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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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状況変化 ⑭

「坑道の中での注意事項みたいなのは有るか?」

「一通り、坑道の天井は固めてあるが、支保が入ってる場所は落盤に注意してくれ」

 坑道に落盤は付き物だな。


「“固めてある”ってのは、どういう意味だ?」

「土術式だ。岩盤を固めることで、ある程度は落盤を防止できるんだ」

 ほほぅ。魔法か。

 ケイナがウンウンと頷いている。俺にとってビクトルはまだ信用に値しないが、魔法の使い方としてケイナが正しいというなら正しいんだろう。


「了解。コウモリが居るのは最奥部だと聞いたんだが、どこかに抜け道が有ったりは?」

「いいや。何ヶ所か支坑は有るが封鎖してある。最奥までは一本道だ」

ビクトルが指す図面に記された坑道には数カ所の枝分かれが有るが、一本を除いた全ての支坑が直ぐに行き止まりになっていて、バツ印が書き込まれている。

 鉱山なんてものを知らない俺たちにすれば、狭っ苦しい穴ぼこが延々と続く坑道は天然の洞窟と何ら変わるものではなく、何もかもが勝手の違う異世界のようなものだ。


 人間が入り込んでツルハシを振るう人工のトンネルである以上、身動きが取れないほど狭っ苦しいわけでもないんだろうが、必要以上の広さもないだろう。

 どこを見ても同じ景色に見えて、いくつかの分岐路が有るだけで道に迷いかねねえ。

 迷子になる可能性が無いというのはラッキーだな。

 そうなると、心配事はレイバンが助言をくれた“アレ”のことになる。


「その最奥部なんだが、“とにかく臭え”とレイバンから聞いたんだが」

「覚悟して行ってくれ。あそこは、たまたま掘り当てた地下の空洞でな」

「んん? ちょっと待ってくれ。人工の坑道じゃなく天然の洞窟なのか?」

 矛盾を見付けてビクトルの説明を中断させる。

 天然洞窟となると作戦の前提が変わって来ちまうぞ。


「最奥部の空間だけはな。地下水脈が作った部屋みたいなもんだ」

「だったら、どこかに空気が抜ける穴が有るんじゃねえのか?」

 俺の質問にビクトルは頷く。


「窒息することも水が貯まることもないから、有るには有るんだろうな」

「そもそも、そのコウモリどもは、どこから入り込んでるんだ?」

 人間の手で掘った支坑は無くても天然の侵入経路が有るんじゃないのか?


「坑道から出入りしてる。確認済みだから間違いない」

「ほぉん?」

 随分と断定的な言い方だな。

 まあ、目撃情報が有るのなら断言もするか。


「どこかに空気の通り道が有るとしても、コウモリどもも通り抜けられる大きさではないんだろう」

「どこから出入りしているのかが分かってんのなら、坑道に扉を付けて夜間は塞げば良いんじゃねえのか?」

 これ以上無い正論のはずなんだが、目を怒らせたビクトルがギロッと俺を睨む。

 数秒間、俺を睨み付けた後、怒りを飲み込むようにして首を振る。


「扉は何度も付けたが毎日のように壊されるんだ」

「壊すって、誰が?」

「コウモリに決まってるだろうが!!」

 何のこともないはずの質問に、一度は怒りを飲み込んだはずのビクトルが叫ぶ。

 おっと。地雷を踏んじまったか。

 図面を取り落として目を血走らせたビクトルは、わなわなと両手の指を震わせて歯ぎしりする。


「アイツら寄って集って引き剥がしやがるんだよ!! 毎日だぞ!? 毎日毎日、毎日毎日毎日毎日!!」

「お、おう。そうなのか」

 うーむ。ちょっと想像し辛いが、野生動物との我慢比べに人間が負けたのか。

 溜まってたんだろうなあ。


 細々としたストレスが蓄積して、ほんの小さな言葉の行き違いを切っ掛けに、溜まりに溜まった怒りが爆発することは中間管理職あるあるだ。

 分かりみー。

 優しい気持ちでポンポンと肩を叩いてやれば、ストレスを吐き出して正気に戻ったらしいビクトルが気まずそうに咳払いする。


「と、とにかくだ。最奥部は風が吹くほどは空気が抜けないから臭いも抜けてくれない。心の準備をしていないと大変な目に遭うぞ」

「そんなに臭いのか?」

「毎回、一人や二人は気絶する奴が出る程度にはな」

 軌道修正を図ったビクトルを俺も追及せずにおいてやる。


 気絶ねえ・・・。

 意識を失ったヤツが死んでいないってことは、有毒ガスが出ているわけでは無さそうか?

 いやいや。臭気もガスだろう。

 ガスそのものが可燃性じゃなくとも、二酸化炭素が充満していても生き物は死ぬ。


 そこに入り込んで棲み付いた野生動物が死なないのだから、空気が出入りする経路は存在するはずだ。

 だったら、当初の作戦を変更する必要はねえんじゃねえかな。

 物の見方ってのは一つじゃねえ。

 正面からだけ見るのではなく、横から後ろから見れば見え方が変わることも有る。


 最奥部は地下水脈が抜けた洞窟なわけだろ?

 大量の水が抜ける先が有るってことは、その排水経路は空気が吸い込まれてくる経路にも成り得る。

 水は高きから低きへと流れるもんだ。

 つまり、最奥部の方が位置関係では排水先よりも高所になるんだろう。


 高い場所で火を焚けば炎と煙は高い側、あるいは圧力が抜けやすいへと抜ける。

 それが坑道になるんだろう。

 他に逃げ道が無けりゃあ、燻されたコウモリどもも坑道側へ逃げてくる。

 そいつを待ち伏せすりゃあ、追い回す手間が省けそうだよな。


 

状況変化⑭です。


中間管理職の悲哀!?

次回、作戦決行!?

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