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            EP8 帝国襲撃 パート4

いつも読んでいただきありがとうございます!


 グラハム帝国。450年続く東大陸最大の領地を持つ帝国である。そこの第90代目の皇帝である、ゲイン・ラーゼ・グラハムが今俺達の目の前にいる。俺はその目に覚えがあった。田口の目だ。崖から落とされたあの瞬間一瞬だけ見えた田口もあんな目をしていた。欲にまみれた汚い目を。

「アマネ、剣を収めて」

リザに止められた。どうやら無意識にサムライソードを生成していたようだ。

「あ、ああ。悪い」

「もしかして、``あの人``に似てた?」

全く、(うち)の嫁は察しがよくていかん。

「そうだな。特にあの目、俺を殺そうとしたときのアイツもあんな目をしていた」

すると、皇帝が突然言い訳を始めた。

「ち、違うんだ。獣人の諸君。私は決して故意に君たちを奴隷扱いしようとした訳ではないのだ!どうかそれだけは分かって欲しい…!」

しばしの沈黙の後、

「話はそれで終わりか?」

ヒイラが口を開いた。

「金ならいくらでも出そう。だから命だけは助けてくれ」

「既存の奴隷は解放しないのか?」

ヒイラの声が怒りを極限まで抑え込んでいることが俺たち全員に伝わった。

「も、もちろん解放する。解放するぞ。ただ、その、手続きが…」

奴隷の解放にはそこまでの時間は必要ない。今の所有者が「解放する」といえば済む話だ。

「必要ないだろうそんなもの。いいから、とっとと解放しろ」

冷え切ったヒイラの声が鋭く響いた。

「だから…その…」

そう口ごもった皇帝は急にキレた。

「たかが魔族風情が、人間様にはむかってんじゃねーよ!第一お前たちは奴隷になるために生まれてたんだろうが!そんな臭いで人間と同じ扱いなんざする訳ねーだろ!」

全く、幼児退行もいいところだ。俺は皇帝の前に立った。

「お前人間だろ?なぜそんな下等生物の味方をする?お前、馬鹿な…」

言い終える前に我慢の限界がきて、俺はナイフを生成し座り込んだ皇帝の足に刺した。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!足が私の足がぁぁぁぁぁぁぁ!」

「つべこべうるせぇ。さっさと解放しろ。まずはお前の奴隷だ。解放すると言え」

「許さん…許さ…」

「言え」

「ゆ…」

「言え」

皇帝が何か違うことを言うたびに、「言え」と一括し続けた。

「か、解放する…」

皇帝がようやく諦めたらしい。

「ただし、半分だ。それ以上は解放できん」

まだ駄々をこねるのか…。

「もう我慢できん!」

いきなりヒイラが怒鳴りだした。

「ヒイラさん…?」

戸惑いのあまり呆然としてしまった。

「こいつは何もわかっていない!私たちの苦しみも怒りも!だから!こいつはここで殺す!殺さなければならないんだ!」

懐に手を突っ込んだと思ったら、ヒイラはあり得ないものを取り出した。

「悪魔の魔香⁉やめるんだ!それを使ったらあなたは!」

俺は必死に止めようとした。しかし、もう遅かった。ヒイラはふたを開け皇帝の口に突っ込んだ。皇帝はなすすべなく血の雨となった。

「ヒイラ!」

倒れるヒイラを受け止め、俺は必死に声をかけた。

「ヒイラ!しっかりしろ!今解毒薬を…」

解毒薬を生成しようとしたその時、ヒイラの手が俺の手首をつかんだ。

「もういいんです。アマネさん。私の悲願は叶いました。これで私が生き恥をさらす理由もなくなりました。だから安心して死ねます。本当にありがとうございました。恩返しは、宿代で勘弁してくださいね…」

微笑見ながら語りかけてくるヒイラに久々に心苦しくなった。

「生きろよ…。あんたの父親は、あんたらが生きるために出稼ぎに出たんだろ?なら、精一杯生きてからでも遅くはないだろ…」

「はい。そうかもしれませんね…。でも、決めてたんです。どうなろうと、皇帝を殺したら私も死のうと。その通りになっただけです…。でも、最後に二つだけいいですか?」

「何だ…」

「私が死ぬまでだけ、私を妻にしてください。奴隷とかではなく本当の」

彼女がもう手遅れであることを俺はすでに理解していた。

「分かった。君を俺の妻にしよう。二つ目はなんだ?」

「ライラ。来なさい」

ヒイラに呼ばれたライラが駆け寄ってくる。

「どうしたんだ…?ねぇちゃん…」

「私が死んだら、この人に、旦那様についていきなさい」

ライラは少しの沈黙の後承諾した。

「…分かったよ」

「…ありが…う。アマネ…さん、弟を…お願いします…」

ヒイラの声がかすれてきた。

「旦那様…やっぱり…もう一ついい…ですか?」

「ああ」

「私を抱きしめてくれますか?」

俺は「分かった」と、返事をして、ヒイラを強く抱きしめた。

「あたたかい…これが、愛されるということですか…。案外…悪くありませんね…」

ヒイラは満足そうに俺の背中に手を回した。

「ああ。やっと、私は…」

それだけ言って、言葉は途切れた。ふと見ると、ヒイラは目を閉じ満足そうに眠っていた。俺はその額に軽くキスをした。そして、

「がんばったね…ヒイラ…」

と、つぶやいた。その場には静かな悲しみが漂っていた。

次回帝国編最終話です!

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