手で中身の一部を掴み出す。

 透明に透き通った水晶とまでは行かねえが、白い半透明の霞が掛かったような結晶体は、石屋のオッサンが取り扱っていた珪岩に較べて素人目にも明らかに不純物が少ない。


「珪石!?」

「珪石ですかい!? 親方!」

「再稼働できたんですね!」

 何事かと遠巻きに見に来ていた職人たちが駆け出してきて驚きの声を張り上げる。


「これで普通に仕事が出来るぞ!」

 ゴツい手に掴んだ珪石を職人たちに掲げて見せてレイバンが吼える。

 職人たちも拳を突き上げて歓喜の叫びで応えている。


 行政の施工確認検査で不備が発見されて現場が止まった経験は俺も有るしな。

 仕事が再開できる喜びは理解できちまう。

 だが、それはそれだ。終えた仕事の対価は回収させて貰うぞ。


「レイバン。賭けは俺の勝ちだな?」

「おう! 色無しの防護メガネだったな! 作ってやるから明日取りに来い!」

 ニカッと笑ったレイバンは賭けを忘れていなかったらしい。

 これで「賭けなんて知らねえ」だとかとぼけようもんなら、臭え皮膜で猿轡してやるつもりだったんだが、その必要は無くなっちまった。


「ヨシ。明日だな」

「昼過ぎにでも来い! それまでに仕上げておいてやる! ―――、おい! 防護メガネの在庫が有っただろう! 誰か持って来い!」

 早くも仕事モードに切り替わったレイバンが工房の奥へと戻ろうと背中を向けたが、要件はもう一つ残ってるぞ。


「それと、皮膜はどこに持っていけば良い?」

「東門の脇にフェイクってヤツの素材屋がある! レイバンの紹介だと言えば適正価格で買い取ってくれるから、そこへ持っていけ!」

 もう頭の中はガラスの生産作業のことしか無くなった様子のレイバンから、怒鳴り声のような返事が返ってきた。


「分かった。じゃあ、明日の昼過ぎに来る」

 一応、最後に確認の声を掛けたが、完全に仕事モードに入った職人たちからは誰一人として返事は返ってこなかった。


 普通のヤツがこんな態度を取れば軽く小突いて人間社会の礼儀を諭すところだが、職人ってのはこんなもんだ。

 精々、良い仕事をしてくれるように期待しよう。

 身勝手とも見える職人たちの姿をポカーンと見送っていたケイナに向き直る。


「行くか」

「はい」

 声を掛けられて我に返ったケイナと馬に跨がり直して東門へと向かう。

 東門ってのは、昨日、俺たちがヘイレンヤード領の領都に入って来た城門のことだな。


 それにしても、昨日よりも町全体に活気が有って人の数が多い。

 人が多いと言うことは荷馬車の数も多いってことで、前後だけでなく通りの角で油断していると左右からも荷馬車が突っ込んで来て事故を起こす可能性が高まるってことだ。

 十分以上に注意しねえとな。



状況変化㉙です。


町の空気の変化!

次回、さらなる状況変化!?

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