EP3 魔王死す そして…
いつも読んでいただきありがとうございます!
クリファたち魔王軍は、人間たちに追い詰められ魔王城に籠城していた。
ドーン!
大きな音と共に謁見室の扉が開かれる。とうとう見つかってしまったのだ。
「魔王クリファよ!お前の首さえ差し出せばほかの魔族は助けてやろう」
隊長と思しき人間が前に出てクリファに言った。
「信じられるはずがなかろう!この首、ゲスどもにくれてやるほど安くはないわ!」
「そうか分かった」
そう言うと隊長は攻撃の合図をした。魔法の詠唱が始まる。
「させない!グラン!」
ワリューが広範囲グランを使用し敵を一気に床にたたきつけ…れてはいなかった。
「なに⁉アンチマジックだと!」
敵の魔法を無効化するアンチマジック防護壁を張られた。同時にクリファたちの力の根源である悪魔の血を封じる聖域を展開された。
「やられた!これで私たちは思うようには戦えない…でも…!」
クリファは魔力をしぼり出し、スペーサーを発動。聖域の魔法陣だけではあるが何とかはるかかなたへと消し飛ばした。機を読んだワリューが自分の魔法に乗りながら高速攻撃を繰り出した。歩兵をあっという間に、まさに稲妻のように蹴散らしてゆく。戦況がひっくり返り、勝機が見えようとしたその時だった。
「発動!」
隊長が叫んだ。と、同時にクリファたちは体が動かなくなった。罠だったのだ。少し隙を見せ一気に突撃させることにより、防御にそそぐ魔力が低下したところを狙う。普通、魔族には効かないはずの``束縛``魔法で。これによりクリファたちは拘束された。予想以上に弱っていたので抵抗すらできない。クリファは持ち上げられ、樽の中に入れられた。そこに水が注がれていく。溺死させるつもりらしい。しかし、クリファはスペーサーにより呼吸だけならできていた。よってこのまま死んだふりでもしていれば奇襲のチャンスはまだあった。だがここでだれも予想しなかったことが起きた。
「クリファ様を返せ!」
なんとワリューが拘束を突破したのだ。そしてワリューは樽を運ぶ人間にグランをかけようとした。しかし人間のとっさの判断というのは誰にも読めないものであった。樽を盾にしようとしたのだ。ふたを上に向けて。ふたが押されクリファの気道がふさがった。そこからクリファが死ぬまでは実に三分とかからなかった。もちろん、ワリューもこのことに気づき急ぎ魔法を解除しようとしたがもう手遅れだった。一度発動してしまったグランは一定時間が過ぎるまで発動し続けるのである。
こうして魔王は死んだ。そう、``ワリューが殺した``のだ。ワリューは血涙が出て声が出なくなりのどから血を吐くまで泣いた。泣きながら敵を殺した。感情に支配された彼女はひたすら人間を切った。謁見室は赤く染まり、魔王城は事実上落ちたことになったが、生還してきた人間はたった2人だったらしい。
地獄絵図のような謁見室でワリューは一人座り込んでいた。魔王の亡骸と手をつなぎ、全身から血を流して、罪悪感に押しつぶされ生きる気力を失いながら。
「生きなきゃ…」
ワリューはおもむろに立ち上がり簡単な手当てをし、一般市民が避難している避難所に向かった。クリファがワリューが生きることを望んだ気がしたからだ。廃人のようになりながら道を歩くワリューの頭上の空は暗く曇り切っていた。ワリューはその時すべてをあきらめた。自由に生きることも死んで楽になることさえあきらめた。ただ廃人のように生きると決めたのだった。
その100年後。やっぱり廃人のようにただ生き続けることが嫌になったワリューは、永眠ではない永い眠りについた。起きた時世界が変わっていることを願って、魔大陸の洞窟の奥深くで。
その90年後今から10年前、眠りから覚めた。目の前には奴隷商人の顔があった飛びのく力もなかったワリューはあれよあれよという間に売り飛ばされた。そうしてなんとなく過ごして、なんとなく逃げ出そうとして捕まりそうになったところである男と出会ったのである。この時、ワリューはこいつもどうせ奴隷商人なのだろうと思ったが、彼はこういった。
「そんなことして許されるんですか?」
と。ワリューは胸がほんのり暖かくなっていることに気づいた。その男はワリューを助けた。裏がある。絶対そうだ。とワリューは思っていたが。男は言った。
「これからどうしたい?」
その言葉に久々に怒りを覚えた。単なる怒りではなく心が楽になって抑え込んでいたものが出てきたような感覚だった。この後彼はこの世界の住人では無いことを知り、さらになんやかんやあって彼に本気で惚れてしまい、結婚するのだがそれはまた別のお話である。
お久しぶりです!えむえいCHIです!
今回でようやく回想編終了となります。お付き合いいただきありがとうございました!次回は船の中でアリア、アマネ、リザ(ワリュー)が話すシーンに戻りますのでお楽しみに!
それでは!




