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プロローグ・しつこい雑草は根っこから枯らせば良いのでは? と考えた ①

本作は「蒼焔の魔女 ~ 幼女強い(Nコード:N6868JY)」の原点となったシリーズ作品です!

同じ世界観と設定を共有しております!

 無粋にも、我の(ねぐら)へと踏み込んできた奴等は、夢うつつに微睡んでいた我に向かって、いきなり爆炎術式を放って来おったようだ。

 愚か者どもめ。

 この洞が、この“黒龍王”の塒と知っての狼藉か?


「グルルルル・・・」

 不機嫌を表して、意図せず我の喉が鳴る。

 自らの体躯を支え維持するため、我ら龍族(ドラゴン)の身体には生来的に強化術式が働いている。

 自慢の黒鱗に弾ける焔など“火蜥蜴(サラマンドラ)”の吐息ほどの熱量も感じぬが、平穏な眠りを妨げられた不快さに瞼を開く。


 鬱陶しさに(くび)を起こし、足元を睥睨してみれば、薄闇の中に、キラリ、キラリと閃く鈍色の光。

 何やら鳴き声を上げながら駆け寄ってくる侵入者どもの手に握られているものは、短剣に大盾、長剣、手槍、長斧、棍、大鎚に杖か。


 種族がバラバラで100匹は居らんか?

 亥人族(オーク)鬼人族(オーガ)巨身族(トロール)どもを魔人族がこき使っているということは、またしても“魔王”の手の者だな。


 どの国の魔王かは知らんが、どうせ新たに魔王と名乗るようになった小者が手下を(けしか)けて来たのだろう。

 魔人族という愚か者どもは、功名心か征服欲か、それとも物覚えが悪いのか、魔王が代わる度にちょっかいを掛けてくるのが面倒で敵わんのだが、我の脅威となる者が居らんので簡単に蹴散らせる。


 とはいえ、数十年おきに塒を荒らしに来られては、我も我慢の限界を超えようというもの。

 脚に、尾に、胴に、首にと、四方八方から閃きが舞い、硬い鱗に弾かれて、我の正面に陣取っていた大盾持ちの短剣が砕けた。


 我、まだ何もしとらんのに・・・。

 勝手に剣を失った大盾の魔人族が憎悪に満ちた目で我を睨み上げ、何やら激高している。

 お前の顔を見たのも初めてなのに、憎悪を向けられる意味が分からん。


「プギィイイイイイイイ!!」

 周囲でチョロチョロしている亥人族と鬼人族も、大盾の鳴き声に呼応してか、我の足元で寄ったり散ったりチョロチョロチョロチョロ。

 大斧や大鎚を振り回したところで我の鱗には傷一つ付かんというのに、面倒くさいのぅ・・・。


「ブフッ」

 少し離れた場所からヒョロヒョロと飛んできた芥子粒のような火が、我の鼻先で弾けた。

 ちょうど、鼻から空気を吸い込んでいたところだったので、ちょっと(むせ)る。

 我とて命ある生物なのだから、呼吸ぐらいはする。

 イラっとした。


「グルル・・・!」

 大盾持ちと長剣持ちの、ずっと後ろに隠れるようにして、裾の長いフード付きローブを纏った奴が杖を構えている。

 彼奴は最初に爆炎術式を放ってきた魔法術師か。

 もう許さん!


「ゴアアアアアアアアア!!」

 鱗に阻まれて刺さりもしない手槍で側面から我の脇腹をチクチク突っついていた奴らを、首を巡らせて威嚇。

 同時に、尾を反対側の側面へと振り回せば、長斧を持った奴と棍を持った奴が棘に引っ掛けられて、大盾どもを巻き込んで魔法術者の足元まで弾き飛ばされる。


「プギャアアアアアアア!!」

 目の前の手槍持ちどもに鉤爪の腕を払って横っ面を張り倒してやれば、吹き飛んだ侵入者どもが一纏めに転がる。

 亥人族どもや鬼人族どもが鉤爪に引き裂かれ、グシャリと潰れて末期の鳴き声を上げる。


「グギャアアアアアアア!!」

 耳障りな鳴き声が塒に響き渡って、さらに苛立つ。

 ちょうど良いな。

 奴らの向こうに有るのは塒の入口だ。


 塵芥どもを塒から吐き出してやろう。

 大きく息を吸い込んで、(あぎと)の奥に術式を展開。

 ぶんぶんと五月蠅かった羽虫どもが恐慌するが、1匹も逃がさぬ。


「ゴオオオオオオオオオ!!」

 体内を巡る魔素を肺に集めて吐息とともに吐き出せば、高濃度に圧縮された奔流は、術式を通過した瞬間に、粘りをもった超高温の焔へと変換される。

 白色に近い焔は侵入者どもを吞み込むと(あか)く姿を変え、膨大な熱量を撒き散らしながら猛烈な勢いで膨張する。


 “吐息(ブレス)”―――。


 床も壁も天井も、塒を煌々と染め尽くした焔は行き場を失くして洞の入口から噴き出し、塒とする山脈の山腹に巨大な朱の華を咲かせたことだろう。


プロローグ①です。


黒龍王!?

新編、始めました!

次回、主人公はどこに!?

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