EP5 無との対面
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お待たせしました!
虚空城に乗り込んだ俺たちは、早速、例の"堕ちた賢者"とやらを探し始めた。
「大声出して呼んでみるか?」
ライラの冗談が、冗談であることを祈ろう。
と、まぁそんな感じで賢者探しをしていると、
「キャァァァァァ!」
女性と思われる叫び声が聞こえた。
「⁉︎」
俺たちは一斉にその方向に走った。
「大丈夫か!」
開口一番、飛び出した言葉とは裏腹に、俺は凍りついた。目に飛び込んで来たのは、女性冒険者と、その仲間の死体だった。外傷は特になかった。しかし、
"それが不気味だった"
死体は皆、冷たくなり、この世の終わりのような顔をしていた。
「あ、」
そして、その場にはもう1人いた。
「やっと来てくれた…待ってたよ?」
不敵な笑みを彼女は浮かべた。
"構えろ!"
ベルの声に俺は身構える。
“あやつだ。やつが、ヘレニア。最悪の大賢者じゃ”
「ねぇ、お話ししようよ」
「話し?」
俺は堕ちた賢者改めヘレニアの言ったことの意味がわからず首を傾げた。
「君とは仲良くしたいんだ」
「じゃあ俺から質問だ」
「?」
俺は意を決して聞く。
「何であの人たちを殺した」
「あの人たちに腹が立ったから」
は?
「あの人たち僕の食事を邪魔しただけじゃなくて、攻撃までしてくるの。だから食べちゃった♪」
俺の思考回路がショートした。
こいつ、倫理観が終わってる。
「あんた、いい加減にしなさいよ!」
リザが声を張り上げた。
その刹那、
「……チッ…」
ヘレニアの舌打ちと同時にリザが吹っ飛んだ。壁に激突した彼女は鈍い声を出して動かなくなった。
「リザぁぁぁぁ!」
「うるさいよ。急に大声出さないで」
俺はその返答に激昂した。
「お前、よくも!」
突発的に踏み込んだその時、
「コピー」
へ?
俺は考えるまもなく吹っ飛ばされた。俺の動きを完全に模倣したヘレニアに俺は唖然とした。
瞬間、背中に殺人的な打撃が加わる。
「ガハッ!」
かっ血を飛ばし、体が動かなくなる。体力はまだ残っているなのに動かない。
‘‘あやつ、まさか……‘‘
「どうした……何か気づいたか?」
‘‘あやつ……レアなスキルを持っておるな‘‘
「レアなスキル?」
‘‘引き当てる確率は、まさに何億分の一じゃ。その名を『略奪』対象からいろいろなものを奪えるスキルじゃ‘‘
「何だよそのチート……勝ち目は?」
‘‘今のところない。いいから立て!逃げるぞ!‘‘
ベルが催促してきたその刹那、俺の横に誰かが打ち付けられた。
「ライ、、ラ?」
ライラは右腕が吹き飛び、見るも無残な姿になっていた。体も少し冷たい。
「ライラ!!」
返事はない。とにかく、アリアの魔法でここから出なければ……。
「ガッ……!」
嫌な声が聞こえた。
「アリアぁぁぁ!!」
目の前でアリアが膝から崩れ堕ちる。
「あああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
――――――うごけ!動け!う、ご、けぇぇぇぇぇぇ!!
瞬間、時が止まった。いや、あっけなく、視界が逆さに向いた。
首が、飛ばされた
声もなく、何も聞こえず、ただ、ただ、悔しい。大事なものをすべて失った。そして自分もまた死んだ。
これで、終わりか……クソ!クソ、クソ、クソ!!こんなところで……こんな、、ところで……終わりたくない……まだ……まだ!!
「おい、何を嘆いておる!」
気づくとそこは前にも見た光景だった。
精神世界。そう名の付くところに飛ばされていた。
「ベル?」
「そうだ」
俺は改めてこのベルイズ=アスモシアスという悪魔を見据えた。褐色の長い髪に赤い瞳、翼二枚がたたまれた背中に、まがまがしくも美しい容姿、服は……これを何というのか知らないが、なんとなく露出が多い気がする。
「なんだ?人の体をじろじろと見よって?視姦というやつか?ぶっ飛ばすぞ?」
この女性らしくない発言などから忘れそうになっていたがこいつ女だった。(日本ではジェンダーフリーなどがていしょうされていたが、こっちではコンプラは機能していないので、まぁこんな表現でも大丈夫だろう。)
「いやいや、いいスタイルをしているなと」
「ほめても何も出んわ!さて、本題に入るか……お前、弱すぎるな」
「え?」
自分でも自覚はしていた。確かに、リザやアリア、ライラに比べれば、俺は弱すぎる。だが、、今すぐにそれを埋めることはできない……不甲斐ない。
「そこでじゃ、臨時だが契約じゃ」
「契約?」
「うむ。すなわち、わらわの力を今できる最大出力で貸してやる」
「代償は?」
「いつもと同じじゃ。しかし、追加で条件がある。一、この契約は今回限りの臨時契約じゃ。一、使用時間は20秒。一、今後鍛錬を重ね、必ず強くなること。以上じゃ。乗るか?」
様々な条件、契約内容、代償、そんなのはどうだっていい。今はただ、みんなを助けたい。そして、強くなりたい!
「結ぼう。その契約……!」
「承知した……」
刹那、周りが明るくなり、意識が飛翔する。
「死ぬなよ。アマネ……」
美女悪魔の最後の忠告が、俺の中に残った。
・・・
「、、アマネ……」
私―――アリア・ムール・ハイリシア改めアリア フジヤは今、生死をさまよっていた。胸に負った傷は先ほど、あの謎多き‘‘堕賢者‘‘とやらに食らったものだ。とっさに防御魔法を展開したが、あっけなく破られた。魔王だったころより格段に弱くなっている……。そして、いま、地を這いながら、愛しの夫の所へ向かっていた。彼は今まさに、首が飛ばされそうになっていた。いま、あの攻撃をどこかに飛ばせれば……!
「スペー……」
途中まで言って、その後は声が出なくなった。のどに鈍い感覚が走る。やがて激痛に代わるそれは、私の詠唱を邪魔した。
結果として、夫の首が飛んだ。
それはもう、きれいに鮮やかに、宙を舞った。これで終わりだと、私は思った。しかし、そうではなかった。
時が巻き戻った。
そして、私たちを逃がすための、もう何度目か分からない彼の、、アマネの無茶が始まった。禍々しく美しい片羽と共に……。
続く
次回
「片羽のアマネ」
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