EP8 帝都襲撃 パート1
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帝国への奇襲開始まであと1分。全員が配置につきヒイラの合図を待っている場には緊張が張り詰めている。
「時間よ」
リザが静かに言った。すると俺が作って皆に渡したインカムから
「行こう」
ヒイラからの奇襲開始の合図である。静かにできるだけ音を立てず夜中の帝都に入っていく。
「何だ⁉」
兵士の一人が感づいたらしい。こちらに向かって警戒態勢に入った。
「ここは、私が」
一人颯爽と立ち上がり兵の方に向かったのは、小柄な猫の獣人であるハイネという少年だ。彼には俺特製のナイフを持たせてある。その先頭は一瞬だった。彼は歩いて隠れていた茂みから出たが、その3歩目で消えた。あり得ない。誰もがそう思うだろう。しかし、実際は速すぎて見えないだけなのである。彼はそのまま相手の喉元をナイフで少し切った。ほんの少し喉元にナイフを滑らせただけだった。兵士もその瞬間だけは安堵した顔で反撃に出ようとしていた。しかし、この悪魔の魔香の性質を持つナイフに切られた時点で兵士はもう詰んでいた。
「…ごはっ…!」
次の瞬間、兵士の体は跡形もなく内側から四散した。血と肉がそこら中に飛び散った。流石に俺も、なんてものを作ってしまったのか、と驚いた。悪魔の魔香が人の血液と反応して血液を蒸発させるのは、ヒイラから聞いていたがまさかこれほどとは。ハイネの足元には小さな肉塊と散り散りになった血液が広がっている。
「さぁ、行きましょう」
戦闘を終えたハイネが前衛部隊に静かに声をかけた。無言でうなずき前衛部隊が出撃していった。
俺たちは後衛で主に後方支援と、ほぼ見ているだけの状況である。遠くから絶えず悲鳴が聞こえてくるが気にせずのんびりしていた。
「退屈だな…」
うっかりそうこぼしてしまった。
「退屈なのはいいことよ。誰も殺さずに何より死なずに済むし」
嫁の言葉は妙に説得力があった。こいつの過去に関してはあまり触れないようにしているがこれが終わったらちゃんと聞いてみよう。
「はぁぁ!」
拳を振り下ろす。この小手すごい…!生身の部分にさえ当たれば一撃で殺せる。私、ヒイラ グリムは今一国を仲間と滅ぼそうとしている。欲しいのは皇帝アルバーテの首ただ一つ。私はもはやこのために生きてきた。9年前母が帝国に殺され、7年前父が死に、それでも私たちは生き残った。なら残りの命はせめて奴らに復讐に、両親の敵討ちに使わないと気が済まない!
「お前らが奴隷などという忌むべき所業に走らなければ私の両親は死なずに済んだのだ!それなのにお前たちはぁぁぁぁ!」
劇場のままに拳を振り回している。もはや皇帝を殺すこと以外頭にはなかった。
「ねぇちゃん、落ち着け。皇帝のところへ急ごうぜ」
弟になだめられてしまった。
「ああ。わかっているよ」
私は我に返り「今日こそ両親の敵をとる」そう決意して皇帝の居る城へと向かった。




