第一章 人として EP1肝試し パート1
12月29日20時50分、駅前の公園にて、僕は仲の良い友人の田口と話していた。
「お前が来るなんて意外だなぁ」
田口が聞いてきた。
「そうでもないよ?まぁ、強いて理由があるとすれば、咲森さん
に誘われたからかな?」
「明らかに9割それだろ」
笑われてしまったが否定はしない。あんなきれいな子にさそわれたら誰でも行きそうだが…。そうして談笑しながら時間をつぶしたのだった。
21時になった。
「はいはい!みんなちゅーもーく」
そう言って声を上げたのは、他クラスで名前は知らないが、今回の企画のリーダーらしい。
「ルール説明しまーす!」
ルールはいたって簡単だった。くじ引きでペアを決め、順に山を下りる。しかし何の因果か僕は咲森さんとペアだった。内心かなり喜んでしまった。離れたところで僕を睨む怪しい視線にも気づかずに。
「じゃあ、行こっか」
「うん」
僕らの番が来た。舗装されていない山道を下りていくだけだが、緊張する。
「ここ、昔‘‘転落事故``があって、その人の魂がまだ残留してるって噂があるの」
いきなり、咲森さんがこえをかけてきたので驚いた。
「え?ちょ、いきなり変なこと言わないでよ」
すると彼女はニッと笑って
「なに?怖いの?」
「いや?ぜんぜん…」
精一杯の強がりをしている僕を見て咲森さんは愉快そうに笑っていた。
談笑しつつ、山を下りている。少し高い山なので下りるのに40分はかかる。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
「うん」
咲森さんがトイレに行った時だった。誰かに、背中から蹴飛ばされた。
「え…?」僕は何が起こったのかわからないまま谷底へ真っ逆さま。落ちる中僕を落とした奴の顔が一瞬だけ見えた。
「た…ぐ…ち…?」
これがこの人生での最後の言葉になる。
はずだった。