EP4 回想なんてやめちまえ!
いつも読んでいただきありがとうございます!
いつもに比べると長めです。
「という、ことでアマネに出会ったわけなんだけど」
リザとアリアの話が終わり、俺は単に魔王って勇者に殺される運命とかはないんだな~とのんきなことを考えていた。
「感想とかないの?さっきからぽけーっとして」
アリアの眼光が「大変だったな」と言いなさいと言っていた。
「そ、そうだな。随分とまぁ大変だったんだな…でも、」
「でも?」
アリアがあぁん?とでも言わんばかりの形相でこちらを見ている。
「なぁ、それってまだ引きずってたり、人間に復讐したいとか思ってたりするってことか?」
「当り前じゃない」
アリアさんは即答した。
「もともと、人間として生まれたときはショックだったし、何より自分を呪ったわ。魔族の迫害現場を見ただけでも胸が締め付けられる思いだった」
アリアは意を決したように言った。
「私は、人間を滅ぼそうと思っているわ」
予想通りの返答に俺はこう応えた。
「やめろ。今のあなたはそれだけはしちゃいけない」
アリアは一瞬きょとんとした。
「どうして⁉私は!」
「なら聞こう」
アリアの言葉を俺はさえぎった。
「お前たちは何のために戦った?お前は何のためにリザを生かそうとした?生きてでいるだけ幸せになって欲しかったからじゃないのか?そして、お前は人間として新たに生を受けたんだろ?」
「それがどうした…?」
敵意たっぷりの視線が俺に注がれた。
「だったら、お前はここにいるリザや生き残った魔族、その子孫たちのために人間として生きなきゃだめだ。その戦争で死んだ魔族たちの悲願は何か、ちゃんと分かってるか?お前が生き残ることだろ⁉」
アリアは何も言えないようだ。
「人に生まれて生活してきたんなら、人の良さも少しは分かったんじゃないか?とは言え、お前の気持ちもわかんでもない」
その瞬間アリアはとんでもない目つきで、
「お前に何が分かる!」
「まぁ、落ち着け。人の話は最後まで聞くものだ。と、いう訳でお前は、人間を滅亡せさせるなんてこと、しちゃいけないんだよ」
目にたくさんの涙をためて、アリアは訴えるように言った。
「私は、私は…魔王として…」
「今は人間だろ?」
でも…と口ごもるアリアにリザは言った。
「クリファ様…いえ、アリアちゃん。もうあなたは魔王ではなく、1人の人間ですよ?もし、それでも私は魔王だ、なんて言うんだったら、お願いですから、人間を滅ぼさないでください。人間たちにも家族や友人などの大切な人がいます。それを奪われた苦しみを私は知っています。だから…」
泣きながら、アリアは答えた。
「元魔族の私が、人間と仲良くなんてできないよ…。人間を前にすると親でさえ震えが止まらなくなるの…ほんとは分かってるよ?今の私は人間なんだって…でも…」
「じゃあ俺にはなんでびくびくしなかったんだ?」
俺はここぞとばかりに疑問をぶつけた。
「え?」
アリアはぽかんとした。開いた口が塞がらないとは、こういう表情を指すのだろう。
「俺にはびくびくするどころか、突っかかってきたよな?つまり、やればできるんだよ。お前は。ただ、頭の中で建前と私情が食い違ってるだけだ」
「だって。あの時のことが頭から離れなくて…」
アリアは、本気でおびえただけのただの少女のような表情をしていた。
「分かるよ。それだけは、本当に分かる。冗談抜きでな。俺だって毎日…」
そこまで言って、言うのをやめた。自分が無意識のうちにアリアと自分を重ねていることに気づいたからだ。
「もしかして…あなたも、なの?」
アリアは驚きと困惑の顔した。
「まぁとりあえず、これだけは言っておく。自分のやりたいこと最優先でいいんじゃないか?それを邪魔する思い出を思い返すなんて…そんな回想なんてやめちまえ!思い出ってのはな、今後の役に立つかもしれないことと、楽しかったことしかいらないんだよ。つらい思い出何て消しちまえ!」
「そんな都合のいいこと…」
アリアは口ごもる。しかし、俺は声を張り上げた。
「都合のいいこと大いに結構!」
リザはふふふと笑った。そして、アリアに近寄って耳元で
「この人こういうところあるから、もうあきらめて人間として楽しく生きてくださいね?」
アリアはまたもやぽかんとした。そののち意を決したようにそしてめんどくさそうにかつやけになって子供っぽく、
「ああもう!分かったわよ!人間として楽しく生きればいいんでしょ?」
「ああ。そうしてくれ」
俺はほっとした。個人的にだが、こんなきれいな人の手は汚させたくないのだ。
「兄貴!見えてきたぜ!」
ライラが戻ってきてはしゃいでいる。
「お、そうか」
数分後俺たちは無事に北の大陸、``ノーテル大陸``の港に到着した。
「ちょっとあなたこっち来て」
別方向に帰るアリアに呼ばれて何事かと思って行ってみると、変な怪しい薬を渡された。
「まさか、もうしたなんてことないわよね?」
こいつは急に何を言ってるんだ⁉
「してないしてない。抱きしめたり、キスはしたけど、裸とかそういうのはまだだから!」
早口で説明して、自分がどれほど恥ずかしいことを言ったかを思い知り俺は悶絶した。
「そういうことなら私からは許可するわ」
へ?と俺は思った。
「だ、だから…その、ワリューとしてもいいわよ。それはその軍資金よ」
軍資金…媚薬的な何かだろう。俺は開いた口が塞がらなかった。
「いや、いいから!そんなもんなくても…いや、一応もらっとく」
「正直でよろしい」
アリアはさぞ満足そうに言った。
「おーい!兄貴ー!」
ライラが呼んでいた。その隣ではリザが複雑な笑み(?)を浮かべていた。なんかこれ以上待たせるとやばいらしい。
「行きなさいよ」
アリアは悟ったように言った。
「じゃあな!またどこかで!たまに顔出すよ。リザのためにな」
ふふふ。と笑って「はいはい」と言った。
俺は走る。嫁や義弟のもとに。
「ありがとう」
と、背中に残された言葉にも気づかずに。ただ前へ、前へ進んでいく。所詮、悪い思い出が消えることはない。でも、だからこそそれに飲まれてはいけない。人も魔族も目は基本的に前にしかついていないのだから、前へ進むしかないのだ過去は変えられないのだから…。
次の目的地はノーガラド王国・キチボク港である。これからも続くのだ。
俺たちの歩みは
第3章終幕です。第4章では分かれたはずの‘‘あの人‘‘が再登場します!乞うご期待!
第4章 北の大地で誘拐事件 お楽しみに!それでは!




