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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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状況変化 ㉓

 馬の背から下ろしたリュックを肩に引っ掛けて5番坑へ戻る。

 あの強烈なニオイの真っただ中へ舞い戻るのかと考えただけで吐き気を催しそうになるが、引き受けた以上、やるしかねえ。

 鼻に詰め物をし直し、臭すぎて誰も近付かない坑道の入口にリュックを残して、ケイナと2人で抱えられるだけの薪を両腕に抱えて再突入を敢行する。


 しかしまあ、魔法ってのは便利なもんだな。

 ケイナに付け直して貰った光の魔法は俺の頭上50センチメートルほどの空中に支えもなく浮いていて、俺の移動に合わせて頭上を付いてくる。

 照らす範囲が限られる夜間活動用のヘッドライトと違って、太陽光のように周囲全体を照らしてくれるから死角が生じねえ。


 しかも、両腕が塞がっていても何の問題もねえし、光の球を天井にぶつけても壊れる心配はゼロらしい。

 試しに光の球が乗っかった頭を坑道の岩壁に擦り付けてみたんだが、光の球が岩壁の中にめり込んで暗くなっただけで、岩壁から頭を離せば何事もなく光の球は岩壁から出てきた。

 まるで幽霊が壁をすり抜けて来たような様子に、ケイナに質問をぶつけてみる。


「この光って、実体はねえの?」

「形も重さもないですよ。触れても熱くありませんし」

「ほほう・・・」

 本当に丸っきり幽霊みてえだな。


 てことは、実体のある物質じゃあないわけだ?

 何て言えば良いのか、空間の位相が違う?

 いや。存在する次元が違うってことなのか?


 いかにもファンタジー的というか、SF的というか、俺の理解が及ぶ存在ではないことだけは理解した。

 未体験だった1回目の突入では正確に分からなかったニオイの危険エリアを報せて、危険物センサーがガンガンに警報を発してくる。


「そろそろだから覚悟を決めろよ?」

「は、はい」

 偉そうに警告を発したものの、覚悟を決めていても生理的な拒絶反応を示してバクバクと鼓動が高まってくる。


「「ふぐっ!?」」

 危険地帯に踏み込んだ瞬間、脳がニオイを感じ取るよりも速く呼吸が詰まった。

 知能が判断するよりも先に体の方が拒絶しているらしい。

 数瞬遅れて脳幹を突き刺しまくって意識を揺さぶるようなニオイを知覚する。


「ぐおおおおおおおお・・・!!」

「や、やっぱり臭いです!!」

 ニオイというものが人間をこれほど苦しめられるものだとは!

 コレ、拷問に使えるぞ!


 こんなニオイが充満した部屋に放り込まれたら、どんなに意志が固いスパイだって秒で自白するだろう!

 たぶん拷問官も気絶するけどな!

 眼球に染みて涙腺を刺激するニオイにも、今は両腕に薪を抱え込んでいるから流れ出る涙も拭えねえ! 

 視界がぼやけるが後には退けねえ!


「クッソ!! サッサと行って、サッサと脱出するぞ!!」

「はいっ!!」

 ヤケクソで叫べば、ケイナからもヤケクソだろう叫び声が返ってきた!


 コウモリのクソを焼くのは次の作業だが前倒しだ!

 地べたに貼り付いているクソだけは踏まないように地雷原を駆け抜け、穴ぼこの底に手早く薪を組んで声を上げる!

 コウモリどもの様子がどうかなんて天井を見上げる余裕も無かった!


「撤退!」

「はい!」

 再び地雷原を駆け抜けて危険エリアを脱する。


 薪は設置したが、まだ終わりじゃねえ。

 これから用意してある大量の生木を運び込まなきゃならねえからな。

 奥行きが数百メートルある坑道の入口と最奥部を、伐り出しておいた生木を抱えて何度も往復する。


 生命の危機を感じる状況にアドレナリンが異常分泌されたのか、酔っ払ったように記憶が定かじゃねえが搬入を終えた。

 生木の小山が無くなってるんだから運び終えたんだろう。

 今さらだが、生命の危機を感じるほどのニオイって何だよ!

 意味わかんねえぞ!


「大丈夫か?」

「ま、まだまだ大丈夫です!」

 ケイナに声を掛ければ気丈に答えるが、ちゃんと意識が有るのかは怪しい。


 「何かを運ぶ」という意識だけは有るようだが、頭の位置がフラフラと定まっていなくて視線も定まっていない。

 周りを見回したと思えば、ケイナは俺のリュックに手を掛けて坑道内へ引き摺って行こうとする。

 うーん。アドレナリンが分泌されすぎて脳内麻薬で完全にトリップしてるな。


 脳内麻薬で本当に酔うものなのかは知らんけど。

 明らかに正気の状態ではないし、リュックが重すぎて引き摺れていないのが幸いだった。

 ケイナの細い両肩を掴んで揺さぶる。


「いやいや。今日はもう終わりだからな!? 気を確かに!!」

「ハッ!! 私は一体何を!?」

「終わったんだ! もういい! 休め! 休め!」

「お、終わったんですか? 良かっ・・・た」

 ガクリと力を失って崩れ落ちようとする小さな体を危うく抱き留める。


「け、ケイナ!?」

 ダメだ。白目を剥いてる。

 意識は無いが呼吸は安定しているな。

 限界以上まで頑張ったんだから無理に起こしてやるのも可哀想だな。

 ケイナの鼻の穴からそっと詰め物を抜き取ってやって背中に負ぶる。



状況変化㉓です。


第1ラウンド終了!?

次回、連打!?

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― 新着の感想 ―
鼻栓抜いておぶると、髪の毛に染みついた臭いで着付け&気絶ループが完成?w
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