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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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状況変化 ②

 こっちの世界ではいちいち客の目の前に配膳してくれたりはしねえから、木皿とカップをケイナと俺の前に取り分ける。

 ベーコンと粉ふき芋っぽいものにスライスしたパンとスープが付いたもので、大きな木皿の上に料理とスライスパンとスープの木皿が載っている。

 ワンプレートのスタイルがこっちの世界の標準なのかもな。


 他のテーブルを見るに固めのパンを千切ってスープに浸してから食べるものらしい。

 ドカ飯の宿との違いがああだこうだと雑談しながら平らげる。

 基本的に薄味だが、まあまあ美味かった。


「また来てくださいね~」

「おう。こっちに来ることが有れば、そんときはな」

 馬の背に荷物を括り付けて跨がり、見送りに出てきた女性店員に答えてケイナに目を向ける。

 すでに鞍に跨がっているケイナは馬の首を撫でてやっている。

 準備は万端そうだな。


「ヨシ。行くか」

「はいっ」

 白く染まった空の下、西側の城門へ向けて町中を進む。


 立ち並ぶ質感の粗い木造住宅の屋根からは、朝食を作っているので有ろう煙が立ち上っている。

 煙の臭いの中に何かの調理中と思われる匂いが混じっていることに人の営みを感じ取る。

 森の中では感じられなかった多くの人間の気配に、人間社会に戻った安心感を得ると同時に気を引き締め直す。


 人間は知恵の有る生物で、知恵が有るならそれぞれに思惑が有る。

 敵ばかりでは無いだろうが味方なのかと言えばそれも違う。

 気を抜けば食われるのは人間社会も森の中も同じだ。

 だから、こうやって愛想笑いを貼り付けて敵対していないと示す必要が有るわけだ。


「やあ。領都へ向かうのは、この道を行けば良いんスかねー?」

 馬の脚を止めて声を掛けると、城門で検問に立っている兵士がジロリと目を向けてくる。

 俺たちと馬をジロジロと見て違和感を見付けられなかったらしい兵士が表情を緩めた。

 顎先で町の外を示して情報をくれる。


「この街道を真っ直ぐだ。60キロメテルは有るから気を付けてな」

「ありがとッスー」

 俺が礼を口にするとケイナも兵士に会釈を返している。

 城門を出て少し離れてから俺の隣りに並んでいるケイナが口を開いた。


「少しだけ人の数が多いですね」

 ケイナの視線を追えば、街道上にも街道脇の畑にも人の姿がチラホラ見受けられる。

 ケイナの言う通り、エンツェンスからの道中よりも明らかに人影の数が多い。

 誤差レベルだが、見渡す景色の中に色が違って見える地面の面積も増えているように見えなくもない。


「そうだな。領都まで行くヤツがどれだけ居るのか分かんねえが、通行人が多いってことは盗賊の心配をそこまでする必要は無さそうだ」

「それは良いことですね」

 手間が掛かって面倒では有るが、小遣い稼ぎになるのだから出てきたら出てきたで構わねえんだがな。


 人も獣も信用ならねえと思えば心理的な負担になるが、自己防衛のための暴力がある程度は容認される世界だ。

 考えようによっては小銭が自分の足で歩いてくると割り切ることも出来る。

 人間社会の中でも大自然の中でも力が重視されて、証拠の立証が難しいから自己申告がそのまま通るんだもんな。


 一昨日の盗賊どもが良い例だ。「コイツらは盗賊だ」と申告して裁判も無しに素通りで受理されるってことは、逆もまた有り得る。

 襲われて負ければ、濡れ衣を着せられて売られる危険も付いて回るってことだ。

 支配階級が振り回す権力ともなれば、さらに厄介なのは目に見えてる。

 マジで気を付けねえとな。


「今日も良い天気ですねぇ」

「ポカポカと暖かくて眠くなっちまうなぁ」

「ねー」

 寒くもなく暑くもなく、風も穏やかで見上げれば雲ひとつない抜けるような青空。

 日差しは暖かく、俺たちの頭上を数羽の小鳥がピヨピヨと鳴きながら飛び越えていく。


「あっ。また家が有りますよ」

「おー。今度のはちょっと小さめだなー」

 世の中の不条理と人間の危険性に辟易しつつ、ゼロコンマゼロゼロ数%ぐらいの確率で増えてきた人家を遠目にド田舎の景色を適当に堪能する。


 初めて見るものに素直な反応を示すケイナとの雑談に応じながら、ポックポックと緊張感のない蹄の音をBGMに街道を進んでいる内に太陽が中天に上って昼時になった。

 行く手を見渡せば、街道脇に手頃な木々が生えている。

 ケイナに木々を指し示す。


「あの木のところで昼メシにするかー」

「はい」

 首を伸ばして目標地点を確認したケイナから返事が返る。

 この20分後ぐらいに俺たちは意外なものに遭遇した。


「んん?」

「・・・・・」

 焦げたチーズの匂いが漂う焚き火の前で座っている俺とバッチリと目が合ってるのに、リュックの上蓋を咥えて引き摺ろうとしている四つ足動物は逃げようとしない。

 いや。リュックを引き摺って行こうといているのだから、逃げようとはしてるんだろう。たぶん。


「タヌキ・・・?」

「・・・・・」

 引き摺ろうとはしているが、生憎、リュックの重量は優に100キログラム以上も有って、そう簡単に引き摺れねえ。

 何やってんだ? コイツ・・・。

 諦めることなく一所懸命モゴモゴジタバタしている四つ足動物を見つめならが大きく息を吸う。


「くらあああああああっ!!」

「「「「―――ッ!?」」」」

 木に繋いだ馬たちが揃ってビクッと体を震わせるほどの大声で怒鳴りつければ、ビクーン! と飛び上がった四つ足動物はその場でパタリと倒れた。

 同時に街道脇の草むらでもガササッと物音が聞こえた。

 


状況変化②です。


珍獣!?

次回、ケンカ!?

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