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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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状況変化 ⑧

 何かの力仕事を伴う職人っぽいオッサンは上着の袖を捲り上げていて、なかなかゴツい筋肉が付いた腕を剥き出しにしている。

 だが、俺の目を引いたのはオッサンの頭に乗っかっているものだ。

 額の上に押し上げた部分にガラス板が入っていて、後頭部へ回したベルトでガラス板を目元に固定するためだろう保護道具っぽいもの。


「ありゃあ、ゴーグルか?」

「ごーぐる、ですか?」

 俺の声に反応したケイナが、俺の視線を追い掛けて露店の方を見る。

 ゴーグルじゃ伝わらねえか。


「あー。飛んでくるものから目を守るためのメガネみたいなもんだな」

「めがね?」

 言い直してみたが、メガネも伝わらなかった。


 そういや、郷でメガネを掛けてるヤツは一人も見なかったな。

 500年以上も生きてるというケイナんちの爺さんも、老眼鏡の一つも掛けていなかった。

 現物を見たことがないヤツにメガネって、何て教えれば良いんだ?


「し、視力を助ける道具のことだな」

「そういう便利な道具が有るんですね」

 ちゃんと伝わったのか伝わっていないのか、ケイナはフムフムと頷いている。


 あ。やっぱり伝わってねえな。

 口にした言葉通り便利な道具の存在に頷いていただけで、見たこともないメガネというものを理解したわけではないんだろう。


「あそこのオッサンが頭に乗っけてるアレだ」

「ほーう。アレがめがねなんですね」

 露店に前に居るオッサンを指せば、ケイナが興味深そうな声を上げる。


 ゴーグルか。

 飛行帽と言えばゴーグルだよな。

 追加の重りになるし、ベルトで抑えておけば帽子も浮き上がらねえか?

 きっと、どこかで買えるんだろうが・・・。


「訊いた方が早えな」

「えっ?」

 観察に熱中していて聞き損じたらしいケイナに改めて露店を指し示す。

 たぶん、串焼きと何かを売ってる露店だよな?

 カウンターの内側で恰幅の良い女性が手元で何か作業をしていて、薄く煙が上がっているように見える。


「なあ。串焼き食ってみねえ?」

「食べます!」

 即答だな。


 町の食べ物に興味が有るケイナを促して露店へと向かう。

 ケイナはファーストフード的な店の食い物はまだ食ったことなかったし、丁度良い経験だろう。

 オッサンが向き合っている露店に歩み寄って、店舗のカウンターを挟んだ反対側で串を転がしているオバチャンに声を掛ける。


「姐さん。その串焼きは何の肉だ?」

「ジッカロープだよ」

 軽いお世辞を籠めた呼び方にオバチャンがニヤッと笑って答える。


 へぇ? 例のウサギか。

 タレか何かを塗って焼いているのか、香ばしい匂いが食欲をそそる。

 味見してみたかったと昨夜言っていたから、ケイナも喜ぶだろう。

 チラッと目をやってみれば、案の定、ケイナは目を輝かせて居た。


「じゃあ、その串焼きを3本くれ」

「あいよ。大銅貨6枚だよ」

 毛皮袋から硬貨を摘まみ出してオバチャンに手渡す。

 硬貨と交換で3本の串焼きを手渡そうとしたオバチャンを手で制する。

 隣で何かの調理が終わるのを待っていたらしいオッサンを親指で指す。


「おっと。1本は、こっちの兄さんに渡してくれ」

「ええ?」

 オバチャンが目を丸くして、突然、見知らぬ相手に奢られそうになったオッサンが怪訝な表情をする。


「アンタ。どういうつもりだ?」

「いやなに。その頭のソレ。どこで買えるのかと訊きたくてな」

「ソレ?」

 警戒を顕わにするオッサンの目線の上を指してやると、オッサンは自分の頭に手をやった。

 自身ではなく身に付けている仕事道具に用が有るらしいと気付いたオッサンは、いくらか警戒を緩めたようだ。


「この遮光メガネか?」

「しゃこう? ああ。ガラスに色が付いてんのか」

 “遮光”って意味だろうな。

 サングラス、あるいは、溶接作業用の“被り面”みたいな用途で使うものなんだろう。

 俺の様子に警戒を解いたらしいオッサンが、オバチャンから串焼きを受け取りつつ肩を竦める。


「一日中、炉を見つめてると、目をヤラレるんでな」

「炉、ってことは、兄さんはガラス職人なのか?」

 ほうほう。

 狙ってたはいんだが、ガラス製品を売り物にしている町で、早速、ガラス職人と接触を持てたのはラッキーだな。



状況変化⑧です。


飛行帽と言えばゴーグル!

次回、交渉!?

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