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オジサンはお家に帰りたい ~ 粉砕!! 異世界迷子オジサン  作者: 一 二三


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オジサン、迷子になる ⑦

「あんのヤロウ・・・!!」

 懸命に羽ばたいているように見える黒い「ソレ」は、胴を少し太らせた蜥蜴に蝙蝠の翼手を引っ付けたような姿をしている。


 あれは、アレだ。

 ゲームとかマンガに出てくる、ドラゴンってやつだ。

 PRG? RPG? 何か、そんな感じの、ヒナとゲームソフトをやってて、倒すのに苦労したやつ。


 てっきり、空想上の産物だと思っていたが、違ったんだな。

 しかし、だ。

 このまま、飛び降り自殺者みたいに俺も地面にタックルかまして死ぬもんだと諦めかけていたが、諦めてやらねえ。


 無風状態でも効果があるのかは知らないが、“気を付け”の姿勢で空気抵抗を減らそうと努める。

 スカイダイビングって“飛び降り”が趣味の、取引先のオッサンが、こうすれば、投影面積? が小さくなって、空気抵抗が減ってスピードが出るって言っていた。


 たぶん、だけどな!! 覚えてねえよ!!

 本当に、追い着けんのか? これ。と、少し不安になってきた頃、トカゲ野郎が、丸い光に到達したように見えた途端に、身を捩り、“止まった”ように見えた。


 ぐんぐんと距離が詰まり、この勢いで衝突したら、やっぱり俺、死ぬんじゃね? と、背筋が寒くなりはじめる。

 もう、手が届きそうな距離だが、コイツ、―――デカい!?

 30―――、40―――、4本角の頭の先から尻尾の先までで50メートルぐらいあるか?

 距離感が、おかしくなるが、トカゲは想定以上にデカかった。


 つまりは、まだ相互の距離が残っているってことだ。

 徐々に色が変わって、白から白みがかった濃緑色となった丸い光から、ドラゴンの姿が隠れはじめている。

 あンのヤロウ!! 横方向へ移動をし始めたってことか!?


「―――、ブッコめ!!」

 ビビってる場合じゃねえ!!

「ぶあっっっ!?」

 ドラゴンへの特攻の覚悟をキメた途端、俺は何かに衝突した。


「ぶべべべべ、ぐぼぼぼぼびべっ!!」

 数瞬、意識が飛んだ気がするが、それどころじゃねえ!

 作業ジャケットとスーツパンツが激しくはためき、全身を叩く感触と、ごうごうと鳴る耳元の轟音に、空気の壁にぶつかったのだと認識する。


 煽られて暴れる安物のネクタイが、ばちばちと顔をタップしてきて痛い。

 そうだと分かれば、慌てることはねえ。

 大昔の週間少年誌マンガでセリフに有った“スピードの向こう側”ってやつだ。


 読んでて「ナニそれ?」って思ったもんだが、今でも、よく分かんねえ。

 けど、高速でブチ当たってくる風の壁なら、慣れたもんだ。

 むかし取った杵柄、ってェやつよ。


 渦巻く猛烈な風圧に押し潰されて辛いが、無理やり目を開く。

 少し下、いくらかの距離を離されたようだが、トカゲ野郎は、まだ射程圏内。

 きっと、そうだと思いたい!!


 横移動を始めてはいるが、ヤツも落下し続けているらしい。

 猛速度で落下していたから、横方向のベクトルよりも、縦方向の自然落下移動のほうが遙かに強いのだろう。

 水平方向から俯瞰すれば、垂直よりも、やや寝かせたぐらいの角度で急降下しているように見えるはずだ。


 向こうは、まだ、俺の存在に気付いた様子は無い。

 そりゃあそうだろうよ。

 戦闘機の空中戦で言やあ、俺の位置は、あのトカゲ野郎から見て6時の方向の少し上。

 バッチリ、射撃位置に着いて居るようなもんだ。


 鹿みてえに後ろも見える出っ張った目玉じゃねえんだから、見えてるわけがねえ。

 全長50メートル、対、身長2メートル弱だ。

 25分の1以下の大きさの俺が迫ってきても、熊とネズミほどの体格差が有る。


 見えていないなら、生き残る目は有る。

 再びの、“気を付け”で、ドラゴンとの距離が、じりじりと近付いてくる。

 おおっ!? 胸を張ったり、行きたい方向の手首や足首を立てると、何となく落下方向をコントロールできるな!!


 新発見だ!! なんて、テンション上がってきてる場合じゃねえよな。

 ぐねぐねと土から出たミミズみたいな奇妙な踊りを、しているように見えるかもしれないが、ドラゴンとの距離は、確実に近付いてきている。

 絶対に、逃がさねぇぞ!!

 テメェ、ゼッテェぶん殴って、泣かしてやるからな!!


「う・・・おお・・おおおお・・・!」

 目の前にまで迫った、サメの背鰭のような平たい棘。

 風圧に逆らい、背筋に沿って整然と並んだ棘へと、グググと右腕を伸ばす。

 つ・・・、つ・・・・・、掴んだ!!



オジサン迷子になる⑦です。


高空機動戦!

次回、白兵戦!?


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